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2年で若手社員2人死亡の「東進」“ブラック”FC企業が、土浦市開発の駅ビル内スペースを落札――国費など75億円投入事業で

情報提供
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一面トップで買い手の決定を伝える『常陽新聞』2016年12月3日朝刊→該当記事はこちら
 JR土浦駅西口直結の再開発ビル(2017年11月開業予定)に、ナガセのFC事業である「東進衛星予備校」運営のイー・エス・ティー(本社・仙台市)が入居する見通しとなった。土浦市が計75億円を投じて開発したビルの2階、図書館に隣接する約400平方メートルの一等地を1億4100万円で購入する権利を得た。だが、この企業では、2012年と2014年に「東進」事業で若手校舎長が相次いで死亡。同僚らの証言から、それぞれ過労自殺・過労死の疑いが強く、現役社員は「労働基準法に違反した労務管理が今も行われている」と証言する。多額の税金で建てた公共性の高いスペースに東進系ブラック企業が入居することについて土浦市は、「まず売却することが第一。電通のように強制捜査でも入らない限り、法令違反の情報を得る手段もなかった」と話す。
Digest
  • ナガセのフランチャイジー企業
  • 原資は公的資金
  • 仙台進学プラザとイー・エス・ティー

ナガセのフランチャイジー企業

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ナガセ社長・永瀬昭幸(左)と、そのフランチャイジーとしてロイヤリティーを上納する仙台進学プラザ社長・阿部孝治(右)=両社公式サイトより

今回、入札で駅ビルへの入居が決まったイー・エス・ティーは、もともと茨城県発祥の会社だったが、2005年に株式会社「仙台進学プラザ」(本社・仙台市)が買収して傘下に入った。現在では両社ともに、阿部孝治氏が社長を務め、本社を仙台市に置く(※今回、地元企業を優先する要件は入札条件に入っていない)。

問題は、既報のとおり、この会社が直近で2名の死者を出しており、その亡くなりかたが、違法な過重労働によるものと強く疑われていることだ。

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2012年にK氏、2014年にS氏が死亡。ともに現役の「東進衛星予備校」校舎長だった。

1人は、2012年6月に、東進衛星予備校「新柏駅前校」「五香校」の校舎長Kさん(当時30歳前後)が自殺。もう1人は、2014年3月に「東北大病院前校」の校舎長Sさん(当時30代前半)が突然死している。双方の件で、現役社員が亡くなった事実関係について、会社側は認めている。(右記参照)

「Kさんが校舎長を務めていた2つの校舎は、それぞれ生徒数が少なく、『校舎閉鎖になったら責任取れるのか』と生徒を増やすように発破をかけられていて、プレッシャーもキツかったと思います。当初は病死した、と嘘の発表が社内で行われていましたが、1年後に自殺だったと発覚しました。過労自殺だと思います」(元同僚の社員)

Sさんは、年度末の時期に、特別公開授業の準備に追われるなか、心筋梗塞で突然死した。「Sさんは、私もよく知っている人でした。年度末は、ナガセの社員からもプレッシャーをかけられ、複数の仕事が重なり、ハードワークになります。この時期に、時間外労働が月80~100時間以上(※つまり厚労省の過労死基準超え)になることは、校舎長をやっていれば、ごく普通なこと。私自身、それ以上やっています。原因は、過労死でしょう」(現役の校舎長)

現在も、この会社の過重労働は変わっておらず、東進衛星予備校の部門は、茨城・埼玉・千葉の3県で、18校舎を社員15人ほどで回しているという。つまり、1つの校舎に社員が平均で1人おらず、かけもちが常態化し、足りない分はアルバイトで埋める。従って、「月の休日が1日だけ」という校舎もあるほどだという。この駅ビルで過労死が発生する可能性は、他社より高いといえる。

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1億4100万円を投じて購入し、東進衛星予備校が入る予定の場所

原資は公的資金

今回の駅直結ビル2Fスペースは、土浦駅からデッキを通って図書館に向かう導線上にあり、立地がよい。その入札は、昨年12月に最低価格2億7900万円で募集したが、応募がなく、今年7月に1億円値引きして1億7900万円に値下げしたが、またも希望者が出なかった。今回、1億2千万円に下げたところ、最終的に2社が同額で札を入れ、くじ引きで、同社が1億4100万円で落札した。この差額は、公費負担増となった。

そもそもが土浦市の開発事業なので、原資は公的資金。当初予算だけで、国庫補助金も23億7千万円投入されている。公共事業の入札で、このような会社が落札することに問題はないのか。

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駅ビルへの移転が予定されている土浦駅西口校。「東進衛星予備校」だけでこの実績をあげたとしか読めない、意図的に誤解を生むような表示になっており、「優良誤認」が認められる。実際には東大特進コースや東進ハイスクールなどの在籍数が含まれ、かつ受講料を支払わず形式的に在籍した生徒も含む。

この駅ビルへの移転が予定されている土浦駅西口校の前には、「東進衛星予備校」だけでこの実績をあげたとしか読めない、意図的に誤解を生むような合格実績が掲げられており、景品表示法で禁じられた「優良誤認表示の禁止」にも抵触している。

実際には、東大特進コースや東進ハイスクールなどの在籍数が含まれ、かつ受講料をとらずに形式的に在籍だけしている生徒も含んでおり、衛星予備校に在籍した生徒だけの実績ではない。(→“東大合格700人超”の謎

入札への応募資格としては、「公序良俗(こうじょ・りょうぞく)に反する行為を行う団体及びその関係者でないこと」「その他,反社会的勢力等の疑いがあると判断した者でないこと」が定められている。土浦市・土浦駅北開発事務所の山口氏に聞いた。

――私どもの同僚への取材では、正社員165人の会社で、2年の間に東進衛星予備校の校舎長2人が過労死(突然死と自殺)している。どちらも30才前後の若者で、病気でもないのに亡くなった。今でもブラックな労働環境は放置されていると聞いている。行政が税金を使って開発した建物に、いわゆるブラック企業が入るのはふさわしくないと思うが、応募資格者として、適格でしょうか?

「電通のように当局の強制捜査が入って新聞記事になったのなら別ですが、通常は、まず売却を成功させることが第一なので、細かいところまで審査はしません。労基署や税務署を含む、他の行政機関は、勝手に情報を開示することができないし、我々が情報を開示させる権限もないのです。新聞報道などで、客観的な事実関係が明らかにならない以上、曖昧な情報をもとに審査することはできません」

少々の法令違反は、表ざたにならない限り黙認する、積極的に調査することはしない、法的にも難しい、ということだ。いわゆるブラック企業がはびこる一因は、このように、教育事業を行う会社で社員が複数亡くなるという事実があってもなお、公的機関の入札でもまったく影響が出ないという、法体系にある。

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