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富士電機ITソリューション 意に反する「転職支援会社への出向」で現役社員が提訴

情報提供
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転職支援会社「日本雇用創出機構」への出向を命じられたA氏(40代後半)
 富士電機子会社の富士電機ITソリューション社員A氏(40代後半)は、11年夏、転職支援会社「日本雇用創出機構」への出向を命じられた。A氏は拒否したが、上司と人事部長は執拗に出向を強要し、最後は業務命令によって無理矢理A氏を出向させた。出向先での仕事は、リクルートやパソナなど求人サイトに登録し面接を受けに行ったりハローワークに通う転職活動だった。A氏は、会社と同機構を相手取り、出向の無効と計330万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴。A氏とその代理人、被告両社への取材に基づき、「出向」を利用した“転職リストラ”手口の実像をお伝えする。(訴状はPDFダウンロード可)
Digest
  • 地下鉄まで追いかけて出向強要
  • 出向先での転職支援の実態
  • 「どうしても守りたいものがある」A氏
  • 被告の主張
  • 原告の主張
  • 「4月からは清掃業務だ」人事部長

地下鉄まで追いかけて出向強要

原告のA氏(40代後半)は、1980年代後半に専門学校を卒業後、新卒で富士電機総設に入社し、システムエンジニアとして勤務した。

 04年4月には、会社分割により、富士電機ITソリューションの社員になった。富士電機の子会社で、コンピュータ・通信機器の販売、および情報処理システムの開発を手掛け、社員数521名(2012年3月31日現在)の中堅企業である。

突然、災厄に見舞われたのは、11年7月11日のことだった。毎週月曜の定例部会の後、直属上司のF副本部長が、いきなり、こう切り出したのだ。

「他の部署に行ってもらいたい。もし、どこも行くことができなければ、ここに行ってもらいたい」

そう言って示した一枚の紙には、「関東雇用創出機構への出向について」と書いてあった。

それを見てA氏は内心、驚いた。「関東雇用創出機構」とは、リストラ対象社員を再就職させるために送り込む会社だと、前々から社内で噂になっていたからだ。しかも、A氏は以前、実際そこへ行くことになった社員と、出向前に一緒に飲んで、話を聞いたこともあったのだ。

関東雇用創出機構=パソナグループ(竹中平蔵会長、南部靖之代表)で中高年層の人材サービスを展開。2011年11月1日より、関西雇用創出機構と一本化され、日本雇用創出機構に社名変更。→機構HP

「もうそれは決まったことなんですか?それは、私で決まりなんですか?変えられないんですか?」とA氏は尋ねた。

するとF副本部長は、「そうだ。決まったことだ」と言い、「ただ、出向の前に社内で他の部署への異動の調整がつけば、そちらに行ってもらう」と述べ、異動希望先と自己PR文を作成するよう指示した。

A氏は、不本意ながらも異動希望先を4つ挙げて、自己PR文を提出した。

出向の話が出た7月11日以降、F副本部長による執拗な出向の勧奨、強要が行われるようになっていった。

「Aさんは、■■(A氏の所属部署の略称、名前は伏せる)にはいられない。それを前提で話をすすめてほしい。第1に■■以外の他の部署への異動を打診します。それがだめなら、関東雇用創出機構に行ってもらいます。あなた以外の人にも声をかけていますが、他の人はみなさん出向に応じています。」などと、しつこく求めてきた。

その後、いずれの部署もA氏の受け入れを拒否した。その頃には、人事部長のJ氏も、執拗に出向の説得活動をするようになっていった。

A氏はその都度、断ったり、「家族に相談して決めたい」といって返事を避けたりしていた。実はA氏は東京都労働相談センターに行って、そこの相談員から、「意に反する出向には応じてはいけない」とアドバイスを受けていたのだ。

しかし、勤務中に会議室に呼び出され、一、二時間にわたって、「どうだ、行く気にはなったか? 君のために言っているんだ。なんでそれをわかってくれないんだ」「早くしろ。もうみんなに迷惑かかるだろ。人事はどうするんだよ」などと、しつこく言われる日々が3か月にわたって続き、A氏の精神は疲弊した。この間、A氏は本来業務をほとんどできない状況だったという。

あるときには、A氏が帰宅しようと地下鉄茅場町の駅の入口に入ろうとしたところを、なんとF副本部長が入り口まで追いかけてきて、出向を強要したこともあった。

さらに、ちょうどこの時期に、富士電機ITは、本社オフィスを、八丁堀から外神田に移すことになっていた。それにかこつけて、こうも言われた。

「移った先には、もう君の席はないんだよ。だから、もう行くしかないんだよ」

しまいには、「業務命令だ。命令に反したらクビだ」と言われた。

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A氏が上司に渡した、異議留保をして出向することを記した文書

このようにF副本部長は、「関東雇用創出機構へ行け」の一点張りだった。このため、A氏は労働相談センターのアドバイスに従い、異議をとどめた上で出向に応じる旨を記した文書を作成して、F副本部長、J人事部長に手渡した。

その書面にはこう記載されていた

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上が、A氏の出向当初のオフィスだった三菱総合研究所ビル(東京都千代田区大手町2-3-6、現在解体中)。真ん中が、日本雇用創出機構本社(同区大手町2-6-4、パソナ本社内)。下が、富士電機ITソリューション本社(同区外神田6-15-12)

■業務日誌。上二枚は初めの分。上から三枚目は大分時間が経ってからの分。一番下は出向先でのA氏の名刺

弁護士の戸舘圭之氏。A氏の代理人

上が富士電機ITソリューションの再就職支援実績を記した文書(機構作成)。ナンバー16がA氏。転職が決まっている人もその多くは中小企業だった。下は清掃会社への出向を指示する文書(13年3月11日に交付)

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読者コメント

匿名希望2014/06/01 14:10
筆者2013/03/22 22:03会員
2013/03/18 22:48
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