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損保ジャパン日本興亜 給料高すぎて辞められない“ヤクザ火災”出身者たち――ボーナス7.5カ月分、「転職先が外資でも年収下がる」

情報提供
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Ba:普通の企業
(仕事2.0、生活3.0、対価5.0)
 地震など大災害は、損保業界の人たちにとっての「いざ鎌倉」。熊本地震が発生した2016年4月14日(木)から1カ月ほどは、損保会社の存在価値が試される時期だった。旧安田火災出身者が仕切る3メガ損保の一角・損保ジャパン日本興亜では、損害査定部門が翌日には現地の商業ビル空きテナントをまとめて借り切り、2年契約などの長期で押さえ、現地の拠点を設置。地震被害で操業停止に追い込まれたホテルも借り切り、本社をはじめ全国から社員を送り込んで、雑魚寝で泊り込みながら損害調査にあたった。まだ入社して半月足らず、正式な配属が決まる前段階(人事部付)だった新入社員たちも、例外なく現地に派遣された。
Digest
  • 大災害時は本社も総出に
  • 社名に「日本」ダブったまま
  • 「気持ちは一般職」な総合系エリア
  • 「ワタミの介護」買収で介護施設数が日本一の規模に
  • ヤクザと示談交渉も…保険金サービス課の仕事
  • 自腹で新車を買うディーラー担当営業
  • 上戸彩損保ジャパンダ、石原軍団日本興亜、おとなの階段、コアラ…
  • TOEIC730点取得を「推奨」のレベル
  • 日本興亜の課長は「特命課長」に
  • 出身企業別、コース別で格差が大きい
  • 差が開くのは40歳前後から
  • 営業は自爆支出も多い
  • 人工知能で産業の転換点は来るのか
  • コンプラ重視で脱「ヤクザ火災」
  • 「温厚」な日本興亜、泥臭い「野武士」の安田
  • 有休は毎年20日ずつ捨てる
  • 「志を持っていたら入社すべきでない」

大災害時は本社も総出に

「本社からも、間接部門の社員ら500~600人が現地に入って、ゴールデンウィーク中も含め2週間くらい働いていました。本社でも連日、経営企画が主導し、マックスで動いていました。日次で18時から全部門の部長クラスが集まって意思決定し、調整。物資を送ったりしました」(社員)

迅速に現地で損害を認定していかないと、顧客側が困るだけでなく、会社側としても、証拠がないと全損扱いで支払いが不要に増え、業績を圧迫してしまう。

東日本大震災では原発事故による避難で立ち入り制限もあり、損害調査や保険の請求どころではない地域もあった。だが今回は初日から入電があり、立ち上がりが早かったという。

それにしても、普段は経理や総務、法務をやっているような間接部門の人たちや、新卒入社したばかりの未経験者でも、損害調査というのはできるものなのか。

「普段の査定は、各支社で損害調査員などを採用して行っていますが、これは本社が採用する『総合系グローバル』『総合系エリア』とは別枠での現地採用です。今回は、損保の業界団体が『この住所の地域は丸ごと全損とする』など基本的な方針を出したこともあり、とにかく人手があれば処理できる状況。損害調査業務自体、そこまで難易度が高いものでもないため、新卒入社の新人も、例年、まずは全員が損害調査の部署に配属となっています」(社員)

日本損害保険協会は2016年6月9日、熊本地震における家屋損壊などの被害に対して支払われた損害保険の金額が2,724億円に達した、と発表した。支払い額は阪神・淡路大震災(783億円)を上回り、東日本大震災(1兆2,345億円=2012年5月発表時点)に次ぐ、史上2番目の規模だという。受け付けた案件のうち、85.6%の調査が終了し、うち77.4%で支払いが完了した、としている。

ようは、阪神淡路大震災(1995年)の頃は地震保険に加入している世帯が少なかったため、損害保険が全く社会の役に立たなかった、ということである。

「地震による災害で保険金を貰うには、地震限定の特約に入っている必要があります。たとえば鬼怒川洪水(2015年9月)は水害なので、地震保険に入っていても適用されませんでした。地震保険は再保険で国が多くを支払う仕組みになっているので保険会社は損しません」(社員)

