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ウンチの処理に大活躍 中身読まれず犬舎や塗装に一次利用される新聞

情報提供
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ブリーダーにとっても愛犬家にとっても、新聞紙は必需品。押し紙は重宝される。
 まだ封も解かれない新聞の束が、犬の繁殖業者など意外な業者に無償提供され「一次利用」されている。販売店が1ヶ月あたり1紙2千円弱で仕入れたものを無償で提供するのは、それだけ、新聞社から押し付けられ配達先がない新聞が大量に余っていることを示す。古紙回収業者に売っても二束三文にしかならないから、契約者などにサービスで提供するのだ。これら純粋に紙として利用される新聞の広告効果は、もちろんゼロである。
Digest
  • 新聞のもうひとつの側面
  • 「押し紙」が紙として一次利用される
  • 犬舎への新聞普及率は100%か
  • 子犬は新聞で育つ
  • 塗装業者・魚屋さん・花屋さん
  • かつてはリンゴ農家が
  • 生産、消費、リサイクルのパターンを破壊
  • 「回収した『押し紙』を燃やしていた…」

新聞社が新聞販売店に買い取りを強制する新聞、「押し紙」の行き先は製紙工場だけではない。犬舎への新聞普及率が高い、子犬は新聞と共に成長する、といった現象がなぜ起きているのか。

新聞のもうひとつの側面

新聞という言葉には2つのニュアンスがある。ニュースを伝える定期刊行物という側面と、それが印刷された紙という側面である。後者の用途としては、たとえば1960年代ごろは、弁当の包装紙として新聞紙が利用されていた。

少し下品な例になるが、災害時にトイレが使えない場合、新聞紙を利用して排便したりする。『ほぼ日刊イトイ新聞』の第1264回には、こんな記述がある。

 小千谷市では簡易トイレ30室の半数近くが
 『使用不能』だった。
 断水が続き、便を容器まで流す水が足りない。
 車中泊を続ける渡辺幸雄さん(64)は
 近くの自宅で用を足す。
 水が出ないので大便は新聞紙に包んでゴミに出す。
 戦後の貧しい時代は、尻ぬぐいの便所紙としても使われていた。

新聞は単にニュースの媒体としてだけではなくて、ペーパーとしての重責も担ってきたのである。

「押し紙」が紙として一次利用される

最近、わたしのホームページに「押し紙」の行き先について、苦笑を禁じ得ないような情報が寄せられている。

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緑色の紐で縛られビニールで包装されたものが販売店に余った残紙、あるいは「押し紙」。それ意外は古紙。(埼玉県内の朝日新聞販売店にて)

「押し紙」とは、新聞社が新聞販売店に対して拡販のノルマを課し、それが達成できなかった場合、買い取りを強制する新聞のことである。実際に販売店が配達している新聞が1000部しかないのに、1500部を買い取らされたならば、500部が「押し紙」である。

販売店に搬入される新聞のうち、少なくとも2割から3割は「押し紙」と推定される。(参考:「毎日新聞「押し紙」の決定的証拠 大阪の販売店主が調停申し立て 損害6,300万円返還求め」

「押し紙」は必ずしも古紙回収業者によって回収され、製紙工場へ運ばれるとは限らない。販売店が古紙業者に売っても10キロあたり20円など、ほとんど値がつかないため、「押し紙」を必要とする意外な業者に無償提供したり、契約者へのサービスとして提供しているのだ。

 九州地区のある新聞販売店主が言う。

「わたしの店では、塗装業者やバラを栽培している農家、犬の繁殖業者らから乞われて、無料で『押し紙』を提供していた時期がありました。『押し紙』はまったくの不要物ですから、おおいに利用してもらったわけです」

「どのような用途があるのですか?」

「塗装業者の場合、塗装作業をするとき、ペンキがかかってはいけない部分をマスキングする必要があります。家の外壁を塗装する場合は、窓を新聞でマスキングします。車の塗装でも、やはり窓をマスキングします。そのマスキングを『押し紙』を使ってやるわけです。また、バラ農家は、市場へ出荷するバラの梱包に『押し紙』を使うようです。さらに犬の繁殖業者は、犬舎の床に『押し紙』を敷くようです」

