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早大院で不正入試疑惑 “サラ研”所長・坂野教授が試験の構成など漏洩 

情報提供
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不正入試疑惑に揺れる早稲田大学商学研究科
 早稲田大学大学院商学研究科の坂野友昭教授(52)が大学院入試で不正を行った疑惑につき、大学側は今年4月に調査委員会を設置。このほど教授会に対し、不正があったとする調査報告がなされたことが分かった。自分のゼミ生に出題者の構成を漏洩するなどしていたという。大学側は「コメントできない」と口をつぐみ、坂野教授は再三の取材に対し、行方をくらましている。
Digest
  • サラ研所長 突然沈黙の謎
  • 「入試情報漏えい」疑惑で調査委設置
  • 「話せない」「広報を通じてほしい」と緘口令
  • サラ金スポンサーの"懸賞論文"も早稲田ばかり
  • 年利54%「日掛け金融」も頼る坂野論文
  • サラ金と早稲田 親交の歴史

サラ研所長 突然沈黙の謎

 「早稲田の坂野友昭教授は最近どうしたのかな? ぜんぜん(記事や論文を)見かけなくなったが…」

 サラ金問題に取り組む記者らの間でつい先日、こんな話が出たばかりだった。坂野教授といえば消費者金融業規制緩和論者の代表格である。サラ金業界から総額5100万円ものカネをもらって運営する早稲田大学消費者金融サービス研究所(通称サラ研)の所長でもある。

 金利規制を強化するのはよくない、と業界機関誌にもたびたび登場して発言を繰り返してきた。法改正をめぐり業界側と消費者側の激しい対立が続いていた昨年(2006年)5月には、『朝日新聞』ホームページ上の特集広告(早稲田大学出稿)でこんなことを言っている。

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坂野友昭・早稲田大学商学学術院教授。早稲田大学消費者金融サービス研究所所長。*早稲田大学HPより。
 「上限金利の引き下げには慎重な検討を」
 「上限金利の引き下げは高リスク者を市場から排除し、経済にもマイナス」
 「上限金利だけでは社会的弱者は保護できない」

 業界の要望に100%沿った主張である。いわばサラ金規制強化反対キャンペーンに学者として一躍買っていたわけだ。

 サラ金業界の動向に並々ならぬ熱意を抱く坂野教授が、今年に入ってから急に静かになった。国会図書館のデータベースで調べてみると、最後に記事が発表されたのは昨年(2006年)11月。『日本の論点2007』(文藝春秋)に「グレーゾーン金利をどうする/上限金利の引き下げは多重債務問題の解決どころか景気暗転の恐れあり」を書いて以後、記事は見当たらない。

「入試情報漏えい」疑惑で調査委設置

 業界の反対を押し切る形で規制強化が進み、サラ金各社は撤退や規模縮小を余儀なくされた。坂野教授も研究意欲を失ったのか・・・・。

 その程度に考えていた筆者のもとに、興味深い情報が寄せられた。

 坂野教授が毎年10月に募集しているゼミ生の募集を突然停止したという。学生に告知がなされたのが9月21日。事前に予告されているならともかく、ゼミ紹介のパンフレットにも案内文が掲載された後のことだった。

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(上)坂野ゼミ「2008年度募集中止」の案内(早稲田大学HPより)

(中)坂野ゼミ「現代企業研究」紹介のパンフ(早稲田大学HPより)

(下)サラ金規制をめぐり、消費者側と業界側の意見が激しく対立していた2006年5月、朝日新聞のHPに掲載された早稲田大学の広告。坂野教授は業界側の主張に沿って規制強化慎重論を説いている。
 元学生によれば突然のゼミ生募集中止は異例だという。そればかりか授業も中止しているという噂が耳に入った。さらに学生が連絡しようにもできない状態が続いているとか。

 坂野教授に何があったのか。背景を探るうちに、ある疑惑が浮上した。大学院入試の不正に関与した疑いで、坂野教授が大学当局から取り調べを受けているというのだ。

 大学は今年4月、坂野教授に対する調査委員会を設置し、約半年間にわたって調査を進めてきた。

 大学関係者の証言を総合すれば、坂野教授の不正疑惑は2005年度から2006年度にかけて実施された大学院入試をめぐるもので、試験委員(出題者)の構成などの秘密情報を自分のゼミ生に漏えいしたという内容だ。大学院の合格率は4人に1人程度で、「情報提供を受けた学生の大半が合格した」と内部関係者は証言する。

