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米国産牛肉で「米国を信じるだけ」の日本、「骨厳禁、独自検証」の韓国

情報提供
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日本でもまだ数が少ない米国産牛肉(都内スーパーにて)
 危険部位や指定外部位の混入を繰り返されながらも、米国側が作った書類を信じ続けるしかない日本。骨抜き肉のみの輸入にこだわり、独自の安全性検証も行って事実上の輸入停止状態が続く、焼肉の本場・韓国。昨秋からの両国の対応で、米国産牛肉の輸入を巡る両国の対応は対照的だ。日本では昨年11月に違反が発覚した米国工場の肉は、その1箱が廃棄になっただけで、違反発覚前のものも含め今でも国内で流通している。現状の仕組みで消費者の安全が守られるとは言いがたい。
Digest
  • アメリカの書類を信じるしかない日本
  • 検疫での徹底検査で違反を見つける韓国
  • 全量廃棄または差し戻し処分の韓国
  • ダイオキシン残留まで発覚
  • 輸入停止続く韓国
  • 日本は違反工場の牛肉がそのまま流通
  • 危険物混入の前科
  • 日本の税金で米国のための検査をした厚労省

【Digest】
◇アメリカの書類を信じるしかない日本
◇検疫での徹底検査で違反を見つける韓国
◇全量廃棄または差し戻し処分の韓国
◇ダイオキシン残留まで発覚
◇輸入停止続く韓国
◇日本は違反工場の牛肉がそのまま流通
◇危険物混入の前科
◇日本の税金で米国の検査をした間抜けな厚労省

アメリカの書類を信じるしかない日本

2月16日、農林水産省は、横浜港に陸揚げされた米国産牛肉9トン(473箱)の中から、日米間の輸入条件に違反する牛肉が見つかったと発表した。ばら肉2箱が、条件である生後20ヶ月以下かどうか不明な肉だった。輸出した米タイソン社は、問題の肉が20ヶ月以上のもので、輸入条件違反であることを認め、「誤って日本向け貨物と共に出荷されたもの」と説明しているという。

BSE発生をきっかけとしたアメリカからの輸入禁止が解除となった2005年12月から、輸入条件違反が見つかったのは今回で3度目だ。最初は2006年1月、特定危険部位である背骨(脊柱)が混入していた事が発覚。日本は米国からの輸入を再度全面停止した。

アメリカ側は「生後4ヶ月半の子牛の肉なので安全上の問題はない」と主張。日本政府は、アメリカの加工施設を査察し、安全性が確認された施設に限り、7月に輸入再開を認めた。

2回目は2006年11月8日、コロラド州のスイフト社の工場から出荷された肉11トン(760箱)で、輸入許可を受けていない「胸腺」という部位の肉が一箱混入していたことが発覚した。胸腺は特定危険部位には指定されていないため、日本政府は、全面禁止ではなくこの肉を出荷した工場からの輸入を一時停止する措置をとった。アメリカ側は、誤って日本向けに送られたものであり、出荷した工場には貨物の確認を強化するように改善措置を求めた、と釈明した。

日本の農水省、厚労省担当職員は、出荷した工場を現地視察し、改善措置が確実に行われていることが確認されたとして、12月26日に同施設からの輸入停止を解除した。

だが、違反しているのは本当にこの3件だけなのか。日本政府が出している条件は、

1) BSE汚染のおそれが少ない生後20ヶ月以内の牛肉であること
2) BSEの特定危険部位(脳や脊髄、背骨など)を除去していること
3) 日本が認める特定の施設しか輸出できない
の3つであるが、問題は、この条件が守られているかどうかを日本側の検疫では確認できないことだ。

確かに最初に発覚した背骨混入のように一目で分かる違反ならすぐチェックできる。しかし脊髄などの除去が確実に行なわれているのかどうかは、日本の検疫ではチェックする方法が無い。信じるしかないわけだ。

