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ドイツの脱力系鉄道会社・ドイチェバーン(DB)から見える“働き方改革”の論点
電車アートにも寛容な、脱力系鉄道会社『ドイチェバーン(DB)』。消すにも労力はかかるので放置か。

「大げさでなく、50%くらいの確率で時刻表通りじゃないので、列車は遅延する前提で後ろの予定を考えたほうがよいです」「予定されていた便自体が突然、なくなることもあります」「急な変更もドイツ語のアナウンスしかないので、周りの乗客をよく観察して一緒に動いて下さい」「停車したままエアコンもきかず、列車内がサウナになります」――。欧州に住む知人が口々に忠告してくれた、ドイツの国鉄・ドイチェバーン(DB、ドイツ鉄道)。ドイツ連邦共和国が100%の株を持つ、日本でいうところの昔の国鉄だ。都市間の移動はDBのICE(Intercity-Express、ドイツ版新幹線)に頼らざるを得ないので長距離だけで6回乗ったが、確かに時間通りに着いたのは半分くらいだった。

【Digest】
◇スピード&料金は、日本の圧勝
◇キャッシュレス&ペーパーレスは、ドイツの圧勝
◇低機能な車両と座席
◇駅の喫煙所で職員がタバコ休憩、客と談笑
◇雑多なアートに寛容なドイツ、枯山水なジャパン
◇規律がユルユルな、ドイチェバーン職員
◇労働者の人権最優先なドイツ

 遅れたといっても毎回20~30分程度で、途中駅での乗り換えを挟む場合に、指定席を予約済みの列車に乗れず別列車の自由席に乗らざるを得なかったことはあったが(トータルで2時間ほど到着が遅れた)、期待値が低かった分、想定内だった。

 発車自体が遅れることはなく、ちゃんと時間通りにホームに行くと、予定された列車がいたのだ。運がよかった。ただ、僕がアムステルダムにいたときに、ドイツからオランダに戻るDB列車が3時間以上の遅れで、以前からお世話になっている人たちに会えなかったのが残念だった。

 日本の鉄道が、過密ダイヤをこなすために時刻の正確さに異常にこだわっている件はよく知られており、むしろ世界のなかでは日本が異常値といってよい。だが、時間の正確さ以外にもいろいろ気になった点があった。

 以下、日本のJRとの比較で列挙するが、前提として、僕は新幹線の運転士(JR東海)車掌(JR西日本)、在来線の駅員(JR東日本)らを多数取材し、その内情について、広報のフィルターを通さず一次情報を得ている。つまり最も信頼できる情報を横断的に持っている。

 たとえばJR西日本では、こんな感じである。

「服装や身だしなみはマニュアルがあって、ヒゲは禁止。爪のマニキュアも禁止。香水も禁止。女性の長い髪は結んでわっぱに入れる。指輪は、結婚指輪以外はしてはいけない。腕時計もJRが支給するもの以外は、つけてはいけない」

 今は問題化して禁止となったが、運転士のミスで列車が定刻に遅れると、「日勤教育」という名のパワハラ(罰ゲーム)も組織的に行われていた。

 JR東海では、こうだ。

「9時出勤が定時なら、1時間前には出勤せよ、と言われます。従って、8時に行って、点呼を受けます。9時を1秒でも過ぎたら始末書です。乗務を下ろされ、出世が2年遅れます。日本の列車が時刻に正確なのは、こういうカルチャーによるものかもしれません。

 何か小さな事故でも起こしたら、9時~17時で事情聴取を受けます。経緯を書き「私の対策」を書き、それを7回くらい突っ返されて、訂正させられます。

 身だしなみは、細かいルールが決められています。たとえば、モミアゲは耳の穴より上。襟足がYシャツにかかってはいけない。前髪はマユより上。もちろん髪を染めるのは禁止。ちゃんとルールを守っているのに、髪が長めだとかで、所長に呼び出されて怒られたりします」

 どちらも、まだ染まっていない20代のうちに会社を去った若者の視点による証言だ。

 日本の鉄道会社は、総じて、日本の労働環境を象徴するガチガチの労務管理であり、軍隊のようである。一方、たいして過密でもないダイヤのくせに、半分も運行が遅れるドイツの鉄道会社。日独はどちらも製造業大国だ。かっこうの比較先といえる。

◇スピード&料金は、日本の圧勝
 まずは分かりやすい、インフラ含むハード面から。首都ベルリンと第2の人口を有するハンブルクをつなぐ路線が288キロなので、東京―名古屋(366キロ)と比較した(※1ユーロ=120円)。

