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バターもできないホモ牛乳、「明治おいしい牛乳」

情報提供
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バターづくりで選んだ牛乳3種類
明治おいしい牛乳/タカナシ低温殺菌牛乳/中洞牧場 四季むかしの牛乳
 バターは牛乳から作られる。小学生でも知っていることだが、では、いま日本で売られている牛乳から、バターができるのだろうか?明治おいしい牛乳(高温殺菌のホモ牛乳)、タカナシ低温殺菌牛乳(低温殺菌のホモ牛乳)、中洞牧場四季むかしの牛乳(低温殺菌のノンホモ牛乳)の3つの牛乳で、バターづくりに挑戦してみた。結果、「おいしい牛乳」などという割に、牛乳の中の脂肪球が均一化された「ホモ」牛乳からは、バターもできなかった。さらに、どこの牧場の牛の乳かも分からないのだった。
 小学4年生の甥っ子に聞いてみた。

--バターは何からできているか知っている?

 「牛の乳だよ」

--スーパーで売っている牛乳や給食で飲む牛乳からバターはできると思う?

 「できないよ。水で薄めてあるから」

 遊牧民は、山羊などの乳を容器に入れて揺り動かし、棒でかきまぜて固めてつくったバターを好んでいた。紀元前のインドの教典にもバターづくりが書かれているという。

 わたしも遊牧民のように、牛乳からバターをつくってみたい。

 いまの牛乳では、できないのだろうか?

 「できない!」と言う甥っ子に代わって、バターづくりに挑戦してみることにした。
 
◇雪印のHPに生クリームでの作り方が紹介
 以前、生クリームからバターをつくったことがある。
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雪印のHPに載っていたバター作りのQ&Aでは、「バターは、生乳を分離して作られる生クリームを原料にして手作りすることができます。」と、生クリームからバターができると載っている。

 雪印のHPに「脂肪率40%以上の生クリームを利用して、バターを作ってみましょう。」と出ていた。用意するものは「脂肪率40%以上の生クリーム200ml/食塩少々/1000ml程度の液体が入る広口のフタ付き容器」。

 ポイントは、振り続けること。
 つくり方はいたって簡単。必要なことと言えば振り続ける体力くらい。
 
 「バターは、生乳を分離して作られる生クリームを原料にして手作りすることができます。」とあったが、牛乳からバターができるとは書かれていなかった。

 Wikipedia「バター」の項目の「バターの製造方法」のところに、
1)牛乳からクリームを分離
2)攪拌カクハン機機にいれて攪拌し、脂肪のかたまりをつくる。
3)冷水で洗浄し、脂肪分以外を除去する。
 生クリームからバターをつくるというのは、2)からスタートということになる。

 「手作りの場合」のところには、
1)牛乳を瓶にいれ、暫く振ると、脂肪が分離する
2)分離した脂肪がくっつきだし、振ったときの感触が変わる
3)練って水分を抜いた後、好みで塩を入れて完成した手作りバター
 そうか・・・。生クリームと同じように振り続ければいいのだ。

 つまり、生乳を分離してつくられるクリーム(乳脂肪)を原料にしてつくったのがバター。牛乳の中の脂肪を集めてつくったバターは、牛乳を振り混ぜて成分を分離し、脂肪分を固めるとできる。

 市販の牛乳からバターをつくってみよう。

◇高温殺菌牛乳になった背景に「森永ヒ素中毒事件」

私は週刊誌の編集者時代、牛乳に関していくつか企画してきた。現在も「牛乳の裏側」をテーマに書籍を編集中だ。

 昭和30年代ごろまでの牛乳は、近距離の牧場の乳で、殺菌方法も62~65℃で30分間湯煎し、ビン入りだった。いまや、市販されている牛乳は120℃以上の高温殺菌(ほとんどが130℃・2秒間殺菌)ばかり。高温殺菌牛乳が90%以上のシェアを占めている。

 高温で牛乳を殺菌しなければならなくなった背景には、1955年に起きた「森永ヒ素中毒事件」があった。事件後、「乳等省令」(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)が一部改正され、それまで使っていた乳質安定剤を使うことができなくなったため、森永は安定した商品を開発するために当時、最新式の牛乳殺菌機をイギリスから輸入した。そして、120℃数秒の高温殺菌で多少劣悪な牛乳も商品化が可能になった。他社もこれに続いた。

