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三洋電機 幹部候補生制度が破たん 社員より地球が大事(仕事/生活)

情報提供
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C 働く生活者にとってのワーストカンパニー
(仕事1.5、生活2.0、対価1.0)
 2005年4月、総務・人事担当の梶川修専務が、東の拠点である東京製作所(群馬県)の担当に異動となり、現場の人事担当課長・O氏も任を解かれた。同社では、異動はネガティブなものとして捉えられるため「飛ばされた」というのが社内の一般的な見方だ。この異動は、三洋電機の幹部候補生育成システム「次世代経営職採用」の破たんを意味していた。
Digest
  • 幹部候補生コースが破たん
  • 羨望や妬みの対象に
  • 外部の優秀な人間を認めないカルチャー
  • 事業部と本社の深い溝
  • 人事の専門家もおらず
  • BUをまたいだ異動すらない
  • 概ね低い「J1」の社内的評価
  • 井植家の親族がたくさん入社
  • 不採算部門を切れないオヤジのしがらみ
  • 遅れる社内の効率化
  • サービス残業の強要も
  • 「囚人服」ともいわれるユニフォーム
  • 「OEM文化」がドライなタテ社会を形成
  • 三洋電機社員の一日

幹部候補生コースが破たん

「採用しといて、自分がいなくなるときは挨拶なしかよ」。梶川氏とジュニアとの間で対立があったとも言われるが、突然、放り出された経営職の社員からは、そんな声も聞かれる。意志決定者がいなくなり、誰も引き継いでいないのである。

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頓挫した経営職「ADVANCE21」の育成プランと報酬カーブ(2005年夏まで同社採用ページに掲載されていた)

同社は2002年、経営者の若返りと組織の活性化をねらいとして、次世代経営職育成プラン「ADVANCE21」をスタート。「20代で課長、30代前半に関係会社の社長、40代前半に本社の執行役員」を生み出すことを狙いとして、大々的に候補者を募集した。

早期に大きな舞台でキャリアを磨けるとあって、有名大学卒業者やMBA取得者、商社マン、コンサルタントらが続々と応募。過去4年間で新卒40人弱、中途80人弱が経営職の枠で入社した。しかし、鳴り物入りで入社した彼らのほとんどは、期待を裏切られる。既に新卒組の半分が辞めた。中途組も10人以上が会社を去り、転職活動をしている者も多く「年度末に向けてたくさん辞める」と言われている。

羨望や妬みの対象に

そもそも、業務やキャリアに期待をしたために、三洋の給与テーブルに合わせて給与を下げて来た社員が多い。しかし、「仕事内容は期待はずれ、給与は下がるわで、踏んだり蹴ったりだ」という話も良く聞かれるという。「業績が悪化しているうえ、もともとポテンシャルが高い社員は多いため、転職斡旋業者からの誘いは多いようです」(若手社員)。経営職のみを狙ったヘッドハンティングまで行われているという。

経営職社員の給与体系は2種類に分かれる。第1に、原則として前職の給与を元に決められ、同水準またはそれ以下の三洋の給与テーブルが適用されるケース。それでも、メーカーはそもそもの水準が低いため、商社やコンサルタントからの転進組では、三洋プロパー社員よりも若くして、高めのポジションに就く傾向がある。

「現場によっては次世代プランの存在さえ知らされていないので、『中途の社員で若いくせに、いいポジションで入社してるんだな』と、現場にやっかみを生むような事例が多かったのは確か」(若手社員)。

第2に、「オーナーマインド制度」(OM)。これは原則1年契約の契約社員だ。前職で非常に高い給与を貰っていた社員などはOMで、おおよそ希望した給与が支払われているケースが多い。社内では、表向き、どちらであっても変わらず普通に仕事をしているが、現場によっては知れ渡り、やはり羨望や妬みの対象となっている例もあるという。

外部の優秀な人間を認めないカルチャー

「そもそものプログラムも、リクルートが描いた絵に従って、人材斡旋会社のリクルートエイブリックに丸投げだったようなので、もともと機能しないことは目に見えていました」(他社の人事担当者)

確かに一見すると、30代前半で関係会社の社長を経験できるといったチャンスが与えられるといった、魅力的なキャリアパスが描かれている。この通りに実行されるなら、転職する理由になる。人材紹介会社としても、誘い文句に事欠かない。しかし実際には画に描いた餅だった。

ある社員の解説によれば、従来の三洋のカルチャーとして、外部の優秀な人間を認めない風潮がある。だから反応としては、「確かにファイナンスの知識はすごいかもしれないが、製造のことは分からない。彼に三洋の魂はわからない」という受け止め方をされてしまうのだという。

「そもそも三洋には、マネジメントや市場環境を認識するといった概念自体がなく、その分野のスキルも低い。受け入れられる素地がないのです」(社員)。経営職候補で入社した社員が自主的に集まって勉強会をやっていたこともあったが、諦めの精神だけが共有され、いつの間にか、開催されなくなったという。

事業部と本社の深い溝

ある中途採用の社員は、経営職として入社したが、特別な研修がある訳でもなく、特別なチャンスも権限も与えられなかった。通常の中途採用者と、まったく同じ扱い。「事業部制が徹底されており、事業部が本社の言うことを聞かない。現場の人たちはプライドが高く、中途採用でいきなり本社の人事部が採用した経営職の人など受け入れようとしない」(経営職社員)。

事業部では、そもそも「次世代経営職」の存在すら知らない人がほとんど。「キミはなぜそんないい会社にいたのに、そのキャリアを捨てて三洋にわざわざ来たんだ?」と聞かれる始末だという。このため、「次世代経営職」での入社を隠し続けている社員も多い。

確かに本社側は、経営職を活用していく意思を持っていた。新卒枠で入社した人たちは、新人なのにGM(ゼネラルマネージャー)と呼ばれ、最初の1年間、人事部の息が掛かった直轄の部署に置かれる。1年目の10月からグロービスのMBAコースを受講できるなど、それなりの教育を受けていた。20代課長も確かに1人、生まれている。

しかし、その20代課長も、本社人事部のプロパー社員を29歳で専任課長に昇格させるという完全な「お手盛り」で、それ以外の事例はなし。つまり、本社がいくら頑張っても、本社の外では、全く機能しないのである。現在は、旗振り役の課長と専務がいなくなったことで、投げ出された状態。いまや「経営職」の存在自体が社内で隠されており、もちろん新規採用は2005年夏にストップしている。

この状況に対し、「学歴もプライドも高い人たちなので、ルーチンワークにギャップを感じており、9割は不満を持っていると思う」(新卒)、「この実態を知っていたら、10人中9人は来なかったと思う」(中途)。経営職で入社した人たちは、想定外のギャップを口々に語る。

人事の専門家もおらず

「いったい、どうなっているのか」「話が違う」。2003年秋には、経営職採用枠で中途入社した社員らが集まり、旗振り役の本社人事部門の課長と梶川専務を飲み会の席に呼び出し

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三洋の末端組織

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