高速鉄道におけるキロあたり運賃の日独比較(1等車、2等車)。新幹線は確かに性能が高い。
 結果は、普通車(二等車)でもグリーン車(一等車)でも、DBのほうがノロい割に料金は高く、日本の圧勝だ。1ユーロ100円の円高に振れてやっと日本と肩を並べる水準になるが、それでも平均時速が168キロとノロいので、200キロオーバーの新幹線より時間がかかる分だけ劣る。

 車両を製造するドイツ企業・シーメンスが、全然たいしたことない会社であることがよくわかる。それでも、鉄道車両部門で世界の2割強のシェアを持ち世界3強の一角を占めるという。インフラ輸出は政治力がモノを言う世界なので、いったいどのような政治力学が働いてそうなっているのか、謎である。

 ドイツは自動車産業が強いが、同じ乗り物系でも、列車のほうはぜんぜんダメなんだな、と思った。

◇キャッシュレス&ペーパーレスは、ドイツの圧勝
 チケットまわりについては、キャッシュレス化&ペーパーレス化という点で、ドイツのほうが優れている。

ベルリンを歩いていたら偶然あったドイチェバーン本社。手前ビルがソニーセンター。
 まず、全ての券売機で、近距離・遠距離問わず、当り前のようにクレジットカードが使える。日本の場合、これはJRでも私鉄でも同じだが、クレカで買えるのは新幹線のみで、在来線はなぜか現金にこだわり続けており、外国人にとってありえない不便さだ。自販機でSUICAカードをクレカで買えたり、そこにクレカでチャージできれば問題ないが、それすらもできない。

 絶対に現金が必要な仕組みだから、手持ちのキャッシュがない状態で隣の駅まで一駅乗りたい、と思っても、クレカだけではどうにもならない。僕は何度かそういう場面に出くわし、ATMで高い金利を払って現金1万円(日本ではなぜか最低1万円単位だ)をキャッシングしている。

 国策としてキャッシュレス推進(2025年に40%)を宣言しているのに、旧官業(国鉄)のJRが現金にこだわって従わないのは致命的で、反国家企業として経営者をクビにしたほうがいい。

 券売機のUI・UXは、日本の新幹線のほうが視覚的な理解に優れ、英語に切り替えることも可能で、座席表も画像表示されるので、優れている。チケットもローマ字表記が印字されるため、現金さえ持っていれば、外国人フレンドリーだ。

 一方のドイツの券売機は、6か国語対応(日本はもちろんない)だが、文字ばかりでわかりにくい。座席表からの選択もできない。さらに、券売機で英語を選択しているのに、出てくるチケットの印字がなんとドイツ語のみ。世界70億人のうち1億3千万人ほどしか母語じゃないマイナー言語であることを知らないのだろうか。

ドイツ語に固執するチケット。不便なだけ。
 その表記は「どうすればドイツ語が読めない人をうまく罠に陥れることができるか」を考えて作ったのではないか、と疑うほどの巧妙さで、実際に私は「12時35分」を「13時08分」と勘違いして、昼飯を食べていたら乗り遅れてしまった。全く同じ字体で並列に表記することにより、素人をはめ込む作戦ではないか。ゲルマン民族にあらねばドイツ人じゃない、という優生思想だったナチ時代を彷彿とさせる。「排外主義的でネクラなドイツ」を象徴しているなぁ、と思った。

 当初は券売機でこの紙チケットを買っていたが、券売機では出入口に面した落ち着かない席ばかりが自動的に指定されてしまうことに気づき、後半はネットで買うようになった。こちらは、圧倒的に便利だった。座席指定もできるから、ヘンな席を勝手に指定されなくて済むのもよかった。出発の直前になって、券売機で売れ残ったダメな席を強制的に買わされるのが、一番ヘタな買い方であることがわかった。

 チケットのペーパーレス化に関しては、圧倒的にドイツが優れている。JRの「スマートEX」は、ぜんぜんスマートではない。なぜか最終的に紙へのこだわりを捨てられず、ペーパーレス化できていない。仕組みも複雑怪奇で、日本人の私ですら利用する気にならない。改札口に直接行くには、SUICA番号の事前登録が必須だが、外国人が海外から予約するときにSUICAを持っているわけがないので、これはかなり悪質な「外国人ハラスメント」である。

 普段から利用していてSUICAを保有する人が、わざわざSUICAを登録済みであっても、日本人はなぜか紙を出さないと気が済まない人種らしく、予約内容を記載した『EXご利用票』が新幹線改札機からいちいち出力されてしまう。なぜペーパーレスを実現できないのか、理解に苦しむ。そんなに地球環境を破壊したいのか。