 牛乳の殺菌方法は4種類に区分される。

(1)超高温短時間殺菌法(UHT=Ultra High Temperature)
 120~130℃/2秒間、賞味期限は2週間。
 日本でもっとも一般的な殺菌方法。欧米での一般的なUHT(直接殺菌法)は135~150℃と殺菌温度も高いが、これは無菌パックに入れている船舶用や非常食用。本来は常温長期保存牛乳(LL=Long Life)のための殺菌方法だが、日本では大量生産するための方法となっている。原乳に含まれる雑菌のほとんどを殺すことで、牛乳の賞味期限を延ばすことが可能になった。

(2)高温短時間殺菌法(HTST=High Temperature Short Time)
 72~85℃/15~40秒間(一般的には72~75℃・15秒間)、賞味期限は7日ぐらい。
 世界的に一般的な殺菌方法。低温殺菌ほどではないが、牛乳の風味も残る。15秒と短時間殺菌のため大量生産も可能。

(3)低温保持殺菌法(LTLT=Low Temperature Long Time)
 63~65℃/30分間、賞味期限は5~7日。
 有害菌のみを殺菌し、有益菌は死滅しない。牛乳の風味が残る。殺菌時間に30分もかかるため、大量生産には向かない。

(4)そのほか無殺菌
 賞味期限は5日程度。
 牛から搾ったままの乳をそのまま詰めた牛乳。御料牧場、東毛牛乳などでもつくっていたが、現在では北海道中札内のレディース・ファーム「思いやり牛乳」のみ。搾乳、運搬、充填を通し衛生状態を非常に高くしなければできない。

◇日本の消費者が飲んでいるのは、ほぼホモ牛乳
 高温殺菌では、ステンレス製の板(プレート)の間に超高温の蒸気と牛乳を交互に通し、瞬時に120℃以上で殺菌するが、120℃以上で原乳を殺菌すると、牛乳の脂肪球(牛乳の脂肪は球状で平均4ミクロン)がプレートにこびりついて商品化できなくなる。そのこびりつきを防ぐために「ホモゲナイズ(均一化)」という工程をとっている。

 牛乳をホモゲナイザーという機械に通し、高圧ピストンで牛乳の脂肪球を破壊し、細かくしてプレートへのこびりつきをなくす。牛乳の中にある脂肪球の大きさはバラバラだが、それをホモジナイズすることで、脂肪球を小さく砕き、大きさを揃えることができる。

 この工程から「ホモ牛乳」という商品名になった。

 1952年、森永乳業が「森永ホモ牛乳」を売り出したら大ヒットした。当時のパッケージキャラクターは「ホモちゃん」。これも、牛乳が分離しないように乳脂肪分を均質化する「ホモジナイズ」の製造工程に由来する。いまでも、森永の牛乳プリンについているキャラクターが「ホモちゃん」。表情が24種類ほどあるそうだ。

 各メーカーは、UHTの滅菌機とあわせてホモゲナイザーを導入し、日本の牛乳のほとんどが120℃以上で滅菌されるようになった。

 高温殺菌ではホモジナイズしないと殺菌時に殺菌機にこげがつくため、必ずこの工程を経ている。

 低温殺菌の場合、この工程を経ているもの(ホモ牛乳)と経ていないもの(ノンホモ)がある。

 ホモジナイズした乳脂肪分は、機械にこびりつかないため大量生産が容易である。

 わたしたち消費者が飲んでいるのは、大量生産が可能な「ホモ牛乳」が大半である。
 
 そのホモ牛乳は、風味が均一になるとも言われている一方で、細かくした脂肪球は表面積が大きくなって酸化しやすくなるため、酸化臭がつき、腐敗しやすくなる。また、酸化が進み、過酸化脂質という有害物質になるとも言われている。酸化と同時に細菌が激増し、腐敗が促進されるのを補うために超高温で殺菌しているとも言える。(参考:高松修著『牛乳戦争』など)。

 有害菌も死滅するが、同時に有益菌も死滅する。生きた乳酸菌がもてはやされているのに、牛乳ではそういった話題を聞かない。

◇3種の牛乳をシャカシャカ振ってバターづくり
 今回バターづくりに選んだのは、明治おいしい牛乳(高温殺菌のホモ牛乳)、タカナシ低温殺菌牛乳(低温殺菌のホモ牛乳)、中洞牧場四季むかしの牛乳(低温殺菌のノンホモ牛乳)の3つの牛乳だ。
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上:明治おいしい牛乳(高温殺菌のホモ牛乳)
中:タカナシ低温殺菌牛乳(低温殺菌のホモ牛乳)
下:中洞牧場四季むかしの牛乳(低温殺菌のノンホモ牛乳)

