勤務地を選びやすい会社、一生「転勤族」の会社
- Digest
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- どの機能を自社で持っているのか
- 営業エリアごとに別会社化
- 民放、地方紙は活動範囲が限定的
- 一極集中の勤務地
- 対象となる機能で異なる
- 地元志向に応える制度
- フランチャイズ採用
- 開発拠点集積の自動車
- 騙されて入社する?地域職の人たち
- 「出世組」は、全国行脚が必須
- 希望を通せば、残っても居づらくなる
- 一生、転勤族の新聞記者
- 行ったり来たりの商社マン
- 大都市か田舎か
- 意外に広い営業地域
【この軸で選ぶ意味】
自分の意志で勤務地を移動するのならよい。問題は、会社都合で動かざるを得ないケースがどれだけあるのか、だ。では、勤務地が会社の都合で動くというのは、どういうことか。会社だって、社員に嫌がらせをしたくて動かす訳ではない。何らかの必要性があって動かすのだ。
いわゆる「転勤族」を生み出すのは、下記2つの要件を満たす場合だけである。
1:ビジネスモデルとして広域に人を張りつける必要があること。2:それが正社員である必要があり、かつ同じ場所に長期に置くと問題が発生すること。
日本では、いわゆる「ファイヤー&ハイヤー」(必要に応じて解雇して雇用する)が法的に成立しないので、事業の撤退に伴って不要となった人材を、雇用維持を目的として強引に動かすことはある。そういった「数合わせ移動」は別問題とする。
どの機能を自社で持っているのか
上記2つの要件を満たすのは、会社の機能でいうと、「調達」と「営業」があたる。逆に「開発」「製造」「バックオフィス(人事・経理・広報…)」などは該当しない。
より具体的にいえば、例えば調達なら、商社マンは世界中の支店から情報やモノを調達する立場にあり(第一の要件)、それはコア業務であるがゆえに現地人には任せられず、かつ癒着・腐敗の温床になったり、社員の成長が滞るといった問題から、定期的に異動させる(第二の要件)。
また、全国紙の記者は、全国(全世界)のニュースが起きる現場に1秒でも早く到達できることに価値があり、そこから情報を調達するのが仕事だ(第一の要件)。その信憑性が命だから、熟練を要し責任をとれる正社員である必要があり、スキルアップやモチベーション管理のために、定期的に異動させる(第二の要件)。
営業でいえば、全国の顧客にモノやサービスを販売するために、全国各地に支店網をつくる(第一の要件)。支店での仕事は標準化できることも多いが、少なくとも管理者としての正社員は不可欠な存在で、モチベーションアップ(成果をあげれば、より大きな店に移れる!)やスキルアップ(若造は、まずは失敗した場合のリスクが小さい地方支店で研鑽を積む)、そして不正防止(特に金融の場合)の観点から、定期異動が必要とされる(第二の要件)。
開発は、そもそも多額の設備投資を要する開発拠点を沢山つくって、無理やり人を移動させる理由がない。むしろ、設備の整った巨大な開発拠点に技術者を集積し、相乗効果を高めたほうがよい。製造も、ひたすら最適地に人を張り付けて作り続ければよい。人事や経理といったバックオフィス業務も、そのほとんどが本社にあれば事足りる(もちろん工場にも、その出張所的な機能はある)。
つまり、ある会社のなかに転勤族がどれだけいるのかは、ビジネスモデルによって、ある程度は決まってくる。商社は、開発も製造も行わないから必然的に転勤族ばかりになるし、自動車メーカーに技術系の枠で入社すれば、その開発拠点から動くことは稀だ。インターネット系の企業は、ネット上で販売すれば販売拠点を全国に持つ必要がなく、物流はヤマト運輸などに外注して、営業や流通のために自社の社員を雇う必要がない。
こうしたビジネスモデル以外の要素としては、地域ブロック制をとっているか、地域限定社員制度を採用しているか、といったものでも、勤務地を選べるかどうかが決まってくる。以下、転勤が少ない順、つまり勤務地を固定化できる順に(1)から(7)に分類し、説明する。なお、ここでいう転勤とは、おおむね「関東」「中部」といった範囲のブロックを越えての異動があるものと定義している。
■(1)地域分社制
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勤務地を選べる会社の見分け方と代表的な企業名![]() |
転勤をなくすための一番確実な方法は、営業エリアごとの地域分社制をとっている会社、または活動区域を限定している会社を選ぶことである。といっても多くはない。その多くが、営業系の職種である。
営業エリアごとに別会社化
2006年4月から15の事業会社に分社化したJTBでは、「JTB首都圏」「JTB沖縄」など全国8つの地域に分社化し、それとは別に、大企業を専門とする「JTB法人東京」など計15の会社も設立した。今後は、
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人事部員が社員一人一人の顔を覚えていずとも仕方がない。また、企業の人事制度も社員の希望よりも会社の都合を優先している場合がほとんど。社員の嗜好性にも寄るが、前向きに受け止める人でも年を取るとしんどいと感じる模様。否定的に感じる人なら耐えられない場合も多い。人事が十分機能していればまだ救いはあるかも。地域限定制度は、表向きでは言わないが女性だけを対象としている会社が多そう。
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