 DBは、この点、意外なまでに優れていた。座席指定&クレカ決済までネット上の公式サイトから簡単にできて、QRコードがPDFチケット添付でEメールアカウントに送られ、それがチケットになる(残念なことにやはりドイツ語だ)。職員がチェックに来たら、スマホ画面でPDFやQRを見せるだけでOKだった。端末でピッとQRコードをスキャンする場合もあった。

 とにかく、これが鉄道チケットの最終形と言えるだろう。フェアで世界にも開かれている。ロジカルで合理的なドイツの強さを思い知った。日本も見習うべきだ。改札機にQRコードを読み取る装置をつけるだけでよいのだから…。

 ドイツ人はチケットのドイツ語強要で外国人に嫌がらせをし、日本人はガラパゴスSUICA強要で外国人に嫌がらせ。そのあたりは、似た者同士である。

◇低機能な車両と座席
 ビックリしたのが、一等車の座席でもリクライニング機能がなかったり、座席の向きを進行方向に変えられないことだった。日本だと当り前のことが、意外に他の先進国ではそうではないのだった。

 進行方向と逆向きに座る人が、車両の半分もいることになる。飛行機でも逆向きシートが登場してきているので、慣れればまあ問題ない人もいるかもしれないが、ぐるりと180度回せれば解決するので、圧倒的に便利だ。

 この車両を製造しているシーメンス・モビリティーって、実にたいしたことない会社だな、と改めて思った。日本の車両技術は輸出競争力が明らかに高いので頑張ってほしい。

◇駅の喫煙所で職員がタバコ休憩、客と談笑
 以下、ソフト面についてだ。これはドイツ社会全般に言えることだが、「サービス砂漠」と言われるとおりで、サービス面には一切、期待できない。

制服職員が余裕で喫煙
 清掃サービスは全般的に、ほとんどしていない。まず、駅の構内がすごい。ICEに乗るために訪れたベルリン「ゲズントブルンネン駅」は、ガムが床にへばりついている状態が放置されているため、ボコボコ凸凹ができていた。

 最初は、そういうデザインなのかな?と思ったくらい一体化していた。10年くらい経っているのかもしれない。

 日本だと翌日には掃除職人によってヘラで剥がされ、綺麗になっているわけだが(放置したら確実に利用者からクレームが来る)、ドイツ人は誰も気にしないようだ。

 特に汚れているのは喫煙スペース(※オープンエアもドイツでは合法で、構内にもホームにも喫煙所がある)付近。タバコの吸い殻は排水溝に無造作に捨てられている。そして、職員が制服のままタバコを吸って一服しつつ、お客さんと談笑。ドイツは女性の喫煙率も高い。

 日本だと、制服のまま喫煙してたら炎上案件になるが、よく考えてみれば、休憩時間に一服して何が悪い、という話だろう。日本の規律が軍隊的で異常に厳しいため、私の感覚が麻痺しているのだ。

◇雑多なアートに寛容なドイツ、枯山水なジャパン
 清掃の基準は世界標準がないため、評価が難しい。駅が汚れていても人は死なない。美意識の問題で、アートの領域でもある。ビルの壁面にペイントされる雑多なアートがドイツの象徴であり、それは列車の車両にも描かれ、消されないまま普通に走っている(記事冒頭写真)。日本ではまずありえない。消すまで走らせないだろう。

 日本では器物損壊や威力業務妨害の罪で警察に捜査される案件だが、ドイツではかなりの高い確率で「電車アート」を見ることができる。そこには、ルールも秩序もない。ビルの壁面に描かれているものも多いが、こちらも所有者の許可を得ているものと、そうでないものが放置されている場合と、様々ありそうだった。

一番下:廃墟(たぶん誰も住んでないマンション)の「STOP WAR」がすごくドイツらしいと思った(ベルリン)
 これに対し、日本の美意識やアートは、いわば「枯山水」的で、山の水が滞りなく綺麗に流れている様をよしとする。美しい庭のようであれ、というわけだ(※私の理解です)。枯山水は「禅」の精神ともつながっている。禅は「雑念を排除すること」を基本とする。雑なものはあってはならない。ゴミだらけで、ゴチャゴチャしていてはいけない。

 その禅の精神に、明治以来の「軍隊的な規律」に基づくマニュアル遂行徹底の伝統(富国強兵&殖産興業)が加わり、「清掃などの当番活動や係活動等」として文科省の学習指導要領にも明記され義務教育課程に組み込まれたことで、日本は世界一の清掃至上主義大国となっていった。

 羽田空港は、英国の格付け会社「SKYTRAX」の清潔度調査で世界550の空港で1位(2019年まで4年連続)を定位置としており.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。



食堂車の限られたテーブルで職員同士が余裕のお茶休憩。若干、客の眼を気にしている感じはあった。

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