また、生後20ヶ月以内という条件も、カットされた牛肉では判断は不可能で、アメリカ側の書類を信じるしかない。

今回見つかった違反は、その書類に不備があったから見つかっただけで、他の輸入肉が本当に日本向けの条件に従ったものかどうかは、日本側から能動的にチェックする方法は全くないのである。

検疫での徹底検査で違反を見つける韓国

お隣の韓国でも、昨秋(2006年9月)、日本と同様にアメリカ産牛肉の輸入を再開した。しかし、なぜかまだ、アメリカ産牛肉は、一切店頭には並んでいないのだという。日本とは何が違うのか。

韓国が輸入解禁に際してつけた条件も、やはり3つある。

1) 生後30ヶ月以下の牛であること
2) 脳、脊髄、腸、骨が除かれていること
3) 韓国が認める特定の施設からしか輸出できない

牛の年齢は当初、日本と同様に20ヶ月以下を主張していたが、アメリカ側に譲歩した形となり、条件が甘くなった。ただし、2)については脳や脊髄などの特定危険部位を除去するのみならず、骨もとりのぞいた(Boneless)肉だけに限定し、厳しくしているのが特徴だ。

韓米間で合意した条件では、特定危険部位が見つかった場合は、輸入は全面中止され、骨片などが見つかった場合は出荷した工場に対してだけ輸入中止措置を取ることになった。

日本との違いは、日本の条件は20ヶ月以下と、日本側でチェックできない内容を重視したのに対して、韓国では、骨抜き肉という、韓国側でチェック可能な条件を重視したことにある。

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最初の輸入牛肉から見つかった骨片
出典)聯合ニュース
2006年11月24日

 そこで、輸入解禁後の第1回目の牛肉が10月30日に到着した。カンザス州クリークストーンファーム社の8.9トン(720箱)だ。韓国の検疫所は、なんとその肉全量をX線異物検知器にかけて、チェックした。そして720箱中1箱から1個の骨片を見つけた。 ニュース報道によれば、骨の大きさはは縦1cm横6mm、小指の爪くらいだという。

その結果、このクリークストーンファーム社からの輸入は一時停止処分にされた。

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検疫院のスタッフが骨片を見つけた肉を見せ説明
出典) The Korea Times 2006年11月27日

と、ここまでなら日本の対応と同じだが、なんと韓国政府は、一緒に送られてきた720箱全部を、廃棄もしくは米国へ差し戻し処分にしたのだ。

 アメリカ側は驚いた。農務省マイク・ジョハンズ長官は「韓国側はアメリカ側が同意していない基準を一方的に適用してきている。このような条件では貿易できない」と批判した。

全量廃棄または差し戻し処分の韓国

しかし、骨抜き肉という条件の中に、どの程度の大きさの骨までなら許容する、という条件は取り決められていなかったようだ。

11月23日には2回目の輸入牛肉が届いた。ネブラスカ州のプレミアム・プロテイン・プロダクト社の3.2トンだ。

同様のチェックがおこなわれ、3つの骨のかけら(2.2cm、1.3cm、7mm)が見つかった。そして再び、全量廃棄または差し戻し処分が行われた。

 輸出したプレミアム社は「驚きを隠せない。見つかったという骨がどういうものなのか分からないのでコメントできない」と困惑を隠せないコメントを行なった。

米国食肉協会の副会長ジョン・レディットン氏は、アメリカ紙の取材に答えて「このようなことを繰り返すとは、韓国は、本当は米国産牛肉の市場開放をするつもりはないのではないか」と疑念を表明している。

肝心の韓国政府の農林部は、朝鮮日報の取材に対して、「そうかといって牛肉の検疫基準を下げる訳にいかないではないか。今になって骨片の規制基準を1センチ以上へと緩和するなんてできないでしょう?骨片がBSEの危険部位である可能性はそれほど高くないにしても、もし国民が米国産牛肉を食べて、骨のかけらが出てきたら、どんな反応をするでしょうか」とコメント。

