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私が就活難の末に入った東進衛星予備校も“某居酒屋チェーン”のような過酷さでした――364日開校、ゆっくり休めたのは元旦だけ

情報提供
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50社ほど受けたがことごとく失敗し、ハローワークの求人で入ったのが「東進」のフランチャイジー企業だった。「週2日の休み」という話だったが、じっさいは年に数日しか休めない過酷な現場だった。「ゆっくり休めたのは元旦だけ」と体験を振り返るAさん。
 東進衛星予備校で働いた社員の体験記を掲載したところ、記事が虚偽だとしてフランチャイズ(FC)運営会社のナガセから記事削除の要請があった。この件は、すでにお伝えしたとおりだ。その一方で、編集部には「東進」の労働現場からの悲鳴が、日々、届いている。ナガセとFC契約する東日本地方の零細会社に大学新卒で就職、いきなり東進衛星予備校の「校舎長」に就任したAさん(20代後半、男性)は、年間の休日がトータルで数日だけ、それも、電話から解放されて心身ともに完全に休めるのは元旦だけ、というむちゃな働きかたを強いられたという。連日のサービス残業で帰宅が深夜となる長時間労働だったが、給料は残業代込みで手取り月20万円ほど。身も心もぼろぼろになった5年目、「やばくない?」という知人の一言がきっかけで転職し、人間らしい暮らしを取り戻した。校舎長ひとりに重責を担わせ際限なく働かせる仕組みは、ブラック労働で有名な「某居酒屋チェーンと同じ」。Aさんの「東進」体験を紹介する。
Digest
  • 就職活動に苦労したあげくに入ったA社
  • 週休2日、年間休日100日のウソ
  • 残業代は2万円ぽっきり
  • 「契約獲得せよ」とエリアカウンセラーから圧力
  • 外泊をほとんどしたことがない
  • 彼女の「やばくない?」で我に返る

就職活動に苦労したあげくに入ったA社

「1年364日開校ですから、ちゃんと休めたのは元旦だけ。長時間労働に麻痺していました。いま考えるとよくやっていたと思います。1人店長の居酒屋チェーン店と同じですよ」

ナガセとフランチャイズ(FC)契約を結んだ東日本地方の零細企業に大学新卒で就職し、生徒数100人足らずの「東進衛星予備校」の校舎長として5年間つとめた男性Aさん(20歳後半)は、そういって過酷な労働体験をふりかえる。

「求人の資料に、土日は休める、とありました。でも実際に入ってみると、土日どころの話ではなかった。CMの印象や上場している大企業というだけで、東進はいいところにちがいない、と単純に思った。まちがいでした」

大学の経済学部に学んだAさんが就職活動をはじめたのは3年生の1月ごろ。リーマンショックの直後で採用状況は厳しかった。銀行や大企業、公務員を片端から受けた。その数およそ50社。東京や横浜、仙台などを頻繁に訪れた。かかった交通費と宿泊費は50万円をくだらない。アルバイトだけではまかなえず、親に借りた。しかし成果はかんばしくない。

1次の筆記試験はたいてい受かった。だが面接がうまくいかない。面接官と1対1の場合ならまだよかったが、集団面接になるとダメだ。自分でも「苦しい」と感じた。

勉強とアルバイト、就職活動ーーという3種類のことを同時にやる生活は、体力的にも、精神的にもしんどいものがあった。早い者は4年の4月には内定していた。それを横目にAさんの見通しは暗かった。4年生の秋になり、年末が見えてくると焦りはいっそう募った。「年を越すとブラック企業しかない」というのが友人らのもっぱらの噂だった。

「東進」――見覚えのある名前をハローワークで見つけたのはそんなときだった。

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四国地方のFC方式で運営する東進衛星予備校。3月の決算期になると、前年より多くの塾生を確保し、売り上げを伸ばすよう本社から圧力がかけられるという。(本文とは直接関係ありません)

週休2日、年間休日100日のウソ

求人募集を出していたのは、地方都市にある零細企業だった。ナガセとFC契約をして「東進衛星予備校」を運営しているという。高校時代、Aさんは東進衛星予備校に通っていた。校舎長が親身になって受験指導をしてくれた。だから「東進」には良い印象があった。

好印象に加えて、子どもに勉強を教えてみたいという気持ちもあった。子どもは嫌いではない。東進を運営するナガセは大企業で有名だ。そことFC契約をしている企業なのだから、まさかブラック企業のようなことはないと信じた。小さな会社だが、求人票にも「週2日休める。年間の休日は100日」と書いてあった。

 とにかく内定がほしかった。就職できないよりはいい。そう考えて応募すると、すぐに返事があった。筆記試験なしでいきなり社長が面接に出てきた。採用することを前提とした形式的な面接試験であることはAさんにもわかった。そして予想どおりに内定が出た。

 「とりあえず仕事が見つかった。よかった」

Aさんは安心した。

社員十数人にアルバイト30~40人。この態勢で10校弱の「東進衛星予備校」校舎を動かしていた。新入社員はAさんを含めて3人。Aさんに与えられた職は、ある校舎の校舎長だった。生徒数は100人弱。校舎のなかで、正社員はAさんひとり。ほかの校舎もすべて同じだった。ひとつの校舎を、社員1人と4~5人のアルバイトで切り盛りする。それがこの会社のスタイルだった。

表むきの勤務時間は、校舎を開ける午後2時から午後10時までの8時間。だが、じっさいは閉校後も多忙だった。閉校したのちも、掃除やゴミ出し、塾代の入金の確認、帳簿の整理、アルバイトのシフト組みや労務管理など、際限ない事務作業があった。開校中は生徒と接することで時間を費やす。閉校後しか時間はない。どんなにがんばっても2、3時間はかかる。家路につくのは12時か午前1時ごろになった。

「休日は週2日」もウソだった

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東進の塾代は1年コースで60万円前後と比較的高額だ。各地のFCの衛星予備校のなかには、強引な営業をするあまり、保護者との間でトラブルになることもあるのだとAさんはナガセ社員から聞いたという。(東進のパンフレットに記載された料金表)

ナガセ本社。エリアカウンセラーとよばれる社員が全国の衛星予備校を巡回している。Aさんの校舎を担当していたカウンセラーは、何日も泊まり歩く激務のせいか疲れた様子だったという。

東進のパンフレットに書かれた「理念」。Aさんの印象では、「東進」の職場に入ってくる人は、教育や子どもに関心のあるまじめな人が多かったという。だが労働環境は劣悪で、改善する気配も薄く、人間を大切にしない企業文化を感じた。

「東進」の宣伝広告を掲示した路線バス。東京都杉並区。

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