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鹿児島の「ファミレス過労・脳性麻痺」事件 残業月200時間超、203日休みなしで植物人間に→過去最高2億4千万円で和解

情報提供
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発症1か月前の勤務状況。4月21日から203日間、休みなく働いていてた。発症の2~6か月前の月平均残業時間は200時間30分
 鹿児島で和食、回転寿司、焼き肉などのファミレスを運営する康正産業の店舗責任者・松元洋人氏(発症時29歳、現39歳、実名)は、04年4月に店の正社員が2人欠けたが補充されず、月平均200時間超のサービス残業を強いられた。松元氏は203日間も休日なしで働き、同年11月10日早朝4時15分頃、自宅でうめき声を上げ、救急車で搬送。心室細動による低酸素脳症で脳性麻痺となり、意識不明の状態が続いている。松元氏の両親は、息子と連名で07年4月、鹿児島地裁に提訴。主治医は「人一人殺したのも同じ」と述べ、父親は「ごく平凡な一家庭をメチャクチャに壊しました」と陳述書で語った。10年2月16日の一審判決は、会社に1億9491万円の支払いを命じた。その11日後、会社は裁判外にて、過労を巡る損害賠償額としては過去最高といわれる2億4千万円で和解。植物人間状態の場合、介護などの費用がかかるため死亡よりも高額となる。ファミレスを舞台にファミリーが壊された“殺人事件”の全容を詳報する。
Digest
  • 深夜の報告業務に「勘弁してほしい。何も夜やることないのに」
  • 年上社員に罵倒され号泣、「支配人にはなりたくなかった」
  • 「人件費率」のノルマに追われ「仕事がキツイ、身体がキツイ」
  • 「人一人殺したのと同じ」主治医
  • 「残業代を一切払わない体制に根がある」裁判所
  • 一審判決で会社敗訴、1億9491万円の支払い命令
  • 2億4千万円で和解、「サビ残はもうしていない」会社

深夜の報告業務に「勘弁してほしい。何も夜やることないのに」

数ある過労による自殺や病死、後遺障害を巡る裁判のなかでも、和解金2億4千万円という、空前の金額で決着した事件がある。それは今から約3年前、鹿児島市に本社を置くファミレス経営の康正産業株式会社と、同社の社員とその家族との間での和解だった。

一審判決文などの裁判資料によると、被害者の松元洋人氏(意識不明時29歳、現39歳、実名)は、高校中退後、九州の外食産業うちだ屋などで勤務した後、01年01年6月、康正産業にパートとして入社した。

康正産業は、鹿児島や宮崎、熊本で、和食、回転ずし、焼き肉などのファミリーレストラン「ふぁみり庵はいから亭」「寿しまどか」などを経営する会社で、リーズナブルな価格をモットーとしている。

松元氏は当初、ふぁみり庵はいから亭国分店で勤務し、5か月後の01年11月、正社員に登用された。

そして、03年9月1日以降は、ふぁみり庵まどか亭の札元店(以下、札元店)で「支配人」の肩書で勤務した。支配人とは、店舗責任者を指す。同社では複合店は支配人、単一店舗は店長と呼んでいた。

札元店は、当時、和食レストランと回転寿司の複合店舗。間取りは1階建のフロアに、厨房などの業務スペースのほか、接客スペースが2つに仕切られ、和食が32席、回転寿司が70席、計102席あった。営業時間は11時30分から22時。人員は、正社員が松元氏を含め5人、パート・アルバイトが35人程度。

松元氏は支配人になった当初から忙殺されていた。仕事内容は、まず、午前9時前には出社し、店の鍵を開け、配送業者による食材搬入作業の立ち会いをして、一緒に搬入していた。食材は重いものは30kgはある。その後、業者に受け渡しのサイン。

そして、開店準備を開始。店舗周りの点検、店内外の清掃、のぼり・旗の掲揚、前日の売上確認や入金、当日の予約確認、出勤者の確認、朝礼などを行った。

営業中の業務は、寿司握り、接客、売上の中間確認、食材の在庫チェック、発注、トイレの清掃チェックなど。

閉店後は、レジ締め(レジ内の現金の金額を確認して、翌日の釣銭分と銀行入金分に振り分けて金庫に納める作業。過不足があった場合は原因を確認し、1000円以上不足していれば報告書を作成)、売上の確認、人件費の確認、営業報告書の入力などを行った。

さらにその後、16店舗を統括するエリアマネージャーに電話をして、その日の状況を報告することになっていた。これは16店舗の責任者が一斉に電話をするので、なかなかつながらない。1店舗5分としても最後の場合は80分もかかる。しかも、報告時の会話では、時間帯別の売上や客数を聞かれることもあるので、報告用のメモも作成していた。松元氏は「勘弁してほしい。何も夜中にすることはないのに」とこぼしていたという。

この報告が終わると、大体午前0時を過ぎていた。その後も、例えば、深夜1時に厨房内の空調機フィルター掃除といった仕事で職場に残ることが多かった。

松元氏は、ほぼ毎日出勤していた。人件費計算は複雑で、札元店では松元氏しかできなかったため、結局、営業報告書を入力するため、休日も遅くとも20時頃から店に来ていたのである。

年上社員に罵倒され号泣、「支配人にはなりたくなかった」

立場上は部下であるはずの年上の正社員から罵倒されることもあった

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寿司のメニュー(康正産業HPより)

鹿児島地裁(鹿児島県鹿児島市山下町13-47)

鹿児島県下最大の繁華街・天文館にもチェーン店はある。写真は「寿しまどか」(鹿児島市千日町1-10タカプラ第二新館2F)。1階は康正産業が運営する「かつや」

2億4千万円の和解金で訴外で和解したことを報じた10年3月3日付朝刊の読売(上)と日経(下)

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You-me2013/08/03 13:50

「「サビ残はもうしていない」会社」がほんとだといいねぇ

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toronei2013/07/31 18:13

刑事告訴できないもんなんかなあ。

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読者コメント

coco2018/02/23 19:55
名無し2015/07/19 20:05
 2013/07/31 18:12
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