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片手不自由な人がコピー用紙運び、足が不自由なのに引っ越し作業――「障害なんて関係ねえ」大東建託、病人・死者続出の惨状

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大東建託某支店で非正規雇用されていた身体障害を持つAさん。「障害者への配慮や思いやりはいっさいなかった。すさまじいパワハラがありましたが、みな慣れて麻痺していました」と語る。
「法制化も視野に入れて検討してまいりたい」――11月21日、参議院消費者委員会で鈴木英二郎・国交省都市建設産業局官房審議官は答弁した。ノルマに追いつめられた社員の殺人未遂事件など大東建託が深刻な問題を多発させている様を山添拓委員(共産)が暴露、法規制と調査を迫ったのに対して、政府がその必要性を認めた瞬間だった。一括借り上げ・家賃保証を売りに高額なアパートを建てさせる大東建託商法に対する世論の批判は高まりつつある。そしてあらたな悲鳴が筆者のもとに届いた。元非正規社員で、身体障害を持つ女性からだ。手の不自由な人に重いコピー用紙を運ばせる、足が悪いと知りながら引っ越し荷物を運ばせる、いじめとパワハラ、差別が蔓延し、思いやりのかけらもない。「病人や求職者が続出、突然死も起きている。数字しか見ない会社は人を人として扱わなくなる」。異常な世界だ。しかし慣れて麻痺してしまう。それが怖い、と女性は訴える。
Digest
  • 怒号がとどろきイスが飛ぶ
  • 突然死の現場に遭遇
  • 身体障害者に重い荷物を運ばせる
  • 病人続出の職場
  • 社有車の修理は社員の自腹
  • パワハラと不正に満ちた日常に感覚が麻痺

怒号がとどろきイスが飛ぶ

 2010年ごろ、地方都市に暮らすAさんは、何か仕事をしたいと考えて就職セミナーに出向いた。声をかけてきたのが、大東建託の地元M支店だった。テレビCMで有名な大企業だ。担当者から受ける印象は悪くなかった。

応募すると、すぐに採用された。Aさんは足に障害がある。障害者枠による採用だった。給料が安く退職金もない非正規社員だったが、いい仕事がみつかった、と家族とともに喜んだ。

 障害者の雇用促進等に関する法律により、事業主は常時雇用している従業員の2.2%以上の障害者を雇用することが奨励されている。法定数に足りていない場合は、100人以上の事業所は不足1人あたり月額5万円の「障害者雇用納付金」を払わなければならない。一方、2.2%を超えて雇用すると、超過1人あたり2万7000円の「障害者雇用調整金」を受け取ることができる。

この数字は2018年11月現在のもので、2010年ごろ当時の法定雇用率は1.8%だった。分母となる従業員の数は、1年以上の勤務(予定)があって、週20時間以上働く従業員の数で、グループ企業の子会社であっても労働局が認定したものであればよい、とされている。虚偽申告をした場合は30万円以下の罰金という罰則がある。

大東建託がAさんを雇用したのは、この障害者雇用制度を意識したものだろう。

配属先は、M支店の業務課というところだった。支店の物品管理など雑用全般を担う部署だ。常識的な事務職を想像して出社した1日目の朝、朝礼の光景を目の当たりにして度肝を抜かれた。

「ひとつ、取り組んだらはなすな、殺されてもはなすな、目的完遂までは!」

職場の全員が呪文のように大声で唱和している。「大東10則」だ。毎朝の儀式だった。その程度のことで驚くのはまだ早かった。

ほどなくして、支店長の猛烈なパワハラを目撃する。標的にされるのは、建築営業社員だ。Aさんが振り返って話す。

「個室に営業社員をひとりひとり入れて、詰めていく。バンバンバンバンと机を連打したり、ガシャン、と机をひっくり返す音がする。いすを投げることもある。売り上げは? 見込み客は? (その客は)資産あるの? やる気あるんかおまえ!――激しい怒鳴り声や物音が、外にまる聞こえです」

この支店長は、以前別の支店でも部下にパワハラを働き、自殺未遂に追いやったことがある、とAさんは後日聞いた。いったん降格になったが、また支店長として復活してきたらしい。

建築営業のパワハラ実行者は支店長だけではない。建築営業課長が「詰める」こともしばしばあった。

「お前ばかか。その窓から飛び降りて死んでしまえ。犬だって命令すれば走ってくるだろう、それができないんなら、その窓から飛び降りてしまえ」

そんな暴言が頻繁に飛んだ。成績の上がらない営業社員はまともな人間として扱われなかった。

Aさんは入社したことを後悔した。辞めようと思った。だが、障害者にとって安定した就職口はそうあるものではない。現実の厳しさを前に、「とりあえず何年か我慢して働いてみよう」と考えなおした。

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子会社の社員が「勤労障害者」の表彰を受けたことを発表する大東建託のホームページ。障害者雇用促進に励んでいるアピールしている。

突然死の現場に遭遇

営業社員に対する上司の「厳しさ」は、いわゆる「愛の鞭」などというものとはほどとおい、冷酷なものだった。同僚社員の突然死で、そのことを思い知る。

Aさんが入社後しばらくして、同僚だった元銀行員の営業社員Mさんが急死する。40代前半の若さだった。連日支店長から罵声を浴びせられていたが、努力のかいあって、ついにある日1億円以上の契約をとった。その翌日の出来事だった。

契約締結を「一筆啓上」と大東建託では呼ぶ。Mさんは「一筆啓上」を祝って当日の夜に酒を飲んだ。車を会社において帰宅し、翌朝は電車で出勤してくる予定だった。

ところが次の日の朝、なかなかMさんは出勤してこなかった。契約にともなう仕事がいろいろある。「何やってるんだ」と上司らが気をもんでいるところに家族から連絡が入った。

「いま亡くなりました…」

出勤途中の駅で、倒れて救急搬送された。介抱のかいなく死亡したという。死因は、心筋梗塞だった。入社してまだ数ヶ月目だった。

「過労死」という言葉がAさんの頭によぎった。朝7時から夜の10~11時ごろまで、毎日土日もなく働いていた。遠方からの車通勤だった。帰宅時間は午前零時をまわっていたと思われる。朝も午前5時ごろには家を出ていたにちがいない。睡眠時間はあきらかに5時間を切っていた。

日をおかず、両親が支店にきた。「なんで突然こんなことになったのか、わからない。毎日帰りが遅くて大変そうだと思っていたが、まさかこんなことになるなんて」と憔悴した様子で嘆いた。その姿が痛々しかった。

「労災になるんじゃないか。手続きの仕方を教えてほしい」

 両親は支店員にそう尋ねていた。働きすぎではないかと不信を感じていたのだ。だが大東建託側の対応ぶりは、ショッキングなものだった

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参議院消費者問題に関する特別委員会で質問する山添拓委員(共産)(2018年11月21日)。

障害者の採用について案内した大東建託のホームページ。

Aさんは同僚の突然死に遭遇した。大東建託では社員の死亡はめずらしくない。新人社員が自死した赤羽支店(東京北支店と名称変更)。

大東建託の熊切直美社長。2018年3月期の報酬は2億9300万円に達すると報告されている。

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読者コメント

かおかお2019/03/01 08:46
意識低い系2018/12/22 23:59
 2018/11/28 00:27
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