泣く泣く希望退職に応じ、退職後に自殺してしまった元社員Sさん。(近日この件を記事化予定)
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2011年5月、グループ1万人規模のリストラ案を発表したリコーは、希望退職を拒否した152人を全国各地の追い出し部屋に押し込んだ。社員の一部は配置転換の無効などを求め東京地裁に提訴し対抗。昨年11月に東京地裁は、人事権の濫用であり配転は無効との判決を下した。会社は控訴したが高裁の和解勧告により、現在は和解協議に入っている。地裁判決後まもなく、リコーが使用している退職勧奨マニュアルを入手した。それによれば、(退職勧奨の)合理的理由を説明するする必要はなく、社員が退職を拒否しても会社の決定は変わらないことを繰り返しのべよ、話は平行線でかまわない、などとあり、従業員を疲弊させる内容。退職後の社員が自殺に追い込まれた例もある。追い出し部屋に送られた人たちの実体験とマニュアルを比較しつつ、同社の退職強要の実態を浮き彫りにする。(退職勧奨マニュアルは記事末尾でPDFダウンロード可)
【Digest】
◇社員に絶望感をもたせる文言
◇子供の教育・親の介護など家族の状況は無視
◇退職勧奨は3回で終わり4回目はシフトの話
◇追い出し部屋の夏の暑さと冬の寒さ
◇経営の失敗を従業員に押し付けるのか
◇社員に絶望感をもたせる文言
2001年夏、技術職の正社員として長年リコーに務めてきたAさん(当時40代後半)は、業務中にメールを受け取った。
送り主は同じフロアにいる上司だったが、席をはずして社内の別の場所からそのメールを送ったのだった。
《人事の件でお話しがあります。○月×日B会議室に来て下さい》
これがすべての始まりだった。その後の経過をAさん自身に語ってもらう。
「一週間後くらいに、ある事業部内の小さな会議室に行きました。待ちかまえていたのは2人でしたが、前振りがとても長かったのが印象的です。事業の再構築だとか、筋肉質の会社に生まれかわらなければならない、などと一般的な前置きがずっと続きました。
『ところで・・・これからお願いする仕事がないんです。早期退職の希望を募るので応募してください。これは会社の決定です』と切り出されました」
実はこの一言が、入手した「退職勧奨マニュアル」そのものであり、この一言から退職勧奨が始まる。
リコーは2011年5月、グループ内において3年間で1万人規模の人員削減することを発表し、同年夏に希望退職者1600人を募った。
その結果、希望退職を拒否した社員は152人。リコーグループ内のリコーロジスティックなど物流センターや修理回収工場などに配転させられ、それまでのキャリアとはまったく関係のない作業をすることになった。いわゆる“追い出し部屋”である。
同社には労働組合がないため、追い出し部屋に配転させられた社員たちの一部が東京管理職ユニオンに加入、同組合のリコー分会を結成して12年1月に東京地裁に2名の組合員が労働審判を申し立てた。
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リコー事件の経過 |
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同年5月に出向無効の審判が下されたがリコーは異議申し立てしたため、本訴に(第一次訴訟)。ついで同年7月に新たに5名の組合員が東京地裁に提訴(第二次訴訟)した。
このうち第一次の訴訟で2012年11月、東京地裁は人事権濫用で出向無効の判決を出したのである。リコーは控訴したものの、東京高裁は地裁の判決を前提として和解を勧告し、現在は和解協議に入っている。
東京地裁での社員勝利後まもなく、筆者は「退職勧奨マニュアル」を入手していた。退職を迫られた社員から聞いた話と照らし合わせると、まるで機械のように退職を迫る手の内がわかる。
裁判の社員側弁護人であり、長年にわたり労働争議を取り扱ってきた棗(なつめ)一郎弁護士が語る。
「これまで、さまざまな会社で、退職に追い込むマニュアルのようなものが存在することは分かっていましたが、今回はじめて現物を目にしました。
そして、(第二次訴訟の)証人尋問の中で、こういうものを配って退職強要したのかと法廷で追及したらば、会社は認めました」
マニュアルの核心を示すのは、次の文言である。
《同じ回答を続けるのは心苦しいとは思いますが“論理的に説明して納得いただく”のではなく.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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退職勧奨マニュアルの重要部分。精神的に疲弊するのは間違いないだろう。 |
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東京都労働委員会は2014年2月26日、リコーに対し不当労働行為救済申立て事件の命令が交付した。同委員会は同社に対して謝罪文を本社従業員が見やすい場所に10日間掲示することを命じた。しかしリコーは拒否している。 |
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記者会見の案内。リコーの非道ぶりを訴えている。 |
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