「自民党山口県第4選挙区支部」が神社に支払ったことを示す領収書。福引券、玉替券の記載がある。有権者に配ったとすれば公選法違反の疑いがある。
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安倍晋三首相が代表を務める政治団体「自民党山口県第4選挙区支部」(下関市)が、宗教団体である神社に「会費」名目などで頻繁な支払いを行っていることが、情報公開請求で開示された少額領収書によって判明した。2010年から15年の過去6年で計120万円、300回以上に及ぶ。憲法が禁止する政教分離の原則に抵触する恐れが高い。また約300枚の領収書はほとんどが同じ様式で、支部自身が作成した「自作領収書」とみられる。さらに、これらを含む大半の領収書のただし書きは「会費」とあるだけで実態は不明。一方、ただし書きの内容が比較的詳しい別の領収書をみると、「玉替」「直会」「法事」など、宗教行事の代金だと明記されている。政治権力のためなら憲法などお構いなしで宗教の力も借りる。公私のケジメがとことんつかない為政者を、この国の有権者はいつまで支えるのか。
【Digest】
◇少額領収書
◇神社の支払いは「渉外費」?
◇自作?の領収書に「会費」のゴム印
◇神事の謝礼は政治資金で
◇玉替(福引)券は公選法違反の疑い
◇「初穂料」「玉串料」も政治資金で
安倍晋三首相は、「神道政治連盟国会議員懇談会」の会長。神道政治連盟とは、全国約8万社の神社を傘下に置く包括宗教法人「神社本庁」を母体とする団体で、安倍政権の有力な支持母体の一つである。
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◇少額領収書
安倍晋三首相が代表を務める政治団体「自民党山口県第4選挙区支部」(主たる事務所は下関市)の「少額領収書」を集めるようになってから、かれこれ6年になる。
少額領収書とは、政治資金の支出のうち1万円以下のもののことだ。政治資金規正法の規定により、1万円以下の支出については収支報告書に記載しなくてもよい。つまり、少額領収書を手に入れて、見てみないことには何にいくら使ったのかわからない仕組みなのだ。
政治とカネの透明化を目指した政治資金規正法の趣旨に照らせば不十分というほかない。しかし、もっか自公政権が多数を占める現在の国会に法改正をする気配はない。
少額領収書を見るためには情報公開請求をする必要がある。公開場所が近くであれば閲覧が可能だが、遠方であればコピーを送ってもらわなければならない。自民党山口県第4選挙区支部は山口県選挙管理委員会に届出がされている。よって情報公開請求も山口県選管にすることになる。。筆者の住まいは東京だからコピーを郵送してもらうことになる。当然金がかかる。
「自民党山口県第4選挙区支部」少額領収書は1年で2000枚以上にのぼる。6年分で1万枚以上だ。手数料は1枚10円だから、取得費用は10数万円。そんな大金を払ってまで「少額領収書」を見たいと思う人はあまりいないだろう。記者であっても取材費が出なければ躊躇する。
筆者とて、最初は「第4支部」の少額領収書を入手することをためらった。1年分で何万円もかかる。金をかけたところで、たいした収獲がないかもしれない。バブルの時代ならともかく、いまどきそんな不透明な取材費用を出す媒体は稀有だ。
それでも自腹を切って入手することにしたのは、政治とカネの流れを透明化すると嘯きながら、まるで「どうせ誰も見やしないだろう」といわんばかりのやり方に疑問を覚えたからだ。
このようないきさつでほとんど趣味のように収集をはじめた。一年分だけで数千枚の領収書を分析するのは手間がかかる。面白いものでもない。集めるだけ集めて、手をつけないまま放置していた。気づいたら6年分の大量の少額領収書のコレクションができあがったというわけだ。
そこで、このたび衆議院選挙が行われているのを好機として、この少額領収書の山の分析に取り掛かることにした。そして、ざっと目をとおしているうちに「神社」への支出がやけにたくさんあることに気がついたのである。
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安倍首相が代表をする政治団体「自民党山口県第4選挙区支部」が神社に支払ったことを示す領収書。同じ様式のものが大量にあり、いずれも「会費として」とゴム印が押されている。自前で用意した領収書と思われる。  |
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◇神社の支払いは「渉外費」?
集計を試みた結果は以下に述べるとおりである。6年間で300件を越すことが判明した。神社への支出は、すべて政治資金収支報告書のなかの「渉外費」という部分に計上されている。たとえば2010年分の「渉外費」をみると、こんな調子である。
・2010年2月3日/3000円/厳島神社/会費
・ 2010年2月3日/3000円/亀山八幡宮/会費
・ 2010年2月3日/3000円/彦島八幡宮/会費
・ 2010年2月3日/3000円/大歳神社/会費
・2010年2月13日/3000円/紅石稲荷神社/会費
・ …
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支払い先は神社がほとんどだが、仏教寺院に対するものもある。
・ 2010年4月14日/5000円/東行庵/会費
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東行庵とは、明治維新に関与した長州藩士・高杉晋作の墓がある場所である。
2010年の年間を通して数えてみると、神社や寺に払われた「会費」などの支出は53件、合計21万円あまりとなった。同様に、各年ごとに集計した結果は以下のとおり。
・ 2010年 53件 21万2000円(神社52件、寺1件)
・ 2011年 43件 15万6000円(神社40件、寺3件)
・ 2012年 49件 18万3000円(神社46件、寺3件)
・ 2013年 51件 19万2800円(神社50件、寺1件)
・ 2014年 65件 24万7400円(神社61件、寺4件)
・ 2015年 63件 23万6000円(神社60件、寺3件)
※(注)氏子会などの後援会組織や神職会あての支出を含む、
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合計件数は324件、金額は122万7200円。平均して毎月4回強~5回強、週1回以上の頻度で神社や寺に支払いを行っている計算だ。
なお神社別の順位は次のとおり。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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支出回数、金額がもっとも多かった亀山八幡宮(ホームページより)。 |
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玉串料、初穂料との記載がされた領収書。「自民党山口県第4選挙区支部」が神社に支払っている。宗教団体への寄付は政教分離原則や公選法に反する恐れがある。 |
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「自民党山口県第4選挙区支部」から多数回の支払いがある住吉神社(下関市)。安倍首相も訪れている(当時の記事)。 |
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住吉神社で行われた神社後援会の催しに参加した自民党の林芳正・現文科大臣。下関にある神社と安倍政権のつながりは深そうだ。 |
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