偽モノの「みずほグループ」(みずほフィナンシャル)にだまされたA子さん。被害額は約200万円。
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大銀行や金融会社をかたって金をだまし取る「貸します詐欺」が大繁盛している。愛媛の40代の女性は今春、「みずほフィナンシャル」をかたった詐欺師たちに、教育資金に貯めていた200万円をだましとられた。その手口は、多重債務者の弱みにつけ込んだもの。一方、商標を悪用された“本物みずほ”は被害届を出して被害防止に努めることもなく、被害者女性に対して、迷惑そうな口調で冷淡な対応をとっただけだった。(偽みずほ、本物みずほとのやりとり音声《会員限定:ファイル形式はWMA》つき)。
【Digest】
◇だまし取られた教育資金200万円!
◇「詐欺かも」と思いつつだまされた
◇次々に変わる口座 センセイって?
◇住所は雑居ビル、登録番号も偽モノ
◇サラ金の金利を取り返せるなんて
◇「みずほなら安心できると…」
◇被害は自己責任?冷淡な本物「みずほ」
◇だまし取られた教育資金200万円! サラ金・ヤミ金・商工ローン--多重債務の相談でごった返す民間相談所「松山たちばなの会」(愛媛県松山市)に、思いつめた表情のA子さん(40歳代)が現れたのは、5月初めのことだ。
「最近、新手の詐欺被害に遭って駆け込む人が増えているんですよ。銀行や大手サラ金をかたって、金を取る“保証金詐欺”(貸します詐欺の別名)なんです」
青野貴美子事務局長が言う。
A子さんも被害者のひとり、偽モノの「みずほグループ」にだまされたという。被害額は約200万円にものぼる。
「…融資してくれるというので、それに必要だというお金を払ってしまったんです。子どもの学資資金にとっておいたお金なんです。もうどうすればいいのか」
夫と離婚し母子で細々と暮らしているというA子さんは、時折、涙を拭きながら打ち明けた。そして1枚のハガキを取り出した。すべてはこのハガキがきっかけだった。
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みずほファイナンシャルから届いたハガキ。表にはみずほ銀行のロゴに酷似した「MIZUHO」。シール式のハガキを開くと、〈期間限定・2007年MIZUHO 「低利・ご融資拡大キャンペーン」と融資勧誘の文句が並んでいる。
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ハガキの表にはみずほ銀行のロゴに酷似した「MIZUHO」。ロゴに続く社名は「みずほフィナンシャル株式会社」。シール式のハガキを開いた中に、融資勧誘の文句が並んでいる。
〈期間限定・2007年MIZUHO
「低利・ご融資拡大キャンペーン」グレーゾーン金利撤廃により低金利でのご融資が受けやすくなりました!!〉
5・2%~12・6%の金利で融資可能だと目立つ文字で書いてある。消費者金融の金利は現在20数%~18%だから、事実とすればかなり安い。だが、多重債務問題の相談をしたことのある人なら、一見してうさん臭さを感じるシロモノだ。サラ金苦の人に届くこの手の勧誘は、まずヤミ金か詐欺とみて間違いない、というのが常識となっている。
そんな常識をA子さんは持ち合わせていなかった。あるいは消費者金融数社の返済に窮していたことが判断を鈍らせたのか、まんまとワナにはまった。そして融資どころか、子どものために大事にとっておいた、なけなしの学資200万円を詐取されてしまったというわけだ。
「なんとか取り戻せないでしょうか」
そう訴えるA子さんを前に、青野事務局長は「いままでの経験から、この手の詐欺で被害金を取り返せた例は少ない。とにかく弁護士と警察に相談しましょう」と厳しい現実を伝えた。
相手の素性がまったくわからない。警察の動きも鈍くほとんどつかまらない。運良く逮捕されたとしても、まず資産を残していないから被害回復にはつながらない。ヤミ金同様、ほとんどの被害者が泣き寝入りしているのが実態なのだ。
◇「詐欺かも」と思いつつだまされた それにしても、融資を受けるハズの側が、なぜ200万円もの大金を取られるはめになったのか。顛末をA子さんが話す。
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A子さんが騙された総額200万円の内訳メモ。データ削除費、強制執行受理費、統一申請、個人情報保護登録、解除手続き、代行費と、入金名目はその都度変わった。
