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ソニー 職務給「ジョブグレード制」採用で、ほとんど全員年収カットへ 

情報提供
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Ba:普通の企業
(仕事4.5、生活3.3、対価2.6)
 ソニーが、約10年ぶりに新処遇制度に移行し、2015年7月から給料を改訂する。同社は11年前の2004年、一般社員全員に「グレード制」を導入。「役割と報酬をリンク」「降格もアリ」と成果主義をうたっていたものの、運用上は年功序列が維持されてしまい、再度、同じ趣旨の改革に追い込まれた。今回も、同じ轍を踏まないのか。「ソニー、管理職比率を2割に半減」(『日本経済新聞』2015年4月5日付)などの記事を読むと、管理職を半分も降格する大胆人事で急激に人件費を削減するかのように見えてしまうが、それは嘘。管理職クラスの下のほうを、新たに作った非管理職ランク(I5)に横滑りさせ、名目上は降格だが、実質の給料はほとんど下がらない仕掛けになっていることがわかった。
Digest
  • ジョブグレード制で賃金カット「しょうがない」
  • 若手と中堅は、ほとんどステイ
  • 統括課長に33歳抜擢、「20代にも高い報酬出せる」
  • 10年間、給料が下がらなかったソニー
  • 執行役員で年俸3千万、平井社長は3.5億
  • 統括部長もエコノミークラスで米国・アフリカ出張 
  • 追い出し部屋「そこまで来てるオマエが悪い」論

ジョブグレード制で賃金カット「しょうがない」

確かに、50代を中心に、行き過ぎた役割と報酬のギャップが一部で緩やかに修正される効果は若干ありそうだが、「ほとんど全員の給料を上がりにくくすることで、緩やかに総人件費を下げていく」という意味での「ほとんど全員年収カット」が徐々に進んでいく見通しだ。

今回の変更は、昨夏に概要が説明され、労組との話し合いを経て昨秋に決定。近夏から給与改訂が実行される。ただ、降格になる社員でも、減少幅は2015年度が最大2%、2年目以降も最大5%と、大企業らしい激変緩和措置が設けられ、すぐに大幅カットとなる人は1人もいない。初っ端から甘いのだ。

 2015年1~2月 社員説明会
 2月中旬~3月 ジョブグレードの内示面談
 4月 新人事制度導入
 7月 ベース給改定
 2016年4月 新評価制度導入

大部屋で行われた年明けの人事部員による社員向け説明会では、管理職社員の比率が全体の4割以上にも膨張していること、仕事上の役割と報酬が連動していないこと、給与水準を同業他社並みに合わせていくこと、等が説明された。

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新等級制度「ジョブグレード制度」の会社説明資料より

「日本の人口ピラミッドを見せられて、実はソニーも同じです、つまり年齢が上の40代以上にたくさんの社員がいて、下のほうが少ない逆ピラミッドに近いもので、給料も年功序列に近くなっています、と。

一方で、役職(統括課長以上ポスト)の数は、普通のピラミッド状なので、役職に就いてないのに給料が高い人がたくさんいて、これでは持たないので、今のポジションに応じたものに変えます、若い人も納得するような給与体系にします、とのことでした。

『業界で競争力のある人件費水準に』と何度も言っていたので、『ああ、下げるんだな』と解釈しました」(ベテラン社員)

社員配布資料の冒頭でも、「以下の7点の実現を目指します」という7つの中で、いの一番に、以下が掲げられている。

「1.現在の役割と市場水準に基づいた適正処遇の実現と人件費コスト競争力の強化」

「市場水準」といえば、ソニーは2015年3月期も連結で赤字、つまり付加価値を生み出していないのに給与水準は日本のエレキ業界でトップだから、「適正処遇」とはつまり、平均年収のカットを意味する。

要は、人(能力)に給料を払う「能力給」から、ポジション(役割)に給料を払う「職務給」にシフトし、重要でない役割(職務)に就けば給料が下がり、重要な役割に就けば給料が上がる、ということだ。

出席者からは、特に質疑の応酬もなく、その場は淡々としたものだったという。「クールで大人しくプライドが高めな優等生」という、ソニー社員のイメージ通りだ。実際のところ、本音はどうなのか。

「飲み会では、両方聞きます。つまり『モチベーションが下がって、ますます業績が悪くなるだろう』と愚痴る人と、『愚痴を言っても始まらない。会社が潰れたらしょうがないだろう』という人と。後者の『しょうがない』論のほうが多い印象です」(同)

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ソニーのキャリアパスと報酬水準、新旧対応図

今年2月の、新グレードが決まる「内示面談」は、事務的な「通告」だった。ある部署では、統括課長(直属のライン長)と統括部長の2人が、部下と2:1で面談し、新しいグレードがどこになるのか、が説明された。

「自分は、VB7→I5になると通告されました。管理職クラスから非管理職に移行しますが、月収(60万円台)は全く変わらない、と」(ベテラン社員)。このVB7→I5というのは、最も多いパターンと思われる。

バブル末期入社組は現在、40代後半~50代前半であるが、もっとも多いのが、このVB7(管理職クラスの一番下、年収約1千万円)のランクだという。今回の人事制度改革の一番のターゲットとなっているのも、この80年代を中心とするバブル期入社組(40代後半~50代)だ。

「私の上の世代にあたる、50代前半~後半の人も、軒並み、非管理職にダウングレードされ、私と同じくらいの水準に下げられています。『給料下がっちゃったけど、しょうがないよね』と言っていました。確かに、子どもが2人いて私立学校に通わせていたりすると、ぜいたくはできません。節約のため毎日弁当持参で、本当に余裕がなさそう。バブルの頃に家を買っちゃった50代の人とかもキツそうです」(同)

バブル期は、現在の10倍もの新卒を採用しており、同期が1500人もいた時代だ。入社式の会場は、自社設備では入りきらないので、港区芝の「東京郵便貯金会館」(現メルパルク東京)だった。

この時代に入社した人が年功序列で管理職クラスの給料となり、まだ半数ほどが辞めずに会社に在籍しているというから、人件費負担が重くなるのは当然だ。

ソニー社内で課長と言えば、「統括課長」のことを指す。部下ナシ課長のことを、社内で「課長」とは誰も呼ばない。ところが、40代50代に、この給与制度上だけの、「部下ナシ課長クラス」が多いのだ。

「僕が所属する課は、計11人ですが、そのうち“課長”が8人です。そんな課は、ソニーには、たくさんあります。具体的には、

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2014年5月、会社は、キャリア部署に6か月いる社員を子会社に出向させると通告(労組資料より)

2003年以降の早期退職施策一覧(労組まとめ)

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  2015/06/27 00:37
  2015/06/22 22:26
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