原淵茂浩さんは、2000年6月から、07年2月まで、山陽新聞の
岡輝販売センターを経営した。折込チラシの水増し問題では、刑事告発も検討している。
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2008年6月、新たに2件の「押し紙」裁判が提起され、ABC部数の不当なかさ上げによって紙面広告収入を増やしているばかりか、さらに、配達されないチラシ収入の一部を販売会社が店主からぼったくる構図まで浮かび上がった。山陽新聞の販売店の例では、実部数1579部(別途、押し紙295部)に対し、イトーヨーカドーや中国電力といった大手企業が51%増しにあたる2400部分のチラシ料金を支払わされていたことが明らかになった。偽装配達による「チラシ詐欺」がまかりとおっているのだ。
【Digest】
◇新たに2件の「押し紙」裁判
◇「押し紙」でABC部数のかさ上げ
◇地方紙で「押し紙」率が低い背景
◇販売店管理が裏目に
◇山陽新聞のぼったくり商法
新聞業界ほどイメージと実際の中味が異なる言葉が溢れている世界も珍しい。たとえば新聞の「セールスチーム」。親分を中心に据えた前近代的な経営の実態や迷惑行為めいた拡販方法からすれば、「拡張団」という方が実態に近い。
実は「押し紙」という言葉も、イメージと中味が若干異なり、イメージが先走りしている。それが結果として、新聞社のビジネスモデルのある部分を隠している。
「押し紙」を文字どおりに解釈すれば、新聞社が販売店に押し売りして販売収入を増やすための新聞のことである。たとえば1000人しか購読者がいないのに、1500人分の新聞を買い取らせる。代金も徴収する。このような新聞を「押し紙」と呼んできた。そしてほとんどの人々は、「押し紙」の唯一の役割は、販売収入を増加させることだと考えている。
ところがこのような捉え方は多少事実と異なる。そのためなのか、最近、「押し紙」を別の言葉に変更した方がいいのではないかという声を聞くようになってきた。都内のある販売店主が言う。
「確かに新聞の押し売りで販売収入を増やすという意味では的確な言葉ですが、これでは『押し紙』が果たしているもうひとつの重大な役割が鮮やかに浮上してきません」
「重大な役割」とは、ABC部数のかさ上げである。新聞社にとっての命綱である広告収入を増やすための知られざる策略である。
◇新たに2件の「押し紙」裁判
6月中に2件の「押し紙」裁判が提起された。訴状から、「押し紙」によるABC部数のかさ上げが新聞のビジネスモデルに組み込まれている実態が読みとれる。「押し紙」が、単に販売収入の増加だけではなくて、ABC部数を膨らませる役割を果たしていることがより鮮明に見えてきた。
2件の「押し紙」裁判のうち、最初の訴訟は、12日に大阪地裁に提起された。毎日新聞の元販売店主で毎日懇話会の名誉会員である高屋肇さんが、毎日新聞社を相手に1億円の損害賠償を求める裁判を起こしたのである。訴訟を決意した心境について、高屋さんが言う。
「お金が目的で裁判を起こしたのではありません。毎日新聞社はあまりにもたちの悪いことをやってきたのに、今だになんの罰も受けていません。これはおかしいと思い、裁判によって法の裁きを求めたわけです」
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上から順に、2006年度の毎日新聞・蛍ヶ池販売所の「部数一覧表」、「損害額一覧表」、豊中販売所の「「部数一覧表」、「損害額一覧表」。
「部数一覧表」の「注文部数(c)」は、予備紙として実配部数に0.2%を加えた数字。
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高屋さんは、
1960年8月から2007年6月まで毎日新聞・販売店を経営した。廃業した時は、豊中販売所と蛍池販売所の二店を所有していた。これら二店の「押し紙」は、2006年には、右表に示すように総部数の約7割もあった。
高屋さんの提訴から4日後の16日、2件目の裁判が提起された。山陽新聞・岡輝販売センターの元店主である原淵茂浩さんが、山陽新聞社とその販売会社に対して、約2700万円の損害賠償を起こしたのである。高屋さんと同様に、原淵さんも新聞社の「押し紙」政策に強い憤りを感じている。
「わたしは数ある業界の中で、新聞業界が最も悪質だと感じています.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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山陽計算センターが発行した「発行表」。赤線で示した部分が、
読者に発行した山陽新聞の領収書の数。「集金」、「本社員」、「自振」などに分類されている。チラシが折りこまれる新聞は、「セット」版と「朝刊」である。

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最上の資料には、チラシが折りこまれる新聞である「セット」版と「朝刊」の内訳が示されている。2006年の5月の「送り部数(搬入部数)」は、1874部。しかし、5月に搬入されたチラシの枚数は、
この数字(資料の中と下を参照)を大きく上回っている。

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