My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

「えん罪訴える奴は全員逮捕」の暗黒時代に――警察の実況見分写真をネットで公開したら“証拠の目的外使用罪”で逮捕された!

情報提供
ReportsIMG_J20131223200425.gif
冤罪を訴えようと最高裁法廷警備員の写った実況見分写真をインターネットで公開したことで、全国ではじめて刑訴法281条の5違反(証拠の目的外使用)の罪に問われた山本兼吉さん。憲法で保障する防御権行使にあたり、「目的」外ではないとして無罪を訴えている。
 先日、国家的犯罪でも合法的に隠し通せる「秘密保護法」が成立したが、“警察・検察版の秘密保護法”とも言える、証拠の改ざん・隠蔽がやり放題となる刑事訴訟法「証拠の目的外使用罪」が今年、始動した。不動産業を営む山本兼吉さんが、自らの冤罪(公務執行妨害・傷害)を世に問いたい、と警察による実況検分の写真をYouTube上で公開したところ、2013年3月、その行為自体を対象に、東京地検の検察官らによって、思いがけず逮捕されてしまったのだ。「裁判公開の原則に反する」との反対を押し切って2004年に新設された曰くつきの罪であるが、逮捕も起訴も、これが全国初のケース。「被告人の正当な防御権を行使しただけ」と山本さんは無実を主張し、東京地裁で公判が続く。証拠を世に出すことが犯罪になるなら、冤罪を訴えたビラの配布や報道すらできなくなり、密室化した法廷で証拠のねつ造・隠蔽がやり放題となる。「日本の刑事司法はやはり中世だ」と国際社会の非難を浴びることになるのは間違いない。
Digest
  • 鞘から抜かれた懐刀
  • 虚偽の事実で判決詐取の「訴訟詐欺」
  • 逆転勝訴も最高裁で再逆転の理不尽
  • 発言を封じて「退廷」と叫んだ堀籠裁判長
  • 証拠の売買、プライバシー侵害の防止のためが…
  • 東金事件の起訴検事・金子達也氏
  • 司法の不正義と闘う姿に支援者続々

鞘から抜かれた懐刀

冤罪発覚を恐れる警察・検察が、隠し持っていた「証拠の目的外使用罪」という名の“懐刀”によって山本さんを試し斬りした――。名古屋で不動産業を営む山本兼吉さんの話を聞きながら、筆者はそう思った。

 刑事訴訟法281条の5、いわゆる「検察が開示した証拠の目的外使用罪」という刑罰が新設されたのは、2004年のことである。

【刑事訴訟法】第281条の5
① 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第1項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

②  弁護人(略)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。  

 検察が開示した証拠の扱いについて、これを公判審理などの「目的」以外に使った場合、被告人や弁護人を罰する。そんな内容である。憲法が保障する裁判公開の原則を脅かすという日弁連などの反対を押して成立した、いわくつきの刑罰だ。

 成立後は10年近くにわたって使われることのなかった「目的外使用罪」だが、今年になって、ついにその封印は解かれた。起訴第一号となったのが、この山本さんだった。

 後述するとおり、山本さんは民事裁判の誤審によって、ひどい目に遭っている。いわば司法被害者だ。その納得いかない思いを判事に聞いてほしいと、最高裁の法廷で発言を求めたところ、警備員らによって、力づくで退廷させられた。挙句に、身に覚えのない公務執行妨害と傷害罪という犯罪に問われることになった。公判で山本さんは無実を訴え、世論の支援を求めようと実況検分の写真をインターネットで公開した。すると、「目的外使用罪」という、あらたな罪に問われてしまったのである。

検察は、長年使ってこなかった「目的外使用罪」を鞘から抜き、冤罪を訴える山本さんを斬りつけた。以下、順を追って山本さんの身に起きた出来事を説明しよう。この国で生活する以上、誰の身にも降りかかる可能性があり、知っておかないと大変なめに遭ってしまうことがわかるはずだ。

ReportsIMG_I20131223101757.jpg
2005年、山本さんの不動産会社は、17年前の1989年に売買仲介した中古住宅の顧客から、説明義務違反で損害を受けたなどとして損害賠償請求を起こされた。すべてはここからはじまった。写真は訴訟で焦点となった物件。

虚偽の事実で判決詐取の「訴訟詐欺」

 ことは、2005年にさかのぼる

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り5,559字/全文6,817字

顧客からの訴えは虚偽に満ちていたが、名古屋地裁一宮支部は不十分な審理で、山本さん側敗訴を言い渡し、最高裁で確定した。しかし、その後山本さんが新たに起こした訴訟で名古屋高裁は、「虚偽の事実をならべて裁判所をだまし、勝訴判決を詐取した」として、逆転勝訴を言い渡す。だがそれも、結局最高裁で再逆転される。

裁判当事者の山本さんの発言希望を却下し、「(裁判所は)国民をバカにしているのですか」との言葉に激高。退廷を命じた堀籠幸男第三法廷裁判長(2010年4月当時)。右は千葉地裁で東金事件の勝木諒氏を裁いた栃木力・現東京地裁刑事所長代行。勝木氏は冤罪の疑い濃厚だが、懲役15年の有罪判決を言い渡した。山本さんを「目的外使用罪」で起訴したのは、このときの取調べ検事・金子達也氏だ。

山本さんが「証拠の目的外使用罪」に問われたのは、最高裁で自身が法廷警備員よって退場させられる様子を再現した実況見分の写真だった。実際には仰向け(上)で頭の方向に引きずられたのに、検分調書では、下向き(下)となっていた。この矛盾を広く知ってほしかったという。被写体はすべて国家公務員だった。

最高裁法廷警備員という国家公務員ばかりが写った実況見分調書をインターネットに公開しただけで、山本さんは名古屋まで出張してきた東京地検の検察官らによって逮捕された。逮捕の方法は極めて乱暴で、山本さんは持病の心房細動を起こし、一時呼吸困難に陥った(2013年3月7日、愛知県江南市内)。

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

プロフィール画像
rokkomaru2017/02/25 16:29

酷い話だが、これが日本の刑法と司法

プロフィール画像
haruhiwai182014/01/03 19:36

"証拠を世に出すことが犯罪になるなら、冤罪を訴えたビラの配布や報道すらできなくなり、密室化した法廷で証拠のねつ造・隠蔽がやり放題となる。「日本の刑事司法はやはり中世だ」" →予想を裏切らない中世国家w

プロフィール画像
changsa2013/12/28 03:15

刑事からパワハラの被害を受けてる証拠をネットで公開して府警監査にその旨伝えてるのにガン無視されてる私…

プロフィール画像
sarutoru2013/12/24 15:11

“刑訴法281条の5違反(証拠の目的外使用)の罪”

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

かもめのジョナサン2014/08/01 17:37
虚偽の裁判を知る男2014/08/01 00:52
くだらない世の中2014/01/08 15:53
カルトハンター2014/01/01 15:02
abc2013/12/23 22:09
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

次回公判は2月6日午後1時半、東京地裁710号法廷(大熊一之裁判長)で開かれる。
本文:全約6600字のうち約5400字が
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)

企画「その税金、無駄遣い、するな。」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい。会員ID(1年分)進呈します。