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「立派な入れ墨ですね」新聞拡張団にご機嫌とる新聞社の実態

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新聞販売店の玄関付近に山積みにされた洗剤。新聞拡販の景品として使われる。経費は販売店が負担する。埼玉県内の販売店で撮影。
 日本の新聞社が掲げる部数至上主義。そのしわ寄せは「押し紙」などの形で販売店に押し寄せているが、その背後に影のように存在しているのが、新聞の「セールスチーム」、つまり新聞拡張団である。セールスチームは暴力装置として機能する場合もあり、その強引な拡販活動を事実上、仕掛けているのは、新聞社による非人間的な人事管理だ。ジャーナリズム活動への評価ではなく強引な拡販で読まれているだけの日本の新聞など、蜃気楼にすぎない。
Digest
  • 新聞配達員をバイクが尾行
  • 正体を明かさない毎日新聞社
  • 新聞のセールスチーム=拡張団
  • 法人格を持たずに企業活動
  • 読売販売局長「立派な入れ墨ですね」
  • 拡張員に福利厚生はない
  • 包丁セットの景品見せ「ひと月、ひと突き」
  • 米を配達しながら新聞拡販
  • 「1万円を現金で渡すから購読してくれよ・・・」
  • 部数至上主義の返り討ちが

みずから暴力団員を名乗るなど、嚇しすかしによる新聞勧誘がいまだに後を絶たない。

わたし自身、読売新聞のヤクザまがいの勧誘を何度も受けたことがある。

「このあたりは○○さんの縄張りだから、今、新聞の購読契約をしなければ、後々、煩わされることになるぞ!」

と、凄んでみせるのだった。

2005年5月30日、千葉市の幕張で朝日新聞・販売店で働く従業員が、強引な新聞拡販で逮捕された。フジテレビの報道によると容疑者は、客の男性が、

「新聞はいいです」

と、断っているのに、

「ありがとうございます」

と、揚げ足を取ったり、

「時間を無駄にしたから、営業の保証をしろ!」

 と、言いがかりをつけたという。

勧誘は延々と2時間も続いた。男性が購読を断ったにもかかわらず、翌日、男性宅に朝日新聞が投函された。そこで警察に相談すると、容疑者が男性宅に押しかけてきて、ドアを蹴ったり、叫び声を上げたという。

2002年の5月18日には、やはり朝日新聞・販売店の従業員が千葉県柏市で新聞勧誘をしているうちに、逆上して59歳の男性を殴り倒し、意識不明の重症を負わせた。

これら暴力的な勧誘員の所属は、販売店の従業員である場合と、別組織である場合があるものの、実態に大差はない。

新聞社の販売政策の背後に控える得体の知れない闇。それを探っていくと、部数至上主義を支える「暴力装置」が、新聞社の経営構造に組み込まれている実態が分かってきた。

新聞配達員をバイクが尾行

2007年の5月21日の早朝、大阪府箕面市で住民をおびえさせかねない奇妙な出来事があった。新聞を配達する杉生守夫さん(毎日新聞・箕面販売所の所長)の後を、2台のバイクが尾行し始めたのである。

バイクに乗った男は、杉生さんが新聞を投函するたびに、その家の表札を、大声で読み上げたという。しかも、名前は呼び捨て。夜明け前の街に男の声が異様に響いた。バイクを暴走させたりもしたらしい。

 発端は、昨年の6月に杉生さんが、「押し紙」(注文部数を超えて販売店に搬入され、卸代金を徴収される新聞)で被った約6300万円の損害賠償を求めて、大阪簡易裁判所に調停を申し立てたことである。
(参照毎日新聞「押し紙」の決定的証拠 大阪の販売店主が調停申し立て 損害6,300万円返還求め)

しかし、調停は合意に達せず、今年の5月19日に杉生さんは、大阪地裁に「押し紙」裁判を提起した。「押し紙」の負担を強いられ、自宅も売却せざるを得なかったこれまでの経緯を考えると、当然の措置だった。

これに対して毎日新聞社は、21日の早朝から箕面販売所の配達員たちを尾行して、新聞購読者の住所を突きとめる作業を始めたのである。

バイクによる尾行の目的は何かといえば、新聞社が新しい読者名簿を作成するプロセスのひとつなのだ。通常、新聞社が読者調査を実施する時は、販売店を強制廃業することが前提となる。配達員の後をつけて行き、新聞が投函された住所を地図に書き込んでいく。そうすれば、新たに別の販売店を設けて、そこから新聞を配達できる。いわば読者調査は、販売店の死刑宣告にほかならない。

 たとえば福岡県の 真村裁判の原告である真村久三氏も、読者調査の対象にされたことがある。真村氏が回想する。

「知らない男が尾行してくるわけですから、気味悪かったですね。読売新聞社に抗議すると、今度は昼間に全戸を訪問して聞き込みの方法で読者調査を始めたのです。わたしはそれを読者からの連絡で知りました」

