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トヨタ正社員が実名顔出しで覚悟の告発!純利益2.4兆円の陰で起きている3つの事件、会社は「注意書」で”報復”

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トヨタ自動車堤工場に勤務する染谷大介氏(39歳)。自身の労災事故をきっかけに、社内の働く環境を改善すべく声をあげ始めた。
 今年3月期決算の純利益が2兆4,939億円と、日本企業として過去最高を記録した絶好調のトヨタ自動車。景気のよい話であるが、現場を見ると、労災隠し、有給休暇取得つぶし、期間従業員雇止めなど、なんともトヨタらしい、スケールの小さな話があふれている。自身の労災事件を実名で告発した正社員(39歳、堤工場勤務)は、このほど顔写真の掲載も承諾し、インタビューに応じた。大組織の中で実名顔出しで語るのは、かなりの覚悟がいるが、その決断にまで至った背景には、ここ1年余りの間に起きた働く環境に関する3つの事件がある。指を複雑骨折した期間従業員の労災隠し、年次有給休暇を申請拒否した事件、書類に虚偽記載して期間従業員を雇止めした事件だ。“闘うトヨタマン”に、最近起きた3件についてじっくり聞いた。
Digest
  • 闘うトヨタマンの誕生
  • 労災保険適用阻止へむけた異様な熱情
  • また労災隠し、作業中に指を複雑骨折も労災保険つかわせず
  • 予告なし、契約期間満了日に雇止めの「通知書」
  • 有給休暇希望の記入ボード、軒並み斜線で書き込めず
  • 会社は「注意書」で威嚇

闘うトヨタマンの誕生

染谷大介氏が、ここ1年あまりの期間に解決をめざした3つの事件を、まず挙げておきたい。

①期間従業員労災(指の複雑骨折)隠し事件⇒労災適用
②有給休暇取得妨害事件⇒取得可に変更
③期間工雇止め事件⇒自己都合から会社都合へ

詳細は後述するが、当事者と染谷氏が声をあげ行動しなければ、いずれも「なかったこと」にされていたはずだ。

その内容に入る前に、かつては会社に疑問も持たず発言もしなかった普通のトヨタマンだった染谷氏が、なぜ”闘うトヨタマン”に変身したのか。この点に簡単に触れて、3つの事件のてん末に移りたい。

きっかけは、自身が経験した労災事故だ。2014年8月1日午前10時20分ころ、当時35歳だった染谷大介氏は、作業中に右ひざを負傷してしまった。

部品メーカーから送られてくる部品箱を仕分けして重い台車の上に乗せ、さらに空箱数十個を乗せ、7台連結で引っ張っていた作業をしてた最中のことだった。

「連結した台車を後ろ向きで引っ張っていくときに、ビキッと右ひざに痛みが走ったんです。朝の10時20分ごろで、一直(早番)の10時40分の昼休みまで我慢しました」

と染谷氏は振り返る。工場内にある安全衛生処置室(医務室)に現場の上司と向かい、ぬり薬と湿布をもらった。痛みで普通に歩けなかったため、脚を使わない作業に振り替えてもらったという。

翌日は土曜で休日だったので病院に行き、「右ひざ外側福々靭帯損傷」と診断されて診断書をもらった。そのとき「仕事のケガだから労災保険適用でいいですね」と受付で言われたので、染谷氏が上司に電話すると、「健康保険でやってくれ」と指示されたのである。

その指示にしたがい、染谷氏は健康保険を使い三割を負担した。労災保険なら個人負担はゼロだ。

会社が労災を適用させたくないということは、話には聞いていたが、職場の仲間や知人にも聞き、自分でも調べた結果、「これはどう考えても労災保険にするべきだ」(染谷氏)と思うようになった。

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昨年末ころ、トヨタが社員に配布した労災に関するカード(表・裏)。名刺大の紙製。染谷氏らの行動の成果で、本来あるべき会社に一歩近づいた。

労災保険適用阻止へむけた異様な熱情

ケガから三週間経った8月21日に経過観察のために病院に向かい、上司に労災保険に切り替える、とメールを送った。

この後の会社の対応は、異様だった。ざっと箇条書き的にまとめてみる。

8月22日

有給休暇をとって自宅で休んでいると「健康保険でお願いします」というメールや電話が何度も何度もあり、染谷氏は異様なものを感じたという。

8月23日

チーフリーダー、安全衛生担当者に呼ばれた。そのとき上司二人と以下のようなやり取りがあった。

上司 会社でケガや疾病が起きても外来の病院では健康保険を使う。そのあとは会社が調査して労災かどうか判断します。

染谷 会社で仕事中に起きたケガは労災になるのが普通ですよね・・・。

上司 あなたの考え方は間違っている!病院にはもう電話した。

染谷 何をです?

