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石井社長辞任の電通 首を洗って待つ「5人+α」の責任者たち、現場社員が語る「デジタル広告事業で過労死&不正請求が起きた背景」
「残業150時間やってました」と語るデジタル部門社員。数十にのぼるアカウントのキャンペーンを同時並行で進めていた。この入館証を出入り口でかざすと入退館時刻が自動記録されるが、逃げ道がある。

 年末に急展開を見せ、石井社長が過労死事件の引責辞任を決めた電通。厚労省は第一弾として12月28日、まず個別の過労死事件について、容疑が固まった「法人としての電通」と「被害者の直属上司(佐々弘弥部長)」の2者を書類送検し、現在は全社的な違法労務管理の疑いも含め、追加の立件に向けた全容解明の捜査を続けている。社員数が約7千人と大規模で、その1日単位での労働時間が証拠となるため、相応の時間はかかりそうだ。一方で、昨年9月に発覚したデジタル広告部門の不正請求問題については、1月17日、不適切取引は計1億1,482万円だったとの調査結果を発表。当初発表された約2億3千万円を大きく下回ったほか、悪質度の高い架空請求も338万円(10社40件)にとどまり、上層部がいかにデジタル広告の現場を理解していないかも浮き彫りとなった。渦中の現場社員らに、不正発生の背景について聞いた。

【Digest】
◇首を洗って待っている人たち
◇労務管理を軽視する上層部の体制
◇「シンプルすぎて重い」人事――「大山帝国の崩壊を感じる」
◇「意図は感じる」教育係の出向人事
◇社長人事でカルチャー変えるメッセージ出せるか
◇デジタル広告不正、過大請求は21万件中の40件だけ
◇不正額が当初より減った理由――「補てん案件」など
◇不正請求が発生した理由
◇やっと人員増に――新入社員の大半をデジタル部門へ

 2017年1月1日付の人事は、昨秋以降の各種問題噴出を受け、異例の大異動が発令された。今後数ヵ月は、電通自身の進路にとどまらず、日本の労働環境やデジタル広告業界への影響が大きいイベントが目白押しで、眼が離せない。

【1】会社全体の労基法違反について当局捜査の結論(逮捕/書類送検)と、その社内処分
【2】デジタル広告不正の結果発表と社内処分(1月17日、計1億1,482万円、17人の処分を発表)
【3】労災過労死事件の当局捜査結果・社内処分と、遺族との和解または訴訟
【4】石井社長引責辞任に伴う次期社長の選任

 この4つは因果関係にある。【1】(全社的に違法な労務管理)を背景として、なかでも固有の事情から激務を強いられたデジタル広告部門で【2】(デジタル広告不正事件)が恒常的に発生し、同部門で【3】(過労死)まで発生させた。【4】(社長辞任)はその結果である。

※NHKの取材に答えて感想を述べただけで「戒告」の懲戒処分となってしまった新聞局の20代社員は、1月1日付で経理局に異動となった。

 「彼はデジタル→新聞、という異動をしてきた人間なので、デジタル分野に対する理解もあったために、あのような発言に繋がったのでしょう」(若手社員)

 かつて社長を輩出するエリートコースだった伝統ある新聞局から、地味なバックオフィスである経理局への異動は異例で、客観的にみて「飛ばされた」「懲罰人事」だ。部下の批判を許さない電通の体質がよくわかる。

【電通・不祥事の経緯】
1991年8月 1人目の24歳男性 過労死
2013年6月 2人目の30歳男性 過労死(2016年秋に発覚)
2015年12月25日 2人過労死の反省生かせず3人目の24歳女性過労死
2016年9月23日 トヨタの指摘でデジタル広告不正につき会見
2016年10月7日 3人目遺族(高橋さん)側が過労死の労災認定を発表
2016年11月7日 厚労省が全社的な問題として電通本社等を強制捜査
2016年12月28日 厚労省が2者を書類送検、午後に石井社長が辞任発表
2017年1月17日 デジタル広告の不適切は1億1,482万円だったと発表、17人減給処分

◇首を洗って待っている人たち
 現在、捜査中の全社的な労務管理の違法性(【1】)については、①石井社長に加えて、②「コーポレート統括」(人事や財務含む管理部門)担当の取締役である中本祥一・副社長、③岩下幹・執行役員(人事担当)、④越智信喜・人事局長、そして、⑤過労死事件が起きたデジタル広告部門のトップにいた大山俊哉・執行役員(電通デジタルCEО)、の5人が、主なラインの責任者であった。

 違法な残業を指示した証拠や、長時間労働を防げない制度を放置した証拠が固まれば、この5人は、逮捕または書類送検され、起訴・有罪へと進む。過去の例からも、書類送検までは、可能性が高い。

 電通と同じく、厚労省の「過重労働撲滅特別対策班」(通称かとく)が担当した案件は、これまで、法人は略式起訴されて罰金刑、個人は書類送検されるが不起訴、となったケースが大半を占める。2016年10月に略式起訴されたドンキホーテは労働基準法違反の罪で罰金50万円、書類送検された執行役員ら8人は不起訴だった。2016年3月に略式起訴されたABCマートも罰金50万円、取締役ら3人は不起訴だった。

 今回は「働き方改革」をテーマに掲げる安倍政権のもと、塩崎厚労大臣が会見でも言及し「社長1人の辞任で済む話ではない」などと、表向き責任追及にやる気を見せているため、役員個人の書類送検に留まらず、起訴して有罪に持ち込めるだけの証拠を集めるまで、徹底的に「かとく」に捜査させる可能性がある。