 さらに農林部の高官は「そのうえ韓米FTA(自由貿易協定)に反対するデモが続いている状況の中、検疫で手を抜くなんて考えられないことです」と話したという。

12月1日には3度目の輸入肉10.2トンがネブラスカ州から届いた。3度目も7個の骨片が発見され、全量廃棄・差し戻し処分。これで輸入再開から3回の輸入22トンの肉が全量差し戻しになってしまった。

韓国農林部の検疫部副部長のキム・チャン氏は「一連の輸入拒否は、韓米二国間協定に基づいたもの。もしアメリカが変更したいというのであれば交渉に応じる用意はある」と冷静に反応。これから米国産牛肉の輸入がもっと増えることを見越して、さらに12台のX線検知器を買い揃える予定だという。

ダイオキシン残留まで発覚

韓国側は追い討ちをかける様に、3度目の輸入牛肉に対して、ダイオキシンの残留検査を実施。韓国の基準値を超えるダイオキシンがみつかったと発表した

韓国の牛肉への基準値は5ppt(5pg/g)で、米国産牛肉から発見されたのは6.26pptであった。

 検疫部の研究員キム・ミーキュン氏は「輸入牛肉の有害物検査は、年間100サンプルほどランダムにおこなっているものだ」という

また、農林部の高官は、アメリカの骨片規制緩和要求に対して、「ダイオキシンが検出された以上、米国側は“なぜ骨片を理由に輸入を拒否するのか”とは言えなくなった」と話す。またイ・サンギル農林部畜産局長は、ダイオキシン汚染がはっきりすれば、さらに輸入制裁の追加措置をあり得ると言った。(以上、朝鮮日報より)

輸入停止続く韓国

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2月7-8日の米韓技術者会議
に対するデモの様子
出典)Pueblo chieftain紙
 2007年2月8日

韓国の主婦を対象にした調査では、70%がアメリカ牛肉は購入しない、と回答している。また現在、韓米間では、新たな自由貿易協定の話し合いの最中。韓国内では、その協定について、アメリカから押し付けられた韓国の自立を損なうものだという見方が強く、反対運動が起きている。

2月7-8日、牛肉輸入問題解決に向けての米韓技術者会談が、韓国で行なわれた。会場となった国立獣医科学検疫院前では、米国産牛肉輸入に反対する人たちが、激しい抗議行動を展開。アメリカ代表の車に卵を投げつけるなどして、27人が逮捕されたという。

会談の結果、米国間の隔たりは埋まらず、現状でも事実上の輸入停止状態が続いている。

そもそも、なぜアメリカは骨抜き肉に限定する協定にサインしたのか?そもそもあまりきちんと守ろうというつもりがなかったのではないか、と疑われる。日本に対しても、様々な違反肉を輸出しながら、そのたびに「生後20ヶ月を緩和してアメリカ国内並みの生後30ヶ月以内にしろ」という圧力をかけてきている。

協定違反をしても謝るわけではなく、それを逆手に条件緩和を迫るというやり方だ。

韓国に対しても、アメリカ側の本来の狙いは、骨付き肉も含めた全面解除にあるようだ。

韓国Yonhapニュース2007年1月30日の記事によると、輸入がストップする前の2003年で、韓国の輸入額は8億2000万ドル(約900億円)。そのうち骨抜き肉は4億5千万ドル(495億円)。骨付きカルビなどの骨付き肉が半分を占めていた。

ロイター12月1日配信記事では、アメリカでの牛肉問題でのロビー団体である米国牧畜業者牛肉協会は、ロイターの取材に対して「韓国向け輸出は、現在の骨抜き肉だけではほとんど商売にならない」と本音を覗かせている。

そうしたアメリカの思惑を見越して、韓国側はタフな交渉をやっているように見える。

日本は違反工場の牛肉がそのまま流通

一方、日本政府の対応はどうか。今年2月に発覚した生後20ヶ月以上の肉は、どのように処分されるのだろうか?

厚生労働省に問い合わせてみた。

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畜憤2008/02/01 02:50
掛園 浩2008/02/01 02:50
ここは…2008/02/01 02:50
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