2004年2月以来、BSE問題で牛丼が食べられない時期が続いていた吉野家は、 2006年12月から販売を再開。そんな中、東京都足立区の吉野家で買った牛丼にケンタッキーフライドチキン並の骨が3本も含まれていたことが分かった。食べたのは中学生。危険部位の混入が気になった父親が店に骨を持って尋ねると、平身低頭な対応どころか「いやぁー大丈夫ですよ」「お金を返せばいいのか」と馬鹿にされた。「骨混入事件」以来、この家族は何が入っているかわからない吉野家の牛丼は、買うのをやめた。
【Digest】
◇“吉野家のBSE丼”と言われるリスク
◇「牛丼に骨が入ってたけど大丈夫かしら?」と妻から電話
◇危険部位混入ニュースで心配に・・・
◇「牛丼がケンタッキーフライドチキンみたいだった」と息子
◇骨が多いとわかっていながら…
◇「全然、大丈夫ですよ」と小馬鹿にした対応
◇問いつめると吉野家「あれは軟骨です」
◇わが家はもう吉野家の牛丼は食べない
◇“吉野家のBSE丼”と言われるリスク
韓国は昨年10月の米国産牛肉の輸入解禁に際し、条件として、BSEのリスクが高い骨の混入を全面的に禁止。X線異物検知器にかけて全量チェックし、1センチ×6ミリの小さな骨が1個見つかったことを理由に、
第一回目の輸入8.9トンの全てを廃棄または米国へ差し戻し処分としたほどだ。
つまり、米国産牛肉のみを使う「吉野家の牛丼」から骨が出たら、韓国なら一発アウトとなるほどの大問題であり、単に日本の基準が甘いだけで、実際には“吉野家のBSE丼”と疑われても仕方がない一大事なのである。この重大な事態に際し、吉野家は、どう対応したのか。
「ほんとうに唖然としましたよ。あれ以来、わが家では吉野家さんの牛丼を買わなくなりました」
怒るというよりあきれているのは、東京都足立区在住の小林信一さん(仮名)である。いったい何があったのか聞いてみた。
◇「牛丼に骨が入ってたけど大丈夫かしら?」と妻から電話
昨年2006年12月10日のことでした。日曜日だったのですが、翌日の仕事のために自宅近くにある事務所で仕事をしていました。
すると、妻から電話がかかってきたんですよ。午後3時前、そうですね2時40分か45分くらいだったと思います。
「隆史(長男=仮名、15歳)が牛丼を買ってきて食べたら、中に骨が入っていたのよ。大丈夫かしら?」
私は答えました。
--骨? たいしたことないだろ。
牛丼に骨が入っているというのもヘンですが、どうせ魚の小骨のようなもんだろうと、そのときは思っていました。ところが後でとんでもないことだとわかったのですが、まずその日のことを、順を追ってお話します。
わが家では、日曜日はだいたい10時過ぎに朝ご飯を食べますから、ちょうどおなかが空くのが2時過ぎくらいです。中学三年の息子が、母親と妹と自分のために昼食として牛丼を買いに吉野家さんに行ったんですよ。
それで、自分の分は牛丼、妹と母親のために豚丼2つ買って家に帰りました。息子が食べたら、骨が何本も入っていたと言うんです。
◇危険部位混入ニュースで心配に・・・
それを聞いても私はたいしたことないと思いました。ただ妻が電話してきたのは、それなりの理由があります。BSE問題で輸入が止まっていたアメリカの牛肉が再び入ってくるようになりましたよね。
そのときに、危険部位が混入されていたというニュースもあったから、一応心配したのですよ。息子は中学3年生で受験を控えていたので、ちょっと心配だったことは確かです。
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“骨入り”牛丼を販売した吉野屋の前に立つ小林信一さん(仮名)
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いわゆるBSE問題でアメリカ産牛肉の輸入が禁止されたのは、2004年2年11日。吉野屋が牛丼の販売を中止した“牛丼最後の日”には、その最後の一杯を食べるために人が列を作った。
その後、牛丼販売業者は豚丼を売り出すなど苦肉の策で切り抜けてきた。そして2006年12月1日から吉野家では牛丼の販売を再開し、時間限定で毎日牛丼を提供し始めた。