上司 健康保険に切り替えるように電話したんだ!トヨタのルールだ!

8月26日

遅番のため午後に出社すると、また安全衛生処置室に染谷氏は呼ばれた。今度は、チーフリーダーに加え、課長、人事部、安全衛生管理職、安全衛生担当者の5人が染谷氏を取り囲んだ。

「調査するもしないも、労災じゃないからする必要がない」と上司。

1人がA4判くらいの冊子をみせて説明した。示されたページには、「まず健康保険を使え、そのあとに(会社が)調査して労災と認めたら労災に切り替える」旨が書かれてあったという。

8月27日

社用車で上司と染谷氏は病院へ向かった。受付で上司が言った。

「トヨタ自動車には独自のルールがありまして、それに則って染谷さんの労災保険を健康保険に切り替えさせていただきます」

日本国の法律よりトヨタのルールが優先される、と公然と言い放ったのだ。染谷氏はもちろん、拒否した。その後も、さまざまな会社側による工作は続くが、翌2015年、染谷氏は豊田労基署長あての「労働安全衛生違反申告書」を提出し、8月下旬には労災支給が決定する。

自身に起きた労災事故をきっかけに、会社に意見を言うように変わった染谷氏は、労働者のための組合「トヨタ自動車第二労働組合」を結成した。それ以降、身近なところから染谷氏は社内改革を目指すこととなる。

この組合は、届け出はしていない。「そもそも、組合という立場より、人という立場でトヨタを変えて行きたいと思っているからです」と染谷氏は言う。

しかし、労働組合は労働者の自由意思でつくられるもので、届け出なしでも団体交渉権は成立する。問題は、組合員のために行動して実績を出すか否か、である。

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(上)トヨタ工務部が発した「災害情報」。最初は隠していたが、染谷大介氏がケガをした当事者に聞取り調査したり、全ト・ユニオン若月忠夫委員長が文書で調査要求した後、ようやく一部に公にしたものだ。 (下)労災事故隠しでは処分者が出た。しかし、これでは理由がわからない。

また労災隠し、作業中に指を複雑骨折も労災保険つかわせず

それでは、ここ1年あまりの期間に染谷氏が係った事件を3つ紹介する。

まず、期間従業員労災隠し事件。昨年6月16日午後2時10分ころ、堤工場内で作業中の期間従業員が、左クスリ指を複雑骨折。労災隠しが、またも発覚した。当然、労災保険を使うべきところを、健康保険を使わせていたのだ。

作業中の骨折事故なのに、寮のドアに手を挟みケガをしたことにして、労災保険ではなく健康保険を使え、と上司は命じた。骨折のため作業はできないから、出勤させて、詰所(事務所のようなところ)に、ただ待機させていたのである。

トヨタの主要労組は「トヨタ自動車労働組合」であるが、日本の多くの大企業労組がそうであるように、いわゆる経営側の御用労組、名ばかり労組であり、労働者の安全に関わる重要な問題について、従業員の立場で動くことはない。

この労災隠しに対しては、この“御用組合”に対抗して2006年に労働者のための労働組合として結成された「全トヨタ労働組合」(全ト・ユニオン、若月忠夫委員長)と染谷氏が

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期間従業員の雇止めのプロセスがよくわかる「労働基準法違反申告書」。

有給休暇申請を書き込むボード。あらかじめ斜線が引かれ、申請できないようになっていた。

証拠を撮影した染谷氏に対する「注意書」。ビデオ・カメラによる社内敷地内撮影を禁止し、今後したがわないなら懲罰の対象となる旨が書かれている。

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yoinotsubasa2018/07/28 00:36

完全なるハラスメント。企業倫理相談窓口があるはずだけど利用し辛いのか。

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dekaino2018/07/22 21:31

労災隠しが社内制度化されてる!!

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西野2018/12/11 12:42
ホーン2018/07/28 12:28
甚六2018/07/23 07:20
  2018/07/21 18:03
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