 民事ではあるが、過労死の損害賠償をめぐる裁判で、大企業役員の個人責任が認定された例としては、居酒屋チェーン「日本海庄や」の例がある。全社的な長時間労働について取締役らは極めて容易に認識できたにもかかわらず問題を放置したことが、役員の「悪意または重大な過失」で、役員は会社法429条1項にもとづき個人として責任を負う、と認定された(高裁判決、最高裁確定)。

 1月中の辞任を表明した石井社長(①)は、会見ではトップとして全責任をとると述べ、潔くも見えた。とはいえ既に社長を6年やって65歳。事件がなくとも、そろそろ潮時、というタイミングだった。実は、取締役の退職慰労金は2007年に廃止済みなので、「全ての責任をとって」辞めても、通常の社長退任と比べ、何もデメリットはない。(会見で退職金を受け取るか聞かれた石井社長は「取締役会の判断に任せる」とごまかしていた)

 「社内では、驚きの声と、『そこまでやることないんじゃ』という声も一部から聞こえましたが、デジタル広告不正に過労死、全社的労基法違反の強制捜査が重なって、様々な批判に耐えられなかったんだと思います」(中堅社員)

◇労務管理を軽視する上層部の体制
 その石井社長と二人三脚でやってきたのが、同期入社(1973年)の中本副社長(②)だ。石井が営業畑、中本は財務畑を歩み、石井が社長に就任してからはナンバー2として、6年間も支えた。ただ、91年に起きた過労死事件の軽視を象徴するかのように、人事・労務畑出身者を取締役クラスに置かず、中本が人事のほうも「ついでに」見る体制となっていた。

 人事担当の執行役員は、いちおう置いていた。「執行役員の岩下さん(③)は、もともと人事はやってなかった人で、2012年4月に執行役員になってから人事担当になったんです」(中堅社員)。その前の役職は総務局長。専門外の人を形式的に配置しており、組織的な労務管理の軽視がみてとれる。

 12月28日の過労死と労務問題についての会見でも、岩下氏は対応せず、現場の越智信喜人事局長(④)、石井社長、中本副社長の3人が並んで会見席に座った。中本は人事出身でないためか会見での対応も当を得ず、防衛的で言い訳がましかった。自社が雇った法律事務所による「不法行為はなかった」とする見解を表明し反感を買う姿は、舛添要一・元都知事の失敗を繰り返していた。

 3か月前のデジタル広告不正の会見(2016年9月23日)でも、記者に突っ込まれた中本は、「不適切と表現しましたが、まあ、不正です」「できる限り、新聞に書くときにトヨタさんから発覚したという書き方は避けて頂きたい」といった名言を残している。

12月28日の社長辞任会見(越智信喜人事局長、石井直社長、中本祥一副社長)
 素人っぽい対応は滑稽でもあり、ベテランの副社長クラスにしては、ピュアすぎる。長きにわたって電通が批判されてこなかったため、追及されることに慣れていないことをうかがわせた。

 石井が、営業で鍛えたであろう演技力で謝罪の姿勢を見せているのに対し、中本にはそれがなかった。

 「中本さんは、当局対応もあるので、あのような守りに入った受け答えにならざるを得なかったと思いますが、デジタル広告不正問題でも違法労務管理問題でも、最後には、正直に不正を認める説明をしています。個人的には、根はちゃんとした正直な人だと思っていて、だからこそ石井社長が横に置いてきたのかな、と」(中堅社員)

 いずれにせよ、中本は当局対応などを最後まで行い、一連の騒動を終息させて辞任することになるだろう。

◇「シンプルすぎて重い」人事――「大山帝国の崩壊を感じる」
 2017年1月1日付の人事では、この5人のうち、社長・副社長以外の3人、つまり、人事担当の執行役員(岩下)、人事局長(越智)、電通デジタルCEO(大山)が、ともにライン長ポストを外れた。

 越智は部下のいない「人事局専任局長」となった。「最悪、逮捕されて身柄を持っていかれても業務継続に影響がないように、ということです。どんな処分もあり得る体制です」(中堅社員)。会社全体の労務を担当する人事局長なので、当然、当局の捜査対象になっている。

 電通のデジタル事業は、石井社長―大山役員のラインでけん引してきた。半年前に設立された「電通デジタル」初代CEOに就任したばかりだった大山は、1月1日付で「プロモーション担当補佐」のみの担当に担務替えとなった。デジタル広告不正問題と過労死問題のダブルで責任ある立場にいたため、言い逃れしようがない。

電通のデジタル部門組織
 「プロモーション担当は別の執行役員がいるのに、です。シンプルすぎて重いですね。石井社長辞任については『そこまでやるか』という声がありましたが、大山については、その類の声は聞こえてきません。石井さんが辞めることになった今、もう大山さんの復活はないんじゃないか、と思われます」(中堅社員)

 先月まで大山役員傘下の部署に所属したベテランの部長も、感慨深げだ。

 「大山帝国の崩壊を感じます。大山役員傘下の局は、激務のところが多く、求められる数字の過酷さは社内でもかなりキツイ方だったと思います。大山役員は、電通の役員の中では改革派の旗手のような方なのですが、スピードと結果(数字)の急成長を狙うため、人間のケア、業務改善が全く疎かになっていたのは間違いありません。

 2013年に買収したイージスのデジタルシフト、業務スピードの速さに、石井社長共々、かなりの影響を受けていました。2人は.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。



石井社長以外の常勤取締役は4人だけ(非監査等委員)
1月1日付で電通デジタルCEOを退任、本社プロモーション担当補佐に退いた大山俊哉執行役員(公式サイトより)。「大山帝国の崩壊を感じる」(部長)
1月1日付で電通デジタルCEOに就任した榑谷典洋執行役員(公式サイトより)

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