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アベノミクスで健康食品表示が「企業任せ」へ 日米表示一覧から見える“怪しいサプリ”氾濫の未来

情報提供
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グルコサミン日米比較。米国では「関節に健康な軟骨を作り、潤滑油を提供する可能性がある。また健康な関節の可動性や柔軟性を高める可能性がある」などが明記され、「FDAの評価を受けていない」という但し書きもある。日本の表現はトクホでないため曖昧。その他5種については画像2参照。
 安倍政権の規制改革の一つとして健康食品の機能性表示の解禁が発表された。トクホは費用がかかりすぎ、中小企業の参入障壁となっているからだという。完全に自由化しているアメリカでは、たとえば認知症の予防に効果があるとされるイチョウ葉は、国の研究機関が効果なしという結果を出しても効能表示を継続できるなど、玉石混交。日本では業界団体に認証させ、証拠レベルの高低に合わせた多段階表示が検討される方向だが、業界任せでは企業寄りの甘い判定になることは確実で、消費者の利益になるとは言い難い。欧州がより厳格な効能表示方式に統一するなか、日本は逆に、米国型へと舵を切った。消費者に高度なリテラシーや自己責任を求めるのはどこまで現実的なのか。6種の効能について日米一覧表を作成し考えてみた。
Digest
  • 安倍首相が言う「健康食品の機能性表示の解禁」とは
  • 効かない証拠があるサプリも継続販売
  • トクホも却下されるほど厳しいEUの表示基準
  • 事業者団体の認証制度は信用できるか

テレビCМや新聞広告でもお馴染みの、イチョウ葉エキス、コエンザイムQ10、ルティン、エキナセア、グルコサミン、ノコギリヤシ…。これら健康によいとされる成分を含むサプリは、現状、日本ではトクホ認定されていないため「○○に効く」という直接的な効能表示が許されておらず、「アクティブな生活をサポート」といった曖昧な表現しかできない。

安倍首相が言う「健康食品の機能性表示の解禁」とは

「健康食品の機能性表示を、解禁いたします」

5月6日の安倍首相の経済成長戦略第3弾のスピーチで、安倍政権の規制改革対象の一つといて、健康食品の機能性表示の解禁が示された。

安倍総理はこう言っている(11分23秒~)。

『健康食品の機能性表示を、解禁いたします。国民が自らの健康を自ら守る。そのためには、適確な情報が提供されなければならない。当然のことです。

現在は、国から「トクホ」の認定を受けなければ、「強い骨をつくる」といった効果を商品に記載できません。お金も、時間も、かかります。とりわけ中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされていると言ってもよいでしょう。

 アメリカでは、国の認定を受けていないことをしっかりと明記すれば、商品に機能性表示を行うことができます。国へは事後に届出をするだけでよいのです』

医薬品のインターネット販売解禁、ネット選挙の解禁に加え、安倍政権の規制改革の目玉の一つとして健康食品の機能性表示の解禁が示された。

しかし、いくらトクホの認定に費用がかかりすぎるからと言って、本当に効果があるかどうかの判断を国が関与しないで企業任せにしてよいのか。それで本当に国民に必要な的確な情報が提供されるのか。

安倍首相がお手本とするアメリカの健康食品の表示では問題が起きていないのか。

アメリカは世界に先駆けて1994年に「ダイエタリーサプリメント健康教育法」を制定。この法律では、機能性(血圧が下がる、体重が減るか、免疫力が上がるなど)を表示したい場合、規制官庁である食品医薬品局(FDA)の事前許認可は不要、というもの。

事業者が証拠資料を持っていれば、販売後に、FDAに届けるだけで良い。当初は、どのような科学的証拠が必要なのかも明示されておらず、動物実験データしかないものでも表示できた(日本の特定保健用食品ではヒトでの臨床試験が必須)。

また、証拠を公表する義務もなかった。つまり、社内実験だけでも、それを根拠に機能性表示ができてしまう。さらに、有害情報の報告義務もなかった。まさに事業者にとっては至れり尽くせりの制度だった。

その後、2004年に販売禁止になったエフェドラ(麻黄)による大規模被害をきっかけに、アメリカでも有害情報の報告義務化など、規制強化の方向に変わった。2009年にはダイエタリーサプリメントの機能性表示に必要な科学的証拠のガイドラインをつくったが、強制力がないためあまり機能していない。

したがって、日本では機能性表示が認められていない『グルコサミン』や『コエンザイムQ10』などのいわゆる健康食品が、アメリカでは現在、堂々と機能性を表示されている。

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健康食品の表示の違いの日米比較。日本の表示は暗示的であいまい。(筆者作成)

これらの成分を含むサプリは、日本でも広く売られている。アメリカのように機能性表示はできないが、規制の取締りが不十分なため、機能性を「暗示」するような広告宣伝があふれている。

日米で、どれくらい表示が違うのか。わかりやすく比べるために日米両方で販売されているネイチャーメイド(日本では大塚製薬米ファーマバイト(Pharmavite)社)を中心に、表示の違いを比べてみた。

左記図が、テレビCМや新聞広告でもお馴染みの6種(イチョウ葉エキス、コエンザイムQ10、ルティン、エキナセア、グルコサミン、ノコギリヤシ)についての、日米の違いを示したものだ。(※グルコサミンとノコギリヤシでは、アメリカのネーチャーメードでは商品化されていないので、他社製品で比較)

認知症の予防に効果があるとされるイチョウ葉エキスサプリの場合、アメリカでは「精神的注意力や短期記憶力を高めるのに役立つ」「脳や手足の血流の改善」などと書かれている。

一方の日本では、「中高年の方々の元気をサポート」「しゃっきり生活したい中高年の毎日をサポート」と、ぼかした表現しかできない。

視力の改善に効くとされるルティンでは、

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アメリカの条件付きヘルスクレーム。証拠のレベルで4段階に分け、証拠の弱いものでも但し書き付きで表示を許可する仕組みだが、ほとんど利用されていない。

事業者団体と海外の公的機関での評価結果の違い。事業者団体に評価を任せると甘くなることを示唆している。

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chatarow05062013/06/22 23:39

欧州がより厳格な効能表示方式に統一するなか、日本は逆に、米国型へと舵を切った。消費者に高度なリテラシーや自己責任を求めるのはどこまで現実的なのか。

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gulugulu2013/06/14 16:16

安部は消費者の事など元々考えてないだろう。混乱しようが、嘘商品が増えようが金が動けば消費税上げられる、って感じじゃないかな>『業界任せでは企業寄りの甘い判定になることは確実』

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