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「最初は数十万の融資を受けるつもりでした。保険代が4万500円必要になりますよと言われたので信用して送金しました。すると次は手数料がもう4万円必要だとか。さらにコンピュータトラブルで登録料がいるとかなんとか…」
「データ削除費」「「強制執行受理費」「統一申請」「個人情報保護登録」「解除手続き」「代行費」入金名目はその都度変わった。金額も次第にエスカレートし、10万円から20万円単位に。A子さんは、たちまち数十万を費やした。
「融資金額も引き上げて、数百万円融資できると。それを信じるしかなく送金を続けたんです…」
送金額は半月で100万円を超えた。それでも融資はない。ここへきてA子さんはようやく不信感を抱きはじめるが、まだきっぱりと立ち向かうことはできなかった。
「だまされているかも…と思いました。でも、もう後に引けなかったんです。サラ金の返済もできないし、生活もできない。融資してもらうしかありませんでした。信じるしかなかった。対応も丁寧で…」
丁寧さにもしてやられた。ヤミ金のように「ぶっ殺すぞ」などと脅してくれれば、きっと早い時点で相談する気になっただろうが、「偽みずほ」の対応は実に優しい。口調の好感度は、おそらく本物以上だろう。
ハガキに書かれた「みずほカスタマーセンター」のフリーダイヤルに出た若い男性”社員”の声色を、A子さんが録音した電話のやりとりから聞いてみよう(音声1)。
--お電話ありがとうございます。みずほフィナンシャルでございます。
ちなみにみずほフィナンシャル(株)という会社は実在しない。実在するのは「みずほフィナンシャルグループ」である。
A子「Aと申しますが、ツクモさんは?」
--ツクモでございますか? 確認を取りますのでお待ちください。
「いつもこういう感じなんです。ヤミ金とかは、荒っぽいという感じがあったんですが。ここはすごく丁寧で。だからちゃんとしたところかなと思ったんですよ」とA子さんは苦々しく振り返る。
ツクモとはA子さんを担当している男だ。
猫なで声で相手を油断させる「偽みずほ」の社員。200万円を騙し取った組織の人間とはとても思えない。羊の皮をかぶった狼とはこのことだ。
さらにあきれたことに、ハガキにはこんな注意書きまである。
〈!「みずほ」を名乗った金融業者や貸します詐欺(振り込め詐欺)にご注意ください〉
これも、A子さんは間に受けてしまったのだ。
結局、A子さんは4月初めから5月にかけて約1ヶ月間にわたり、偽みずほに計20回、計207万円もの金を振り込んだ。A子さんが受け取ったのはたった一回、4000円だけである。
◇次々に変わる口座 センセイって誰? 濡れ手に粟で200万円をだましとってもなお、「偽みずほ」は、手を緩めようとしない。「受領申請」というわけのわからない手数料名目で、15万円を払えというのだ。支払い先は、正体不明のホシノという”先生”だという。
以下、偽みずほ流だましのトークを録音から紹介しよう(音声2)。A子さんと携帯電話を通じて話しているのは、担当のツクモ氏だ。
ツクモ「これから内容確認しますのでお待ちください(保留)…まず銀行のほうが群馬銀行になります」
A子「群馬銀行?」
ツクモ「…支店名が宇都宮支店になります。(中略)…普通口座のほうで番号のほうが059●●●ですね。先生のほうのお名前がホシノ●●●●先生になります」
ホシノという名前にAさんは聞き覚えがあった。
4月の初めごろ、何度か入金するよう命じられた口座の名義人だ。そのときはりそな銀行宇都宮支店だったが、今度は群馬銀行。A子さんは素朴な疑問を抱いた。なぜ、みずほじゃなくて群馬銀行なのか--この質問に、偽みずほ社員は苦しい説明をする。
ツクモ「えーホシノ先生ですか…そのときはりそな銀行さんのほうですかね? 一応センセイのほう…お口座ふたつお持ちみたいな
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偽みずほのハガキにある住所は東京都新宿区新宿3丁目。そのMビルを訪れてみると、まんが喫茶などが入居する雑居ビルだった。
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