これらの用途には、一旦、配達され、読み捨てられた新聞で十分に間に合うが、やはり人の手あかがついた古紙よりも、ビニール梱包が解かれていない新品の新聞を選びたいというのが人情なのだろう。

新聞が、情報としてではなく紙として、一次利用されるのだ。「押し紙」は廃棄される新聞であるから、それを利用することを責めるわけにもいかない。

犬舎への新聞普及率は100%か

「押し紙」の意外な回収者について、わたしが初めて情報提供を受けたのは、昨年8月だった。わたしはメールで、詳しく事情を問い合わせてみた。

「それは新聞紙が必要な八百屋さんとか、そういった人なのでしょうか?差し支えなければ、教えていただけないでしょうか。」

すぐに返事が来た。

「私は、その販売所に住み込みで働いていた人から、犬の繁殖業者が(黒薮注:「押し紙」を)取りにくると聞いています。倉庫が、すぐに余った新聞で一杯になるので困るとも聞いていました。どの程度の頻度で取りにきていたのかは、分かりません」

 犬の繁殖業者が、販売店から「押し紙」を回収しているというのであった。

ちなみに「倉庫がすぐに余った新聞で一杯になる」理由は、新聞社が販売店に対して多量の「押し紙」を課しているからである。配達されない新聞が積み上げられるからだ。

わたしは知り合いの販売店主たちに、犬の繁殖業者が「押し紙」を回収している実態は一般化しているのか尋ねてみた。すると犬の繁殖業者に「押し紙」を提供していると答えた店主さんが複数、いた。ただ「押し紙」全体の割会からすれば、量はそれほど多くはないという。

前述した九州の販売店主も、押し紙を再利用のため提供している一人だ。店主の一人が言う。

「月に2,3回、知り合いの繁殖業者が『押し紙』を取りにくるので、ビニールで梱包された新聞の束を5つか6つ差し上げていました。『新聞はいくらあっても足らない』と話していました」

「何に使うのでしょうか」

「ウンチの処理ですよ」

繁殖業者の犬舎への新聞普及率は、100%といっても過言ではない。

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新聞は犬舎の床に敷かれる。新聞の上に横たわるのは、出産を控えた犬。(ブリーダーのHPより許可を得て使用)

子犬は新聞で育つ

「犬」「新聞紙」をヤフーで検索してみると、273、000件ものホームページが出てきた。その中には、犬の繁殖業者が宣伝用に作成したものもある。たとえば鹿児島県のソルトン犬舎という業者のホームページでは、新聞紙の用途を次のように説明している。

「ソルトンでは生まれてから(黒薮注:犬を)お渡しするまで新聞紙の上で育てています。そうすると新聞の上で排便、排尿する習慣が付きます。これを”すみつけ”といいます。お渡しするまでには当犬舎で、70~80%新聞紙の上に(黒薮注:排便を)します。常に新しい新聞紙を敷いてやらねばならず大変な労力と時間が必要ですが、そのために犬と接する機会が多くなるので人に慣れた犬に仕上がります。」

排便のしつけに多量の新聞紙を使っているというのだ。

ちなみに自宅で犬を飼っている人も新聞紙を活用している。たとえば犬を散歩に連れ出す時は、排便に備えて、ビニール袋と新聞紙を携えている人も多い。

新聞社にとっては不名誉な話だが、ニュースよりも、こちらの方が主要な目的で新聞を「購読」して

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上:花屋さんでも新聞紙が利用されている。下:新聞古紙の単価を示す伝票。古紙業者に売っても、ほとんどカネにならないことが分かる。

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かーい2008/02/01 02:51
新聞屋の暴挙2008/02/01 02:50
多用途の生活用品2008/02/01 02:50
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