 また、一部の学生に入試問題と酷似した問題を解かせた疑いや、研究費の使い方についても調査された模様だが、調査委員会の判断は微妙だという。

 詳細は大学の説明を待つばかりだが、仮に疑惑の一部でも事実だとすれば125周年どころではない不祥事である。

「話せない」「広報を通じてほしい」と緘口令

 疑惑の真相を確かめるため、商学研究科の教授陣に電話をかけることにした。

--坂野教授のことで…。

 「あ、それは広報に通すよう言われているので。いいですか(切)」

 緘口令が敷かれているのか、口は固い。確認作業は難航した。「坂野」「調査」と口にしただけで、穏やかな教授たちが一変、頑なな態度に変わる。事の深刻さを感じさせた。それでも懲りずに電話をかけ続けているうちに、ようやく年配の教授が話に応じてくれた。

 「調査委員会、そうね。あったみたいね。でももう調査終わったんじゃないの、この間教授会に報告があったからね。我々はそれを聞いただけですから…」

--不正入試の事実は確認したのですか?

 「そうですね」

 年配の教授によれば、先日教授会が開かれ、坂野教授が大学院入試で不正を行ったとする調査結果が報告されたという。やはり疑惑は事実だったのか。確証を得た筆者は大学広報部に電話をかけた。

--坂野教授のことで聞きたい。

 「いまはコメントできない」

 広報担当者はにべもなく言った。

--当方の取材では、4月に調査委員会をつくったと聞いているが。

 「ええ」

 調査委員会の存在はかろうじて認めた。だが調査の内容、経過については「コメントできない」と繰り返す。よほど125周年を意識しているのか、徹底した秘密主義である。

◇「本人はいない」「わからない」坂野教授はどこに…
 当然のことだが、真相をもっともよく知っているのは坂野教授本人だ。本人の言い分を聞くべく接触を試みた。10月5日、坂野教授の研究室に電話をかける。不在だ。自宅に電話すると長い呼び出し音につづいて「はい」と返事があった。か細い男性の声だ。てっきり本人だと思った。

--坂野先生ですか?

 「いまいないんですが…」

 違ったようだ。

--いつ戻られますか?

 「わかりません」

 その後、自宅に電話をしたが今度は応答がない。

 電話に出にくい事情であるのかと思い、翌10月6日昼、千葉県内の自宅を訪問することにした。駅から1キロほど歩き、レタス畑が広がる住宅地の路地を進んでいくと、古びた住宅街の中に真新しい豪邸が現れた。「SAKANO」と表札にある。番地は確認できないが、おそらくここだろうと思って呼び鈴を押す。小さな監視カメラがこちらを向いている。十数秒の間を置いて男性の声がした。

 「はい…」

 電話と同じ声だ。

--坂野先生おいでですか?

 「ちょっと出ちゃっているんですが」

 また外出だという。よほど忙しいのだろう。

--いつごろお戻りになるでしょうか?

 「わからないんですが…」
 
 坂野教授に確実にメッセージが届く方法を、と考えた筆者は手紙を託すことにした。取り急ぎ次の手紙を現場でしたため、拙著『武富士追及』(リ出版新社)『サラ金・ヤミ金大爆発』(花伝社)と名刺を添えて投函する。
 
 手紙の内容は次の通り。

前略 ジャーナリストの三宅勝久と申します。突然お邪魔した失礼をお詫びします。
大学の調査委のことで至急お話を伺いたいと存じます。不正入試の件、近く記事化する予定ですが先生の言い分をぜひ聞きたいと思います。連絡お待ちしています。早々
10月6日 三宅勝久

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坂野教授の自宅に、著書『サラ金・ヤミ金大爆発』(花伝社)『武富士追及』(リム出版新社)と一緒に手紙を投函する(10月6日)。
 さわやかな秋空の下、坂野宅を後にする。もしかしてインターホンに出た声は坂野教授本人ではないのか。ふとそんな思いに駆られた。 

 その後、念のため同じ趣旨のメールも送り、消費者金融サービス研究所(サラ研)にも「坂野所長に伝えてほしい」と伝言した。

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失望2009/09/26 22:39
がっかりしました。2009/09/23 19:42
匿名2008/02/01 02:51
月龍2008/02/01 02:51
商学部2008/02/01 02:51
筆者2008/02/01 02:51
↓全く酷い話だな。2008/02/01 02:51
OB2008/02/01 02:51
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