裁判を起こした真村久三さん。新聞販売現場を正常化する運動でも先頭に立っている。
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「真村裁判」原告である真村久三さんが5月28日、読売新聞社と読売会を相手どって約9千万円の損害賠償を求める裁判を起こした。2007年12月の最高裁決定によって、真村さんは、約7年に及ぶ地位保全裁判で読売に完全勝訴。それを受けての訴訟だけに原告有利との見方が強く、結果次第では販売店による損害賠償請求が続発する可能性が高い。崩壊現象が止まらない新聞業界にとっては致命的な訴訟になりそうだ。
【Digest】
◇「死に店」扱い、そして「村八分」
◇転職して新聞業界へ
◇弁護士の怒りに火が付いた
◇昔のままの体質
◇訴訟以外に解決なし
◇公共広告の料金返済訴訟もやむを得ない
福岡地裁・八女支部へ5月28日、ある訴訟が提起された。損害賠償額は、9269万円。このところ高額訴訟がひとつの社会現象になっているが、今回のケースはこの種のうさんくさい提訴ではない。
裁判を起こしたのは、YC広川(福岡県)の店主で、真村裁判の原告・真村久三さんだ。被告は読売新聞西部本社と読売新聞の首脳陣、それに販売店主の集まりである「筑後読売会」などである。
このうち訴えられた取締役(元取締役を含む)は次の面々だ。
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新聞販売店の訴訟で常に問題になるのが「押し紙」。読売・西部本社の管内では、「押し紙」率が4割も5割にもなるYCが複数報告されているが、真村さんが経営するYCは、例外的に「押し紙」がほとんどなかった。独自の販売戦略を取っていたからである。それが「村社会」の反発を招いた可能性もある。

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渡邉恒雄、小島敦、池田孜、水上健也、内山斉、吉谷正人、楢崎憲二、和田泰生(敬称略)
この訴訟のひとつの特徴は、読売新聞西部本社だけではなく、経営陣が被告になっていることである。これは販売問題の責任が平社員ではなく、経営陣にあるとする原告側見解の表明と思われる。
真村裁判の第2ラウンドを始めるにあたり、真村さんが心境を語る。
「読売新聞社によるハラスメントにより、わたしは自分の後半生の計画を無茶苦茶にされました。その被害を賠償していただくのが、訴訟の目的です」
真村さんが読売を提訴するまでの過程を通じて、見えてきたものは何か?
結論から先に言えば、それはみずからの非を絶対に認めない読売の前近代的な姿勢である。無反省である。それゆえに真村さんは、読売とのトラブルは、裁判以外に解決方法がないと結論づけ、今回の訴訟に踏み切ったのである。
◇「死に店」扱い、そして「村八分」
真村さんが読売新聞西部本社と読売会から受けたハラスメントは際限がない。たとえば読売から申し出があった営業区域の分割・返上要請を断ったところ、YC広川を飼い殺しの状態、あるいは「死に店」扱いにされた。これにより真村さんは、販売店の経営に必要な補助金を受けられなくなった。担当員の訪店も中止に追い込まれた。さらに所長年金などの積み立てを中止する旨の宣告も受けたのである。
一方、読売会からは除名。それによって新聞セールスチームの派遣を受けられなくなった。まさに「村八分」の状態に置かれたのである。
このように数々の嫌がらせの影響で、YC広川の経営は傾いていく。ピーク時には約1500部あった実配部数も、現在では500部程度にまで落ち込んでしまった。
すでにマイニュースジャパンでも報じたように、
読売の販売政策は福岡高裁で厳しく断罪された。さらに昨年の12月には、最高裁が読売の上告受理申立を不受理とした。それにもかかわらず読売は、真村さんに対する上記のハラスメントを相変わらず続けている。少なくとも真村さんはそんなふうに感じている。
◇転職して新聞業界へ
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真村さんの弁護団が福岡地裁・八女支部へ送った
訴状(全文)。
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真村さんは1990年、40歳の時に、それまで勤務していた自動車教習所の教官を辞めて、新聞販売業界へ入った。新聞販売店で「研修」を受けたあと、YC広川の店主になった。新聞には、再販制度が適用されているので、販売店を経営するためには、まず、営業エリアを前任者から買い取らなければならない。
そのための資金だけでも、真村さんは1300万円近くをつぎ込んだ。この金を真村さんは、みずからの退職金や親戚からの借金で調達したのである。
「60歳になるまでみっちりと販売店経営をやって、老後の生活が成り立つように預金しておこうと考えたのです。それがわたしの人生設計でした」
もちろん老後の資金計画だけを考えて転職したわけではなかった。40歳という年齢はひとつの曲がり角である。おそらく転職の最後の機会でもある。転職しないひとも、人生の後半をどう生きるべきなのか模索する。
真村さんは、自宅を新築したこともあり、自己努力によって収入を増やせる道を探っていた。そして実際に転職。規模は小さくても、自分の経営判断でビジネスを展開する道を選んだのだ.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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YC久留米文化センター前店の強制改廃に対して、福岡地裁・久留米支部は読売に対して、新聞の供給を再開するように仮処分命令を下した。しかし、読売はこれを踏み倒したまま、異議を申し立てた。通常は、暫定的に命令に従った上で、異議を申し立てるものだが。
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