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大王製紙 内部告発で懲戒解雇になった社員の裁判があぶり出す「井川家VS現社長」の泥沼権力闘争

情報提供
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原告伊香田氏(仮名)が金融庁、東京証券取引所、大王製紙の監査法人などに送付した告発文書(紙業新報13年2月1日号より)
 創業家3代目・井川意高(もとたか)会長(当時)がカジノ賭博で連結子会社7社から不法に55億円を借りて損害を与え、11年11月に会社法違反(特別背任)容疑で逮捕(=その後、懲役4年の実刑判決確定)されたことにより、佐光正義社長が実権を握った大王製紙。その後、連結子会社の役員からの創業家排除など「お家騒動」が続くなか、同社社員の伊香田泰雄氏(仮名、50歳)は、元会長で当時同社顧問の井川高雄氏(=創業家二代目)と相談し、社内で不正会計があった、と金融庁や東京証券取引所、業界紙などに告発した。すると伊香田氏は、13年2月に北海道赤平市のグループ運送会社の一人営業所長という閑職に出向という形で飛ばされ、その人事を不服として拒否したところ懲戒解雇に。同氏は、内部告発が公益通報者保護法上の『公益通報』に当たるとして、地位確認などを求め提訴。「創業家+内部告発者VS佐光社長」という構図でいまだ内紛が続く泥沼劇を、裁判資料に基づき詳細にお伝えする。
Digest
  • 有価証券報告書に虚偽報告の疑い
  • 真冬の北海道の1人部署に流刑
  • 懲戒解雇→地位確認求め提訴
  • 大王製紙「コメントは差し控える」

訴状や準備書面、証拠書類などによると、原告の伊香田泰雄氏(仮名、50歳)は、1986年に大王製紙に入社。以後、秘書室秘書課、総務課課長代理などを経て、2000年以降は、グループ会社の「エリエールテクセル」取締役総務部長、中国の「全王衛星用品」の総務部課長、ベトナムの「サイゴンペーパー」の経理部長代理などに出向。

そして、3代目・井川意高が逮捕された翌年にあたる12年9月、東京本社に戻り、経営企画部課長に就任した。事件はそこで起こった。

原告準備書面によると、同月の取締役会で、タイ子会社であるエクセル・インターナショナル・タイ(以下、ETI)に対する投融資を決議したが、その後、井川英高専務(2代目の弟)から、伊香田氏のいる経営企画部に対して、こう指示があった。

「タイ国を含め、海外事業の状況を調査しろ」

翌10月3日、伊香田氏は、西川経営企画部長(当時の執行役員)らと調査し、報告書を作成。報告書の要点は、以下のものだった。

1 ETIは、10月中に追加融資をしないと、資金ショートする状態である。

2 12年6月に10,000千枚/月超の販売量になったが、7月以降、従来の6,000千枚/月に戻った。

3 テレビCMの効果で、9月は7,400千枚/月に伸びたが、月末在庫は約31,000千枚と約4か月分に膨れ上がった状態。


10月14日、伊香田氏は、西川部長らとともに、そのことを井川英高専務に報告。すると井川氏は「さらに詳しく調べるとともに、(大王製紙本体の)佐光社長にも報告しろ」と命じた。

10月11日、伊香田氏は、海外営業部部長代理のО氏からメールで、「ETIは販促費、広告宣伝費を発生主義でなく、現金主義で費用計上している。また、販売管理費の計上誤りが多発している」と連絡を受けていた。

(企業会計は発生主義が原則。参考:記帳代行サービス

そして10月25日、取締役会で伊香田氏は、H&PC事業部のF副事業部長から、こう言われた。

「ETIは証憑書類紛失のため、11年12月期決算で監査法人の適正意見を行っていない」

「また、製造・販売は、12年2月だが、棚卸資産の実地棚卸をしていないため、12年決算には大問題がある」

翌10月26日、伊香田氏は、井川専務にそのことを説明したところ、井川氏は、こう言った。

「11月の、次回の経営企画会議に、改善策を提示させることにしよう」

11月14日、その経営企画会議があった。そのとき伊香田氏は、ベトナム出張で欠席し、同月26日に帰国。会議の内容がどうだったのか社員に聞いたところ、ETIについては、さしたる進展がなかったことを知った。

12月7日、伊香田氏は、経営企画部部長代理のK氏とともに、ETIの松島社長らとテレビ会議を行った。そこで、以下の事実が明らかになった。

1 ETIに出張中の経理部長の見通しによると、大王製紙が12月にETIに対し、1億5千万円の融資を実行するが、それでも13年3月には、再度、追加融資が必要になると見込まれること。

2 ETIは、販促活動の活動実績、費用請求、支払いを十分に管理できておらず、現地の小売店が思い出した頃に行う、販促費の請求に対して、支払い対応をしており、財務管理に問題があること。

3 ETIの過年度である11年12月期決算については、現地監査法人から「70%適正との意見」を12月12日までにもらうようにすること。

4 ETIでは、紙おむつの製造機械を、株式会社瑞光に対し、12年2月に発注内示していたが、その支払いは一部猶予してもらっていること。

5 ETIの大王製紙における連結決算への組み入れは、14年12月期からにすること。


12月10日、伊香田氏は、これらを報告書にして、井川専務に提出したところ、こう指示された。

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上:エリエール
下:佐光正義社長(11年6月29日に就任)同社HPより

「12月17日の週に、伊香田を含む4、5名のメンバーでETIに出張し、実態調査をするので準備しろ」

だが12月12日、伊香田氏は、井川専務からこう言われた。

「タイでのETIの調査は、来年1月に延期することになった。そのときは自分も行く」

井川専務自身も行く、との言葉に、伊香田氏は、改善を期待した。

そして12月14日、伊香田氏は、「ETIの調査に先立って、紙おむつの原価計算を理解するため、エリエールペーパーテックの工場で研修すること」と井川氏から指示を受け、同月17~20日まで、同社の喜連川工場、富士北山工場に出張して研修を受けた。

その後、伊香田氏は、ETIの調査に向け、資料整理などの準備を進めた。

しかし12月26日、突如、伊香田氏は、西川部長から「ハリマペーパーテック株式会社の、経理部門の強化のために、1月1日付で、取締役総務部長兼総務課長として出向してもらうことになった」と命じられてしまったのである。(※ハリマペーパーテックとは、大王製紙のグループ会社で兵庫県加古川市にある)

有価証券報告書に虚偽報告の疑い

伊香田氏は、この人事に不審感を抱いた。しかも、会社の疑問点は、ETIの不正経理以外にもあったのだ。それは次の経緯で知ることになった

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上は24年度第2四半期決算短信(連結)。下は25年3月期決算短信(連結)。同社HPより

井川高雄氏と、伊香田氏の告発全文(紙業新報13年1月11・21日号、2月1日号、2月11日号より)

伊香田氏の内部告発について記載した、北越紀州製紙と大王製紙のプレスリリース

降格処分、懲戒解雇の処分書の概要(※筆者が裁判資料をメモして作成したもの=コピーや撮影はできないため)

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2013/09/25 01:11
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