骨が混入していた今回の件は、再開からまもない時期のことだった。
妻とは電話でこんなやりとりをしました。
「いま問題になっているし、一応店に骨を見せるか、注意したほうがいいんじゃないかしら」
--骨っていってもたいしたことないんじゃないか。
「それが、けっこう大きな骨が3~4本もあるのよ」
さすがにそれには驚きました。あとで現物を私も見ましたが、細い骨とはいえ、厚みにしても2~3ミリはあったんじゃないでしょうか。
息子が、「食べたら口のなかでガリっとした」と言うんです。
こういう電話を受けたので、「いま仕事やってるけど、10分後くらいに吉野家の前で会おう。現物も持って来い」と私は息子に伝えました。
◇「牛丼がケンタッキーフライドチキンみたいだった」と息子
喫茶店で小林さんと私が、ここまで話したとき、長男の隆史君がやって来た。運動部に所属する育ち盛り。「腹いっぱい食べられて美味しい牛丼が大好きだ」と言う。さっそく話を聞いた。
--最初に食べたとき、どんな感じだった?
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吉野家の牛丼に混入されていた骨。けっこう大きく、「ケンタッキーフライドチキンのような感じだった」という。

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「噛んでいたら、口の中でガリっとしたので見てみると骨だったんです。でもそんなの気にしないで骨を取り出してまた食べ始めました。すると、また骨が見つかりました。ケンタッキー(フライドチキン)みたいな感じで、肉に骨がくっついていました」
--それは何本?
「けっこうありました。3本くらいだったな。1本は口の中で砕けてしまいました」
隆史君はこう証言した。
◇骨が多いとわかっていながら…
再び父親の信一さんの話を聞こう。
骨が入っていたという電話を受けてから、息子がティッシュに包んだ骨を持ってきたので、私がお店に行きました。男性の店長がいましたので、問題の骨と肉を見せて「口の中に入れて噛んでしまったけれど、大丈夫なんですか?」と聞いたんですよ。
危険部位が混入したというニュースを聞いていましたからね。
吉野屋の店長が真っ先に言った言葉は「今日は骨が多いんで、これから本社にクレームをつけようとしていたところなんです。すいません。お客さん」
店長は骨がたくさん入っていることを認めて謝ったんですよ。でも、それを聞いて気分的に悪くなって、「じゃ、わかっていて骨を入れたままにしてたんですか?」と私は店長に問いかけました。
本来なら、「どうも申し訳ありませんでした。すぐに新しいものと取り替えますので少しお待ちください」という対応ですべて終わりのはずだと思います。
ところが、その店長は「もう火を止めてしまったので牛丼はないんです」と言うじゃないですか。
確かに3時で牛丼は終わりとなっていました。しかし私が店を訪ねたのは3時を少し回ったばかりですよ。
◇「全然、大丈夫ですよ」と小馬鹿にした対応
店長は「本社に電話して対応を仰ぎますんで、話してください」と言って、店からこの地域を統括している管理部門に電話を入れました。店の奥で電話していたので、最初の会話の詳しい内容はわかりません。
そのときにお客のクレームカードというか「ご意見をお聞かせください」というようなシートに私は書き込みました。
電話に出たのは、この地域を統括する営業本部のような部署のAさんという方で、こんなやりとりをしました。
--どういうことなんですか?
A氏「牛丼は3時で終わりなんで、明日取りに来てもらえますか?」
--そういう問題じゃないでしょ。まず先に申し訳なかったとか、骨が入っていた原因を話すとか。骨の部分がどういうものなのか、話すべきじゃないんですか?
A氏「いやぁー大丈夫ですよ、全然.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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このような骨が3本入っていた。 |
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