ホモ牛乳からバターはできなかった

商品名 明治おいしい牛乳
無脂乳固形分 8.3%以上
乳脂肪分 3.5%以上
原材料名 生乳100%
殺菌 130℃2秒間
内容量 1000ml
賞味期限 上部シール部に記載
保存方法10℃以下で保存してください。
製造者 明治乳業(株) 東京都江東区新砂1-2-10

商品名 タカナシ低温殺菌牛乳
無脂乳固形分 8.4%以上
乳脂肪分 3.6%以上
原材料名 生乳100%
殺菌 66℃30分間
内容量 1000ml
消費期限 上部に記載
保存方法 要冷蔵(10℃以下で保存)
開封後の取扱 開封後は消費期限にかかわらず、10℃以下で保存し、お早めにお召し上がりください。
製造所所在地 岩手県岩手郡葛巻町江刈12-218-1
製造者 高梨乳業株式会社岩手工場

商品名 四季むかしの牛乳
無脂乳固形分 8.0%以上
乳脂肪分 3.0%以上
原材料名 生乳100%
殺菌 63℃30分間
内容量 720ml
賞味期限 フタに記載
保存方法 要冷蔵 10℃以下
製造所所在地 岩手県宮古市田老小堀内19-15
製造者 (株)中洞牧場


 雪印のHPに、「雪印北海道バター」1個(200g)を作るためには、200mlの牛乳びんで約22本分(約4.4リットル)の牛乳が必要。ただし、バターをつくるために必要な牛乳の量は、牛乳の脂肪率によっても変わる、とあった。
 この計算方式が出ていた。

 200mlの牛乳だと20g弱のバターができることになる。

 200mlの牛乳をそれぞれビンに注ぎ、しっかりふたを閉めた。

 まず、高温殺菌&ホモ牛乳の明治おいしい牛乳。

 ビンをシャカシャカと振りはじめた。白く泡立つ。でも、5分経っても変わらない。10分くらいになるとさすがに疲れてきた。変化なし。たしかに体力がいる。手を止め、少し休み休み振ってみたが、けっきょく牛乳は変わらなかった。諦める。

 次は、低温殺菌&ホモ牛乳のタカナシ低温殺菌牛乳。

 シャカシャカとやってみた。3分、5分・・・10分。こちらも変化なし。諦めた。

 腕が疲れる~~。

 最後は、低温殺菌&ノンホモ牛乳の中洞牧場の四季むかしの牛乳。

牛乳のビンのふたを開けてみると、ちょっとだけクリームが上に浮いていた。これがノンホモの特徴だ。シャカシャカやりはじめた。5分くらい経つとクリームみたいなものが浮いてきた。カッテージチーズみたいな感じのものだ。

 さらに振り続けたら、液体と固体に分離してきた。固体は黄色い。さらに振り続けること数10分。脂肪の固まりと白い水(バターミルク)に分かれてきた。
 
 バターだ!

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中洞牧場四季むかしの牛乳(低温殺菌のノンホモ牛乳)でできたバター。塩を少し加えて味をつけ、パンに塗って食べるとなかなかの味わいだった。

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You-me2017/08/18 23:21

ホモジナイズドされた牛乳からはバターが出来にくいだけで絶対にできないわけじゃない。自由研究http://www.nei.jpn.org/H20_makoto_rika.pdfで覆されるMyNewsJapan

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Nihonjin2015/12/20 13:16

「1952年、森永乳業が「森永ホモ牛乳」を売り出したら大ヒットした。当時のパッケージキャラクターは「ホモちゃん」」

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記者からの追加情報

週刊誌の編集者時代、牛乳に関していくつか企画してきた。
■「牛乳物語 うまい、まずいの見分け方」~牛乳の基礎知識、ダイオキシン汚染、元・森永乳業社員の告発などから牛乳のことを考えた( 1999年)。
■「雪印事件から1年 ホンモノの牛乳が飲みたい」~栄養や風味に優れる低温殺菌牛乳について取り上げた。(2001年)
■「飲み過ぎていませんか?『脱・牛乳』を考える」(2001年)
 そして現在、「牛乳の裏側」をテーマに書籍を編集中である。(山中登志子)

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