5月9日、北米トヨタCEOの大高英昭社長(65)が、元秘書へのセクハラ問題で、辞任に追い込まれた。約215億円もの損害賠償を請求され、提訴されたのだ。10日ほど経ったものの、新聞が巨大広告主のスキャンダルをいかに書けないかを象徴する問題となった。
さすがトヨタだけあって、マスコミ対策は万全だ。ほぼすべての主要メディアに「口止め料」を含めて、継続的に広告費を投じることにより、スキャンダルが出ても、記事を大きく扱わせない、調査報道をさせない、という構造を作り上げている。
このセクハラ215億円訴訟を、そのニュースの重みどおりに大きく扱ったのは、夕刊フジくらいのものだ。AFP BBも広告モデルなので、完全に黙殺しており、ニュース媒体としては失格だった。
新聞は、さすがに辞任に追い込まれてから、それなりに記事にせざるを得なかったが、本来、提訴の時点で、しっかり背景を取材して特集記事にするくらいの大きな話だ。だからこそ、社長は辞任したのである。
朝日新聞が辞任前に書いたのは一回だけで、5月4日、社会面の、ほとんどベタ扱いだった。文字数283という短い記事で(下記)、事実関係を淡々と伝えただけであった。
| 北米トヨタ社長らをセクハラ提訴 元秘書、215億円賠償求め 【ニューヨーク=渡辺知二】北米トヨタの大高英昭社長(65)の元秘書だった日本人女性社員(42)が、社長から繰り返しセクハラ(性的いやがらせ)を受けたとして、社長と同社、親会社のトヨタ自動車を相手取り、精神的な苦痛への損害賠償など計1億9千万ドル(約215億円)の支払いを求めてニューヨーク州地裁に提訴した。 トヨタ側は「セクハラは決して許さない方針を貫いている」としつつも、事実関係については「係争中の裁判にはコメントできない」としている。提訴は1日付。訴状によると、秘書時代の05年秋、出張先のホテルの部屋や公園で体をつかまれるなどのセクハラ行為を受けたという。 |
辞任発表後も、5月9日の夕刊で、「北米トヨタ・大高社長が辞任 セクハラ提訴、実質更迭」という見出しの記事を492字で書いただけだ。超トップクラスの広告主の悪口は、書けるわけがない。
◇アリバイ作り程度の日経
日経は、日本の経済紙でありながら、驚くべきことに、AP通信の報道を引用した(下記)。まさにアリバイ作りである。これ以上に広告主に優しい書き方はありえない。
「我々自身としては取材はしないけど、APが書いちゃったから一応、載せざるを得ないんですよ」という電通とトヨタ広告部門への言い訳が聞こえてきそうだ。文字数も朝日より100文字少ないベタ記事扱いで、目立たないように頑張っている姿を懸命に見せていた。日経にとって、顧客とは読者ではなく、広告を出してくれる大企業なのである。
| 北米トヨタ社長、セクハラで提訴日本人の元女性秘書 2006/05/03,日本経済新聞 朝刊,38ページ,186文字 【ニューヨーク=武類雅典】AP通信によると、トヨタ自動車の米国持ち株会社、北米トヨタの大高英昭社長からセクハラ(性的嫌がらせ)を受けたとして、日本人の元女性秘書(42)がトヨタ自動車本社、北米トヨタと同社長を相手取って損害賠償請求訴訟をニューヨーク州の裁判所に起こしたことが二日、わかった。 北米トヨタは「訴状の内容を確認できていないため、コメントできない」としている。 |
その後も、奥田会長が会見でセクハラ訴訟について「米国サイドでどう処理するか検討している」というコメントを報じただけ。
朝日同様、辞任に追い込まれて、はじめて書いた。というか、利益1兆円企業のスキャンダルなのだから、書かざるを得なくなったといえる。米自動車大手の経営危機が続いており、日米摩擦にも影響があるような問題で、更迭されるのは当然だった。それほど重大な問題だ。
しかし、更迭を迫るような記事は、更迭前には、絶対に書かない。
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