地震保険の全国平均の世帯加入率は、東日本大震災が起きた2011年3月末の24%から3年で5%上昇し、14年末時点で29%となった。損保協会が広く加入を呼びかけているのは、どんな大地震が起こっても損しない仕掛け(関東大震災級で上限11兆3千億円、その99%超を政府が払う)になっているからだ。「リスクは政府に、売り上げは損保会社に」という都合のよいカラクリが、損保業界の政治力の強さを物語っている。

社名に「日本」ダブったまま

損保ジャパン日本興亜という、「ニッポン」がダブった「頭痛が痛い」系の社名になってしまったのは、対等合併を演出する会社同士の、政治的な妥協の産物による。平野浩志社長が引責辞任した(2006年5月)保険金不払い事件からも浮かび上がる、顧客不在なカルチャーを感じさせる。業界まるごと、消費者・顧客・従業員のほうを向いていない印象だ。

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安田火災が合併を重ね巨大化していった歴史。ネット系の自動車保険会社も2つ保有する事態に。

名称が変わった合併会社は“原材料”がわかりにくいが、その実態は、バブル期にゴッホの「ひまわり」を58億円で落札する金満ぶりを世界に見せつけた財閥系企業「安田火災海上保険」が、様々な会社を吸収した成れの果てである。いまや安田の「や」の字もなくなったが、三菱東京UFJ銀行でいうところの三菱銀行が、損保ジャパン日本興亜における安田火災である。

安田といえば、日本の四大財閥の一つ。「日本人は財閥のブランドに弱いので、保険のような信用ビジネスなら、安田の名前は有利です。安田に戻すなら最後のチャンスだったと思うのですが…」(社員)。だが残ったのは、いやに長い社名「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険」の、「ひまわり」だけだった。

「気持ちは一般職」な総合系エリア

2016年4月入社の新卒組は、「総合系グローバル」(グローバル職)が130人、「総合系エリア」(エリア職)が628人、と発表されている。

総合系グローバルは、さらに「Generalコース」と「Actuary・金融工学コース」の2つのコース別採用となっているが、後者は一桁程度と少なく、ほとんどがGeneral。出身大学はいわゆる有名校中心で、早慶が多めな傾向がある。社長も、佐藤正敏(慶応)→桜田謙悟(早稲田)→2016年4月~西沢敬二(慶応)、と私大系である。

「総合系エリア」というのは、非常に紛らわしいが、ようは女性の旧一般職社員のこと。転勤はなく、近年は裏方の事務職だけでなく、個人向け営業を中心に外勤にも出るなど仕事の幅を広げているが、グローバル職に比べ昇進は遅く、給与水準が低い。安い給料のまま総合職の仕事もさせてしまえ、という経営側にとって一方的に都合がよい“なんちゃって総合職”だ。

「4~5年前、日本興亜との合併の前に、いきなり、従来からのエリア職=総合職、とされました。だからエリア職は、『気持ちは一般職』な人たち。入社時も、バックオフィスの事務や受付窓口の仕事をやるつもりで入っている。それが、総合職と同じように外回り営業もやれ、と。あれは完全にトップダウンの決定でした。一般職の活動範囲を広げ、人材の押し上げを図る流れは、メガバンクなど他の金融機関もBtoC強化もあって進めているので、横並びです」(社員)

総合系グローバルのほうは、

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上:事業オーナー制。海外を1つの事業として切り離した。下:SOMPOホールディングスは、中期経営計画で「安心安全健康のテーマパーク」を目指す、としている。(同社ウェブサイトより)

損保ジャパン日本興亜のキャリアパスと報酬水準(安田&損保ジャパン出身者)

30代半ば「総合系グローバル」の給与明細

30代半ば「総合系グローバル」の年収(源泉徴収票)

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itochan2016/07/05 17:41

いいなー、ボーナス7.5ヵ月分。

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  2016/06/18 22:30
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