真村氏は、本来、読売新聞社が支払うべき読者調査費40万円まで請求された。

2001年に起こった京都新聞・藤ノ森販売所の強制廃業事件のときにも、戸別訪問による読者調査が行われた。しかも、調査に動員されたメンバーが「日本新聞協会の者です」と嘘を名乗って戸別訪問したと聞いている。

正体を明かさない毎日新聞社

さて、これら店主の後をつけたり、戸別訪問して読者調査を行うのは、どういう人々で、どういう組織に属しているのか。

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新聞協会と毎日新聞社に提出した質問状。新聞協会は、回答する立場にないという見解だった。毎日新聞社は、「一方的な立場、見解に基づいたご質問にはお答えできません」という回答。
 箕面販売所のケースについて、わたしは毎日新聞・東京本社の社長室に質問状を送った。読者調査を実行した部隊の正体を突き止めようとしたのだ。だが、
 一方的な立場、見解に基づいたご質問にはお答えできません。箕面販売所問題についてのご質問には、訴訟になったことが確認できれば、裁判の中で明らかにしていきます。

という返事しかなかった。毎日新聞社・大阪本社の販売局にも問い合わせてみたが、やはり実行部隊の正体は明かせない、とのことだった。

そこでわたしは、ある現役の販売店主さんに尋ねてみた。

「断言はできませんが、新聞の『セールスチーム』の可能性があります。新聞のセールスチームが、読者調査を行うことはよくあるんです。発行本社は、そのことを口にしないでしょうが。」

新聞のセールスチーム=拡張団

箕面市で読者調査を実施した組織として、セールスチームの可能性が指摘されたことには、それなりの根拠がある。セールスチームとは、日本の新聞社の経営方針である部数至上主義を実践する前線部隊のことで、新聞拡販とは別の役割をも担っている場合が多いからだ。

セールスチームは、かつて『新聞拡張団』と呼ばれていた。しかし、強引な拡販と「団」という言葉が結びついて、読者に暴力団を連想させるという懸念もあってか、セールスチームと改名された。

幸いに、1980年代や90年代に比べると、現在の拡販活動は穏やかになったが、販売局の圧力団体としての役割を果たしている事情は、昔から変わらない。セールスチームの全容を、組織の形態、構成員、新聞拡販の手口、その他の役割に分類して検証してみよう。

法人格を持たずに企業活動

セールスチームについて語るとき、まず驚くのは、ついこの前まで、その大半が法人格を持たずに企業活動を展開していたことである。もちろん個人業という名目であれば、必ずしも法人格を取得しなくても違法行為ではない。

しかし、30人を超えるような人員を使って仕事をしている組織が法人格を取得していなければ、通常であれば税務署が問題視する。ところが不思議なことに、税務署は延々とそれを黙認していたのである。

にわかに信じがたい話なので、情報の信憑性を疑う読者もいるかも知れない。そこで、これを裏付ける証拠を紹介しよう。朝日新聞社の社会部メディア班が編集した『新聞をひらく』(樹花舎)という書籍に収録されている中国新聞社・山本一隆専務のインタビューに次のようなくだりが出てくる。

「中国新聞にも、拡張を担当するセールススタッフはいますが、二十数年前から関連会社の社員として雇用しています。最近になってセールスチームを法人化した全国紙とは、その対応が随分と違います」

「最近になってセールスチームを法人化した全国紙」とは、念を押すまでもなく、朝日新聞など日本を代表する中央紙のことである。

『新聞をひらく』が出版されたのは、1999年5月だから、90年代の新聞乱売の時代に、全国紙は法人格を持たない組織をフル動員して拡販活動をさせていたことになる。ところがさすがに税務署もそれを黙認できなくなり、セールスチームの法人化を進めるように新聞各社を指導したのである。

読売販売局長「立派な入れ墨ですね」

次にセールスチームの構成員に焦点を当ててみよう。かつて読売新聞・西部本社の社屋(旧小倉市)に事務所を構えていた読売系のあるセールスチームの元幹部をインタビューすることができた。元幹部が、当時を回想する。

「昔、刑務所から出所する男を迎えに行ったことがあります。強引で押しの強い人間でなければ、この仕事はできません

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新聞社からの請求書にセールスチームへの支払項目(団カード料)も含まれている。産経・今西資料より。

借金を踏み倒した拡張員は業界紙で公表される。情報を提供すると謝礼がでる場合がある。

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淡泊直樹2020/07/04 10:04
淡泊直樹2020/07/04 10:01
 2009/01/14 09:51
田代裕治2008/11/04 00:30
訪問販売お断り2008/02/01 02:51
元A新聞奨学生2008/02/01 02:51
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ポスト2008/02/01 02:51
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Z23442008/02/01 02:51
a2008/02/01 02:51
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