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三菱ケミカル、「ベネフィットワン」で福利厚生をざっくりカット

年100万円減の社員も

情報提供
1枚目写真掲載用さしかえ
社員はiPhoneテザリング、ThinkpadX1、テレワークオフィスZXY(ジザイ)を使い放題

しがらみのない外国人CEOを招いて構造改革まっただ中の、三菱ケミカルグループ。リストラ対象である石油化学・炭素事業の需要減退が響き、前期利益は激減。2023年6月支給ボーナスは、コア営業利益連動分が、わずか0.1か月分だった(個人評価連動分4ヶ月と合せ、計4.1ヶ月=年間ボーナス)。前年比マイナス約1.5か月と落ち込み、改革は待ったなしだ。「タウンホールミーティングが数か月に1回あって、ギルソンCEOが登場する回は特に社員は注目しています。何を言い出すかわからないから。直近では5月中旬にありましたが肩透かしで、決算報告などを中平優子CFO(マッキンゼー・3M出身)に委ね、特にトピックとなるような発言はナシでした」(中堅社員、以下同)

Digest
  • ギルソンCEOの決断待ち
  • ボーナスが年1回、業績連動方式に
  • ベネフィットワン21.4万円分に福利厚生をカット
  • 7~8割は課長になれた
  • 再雇用者は4ランクで処遇「スポーツ新聞1日読んでる」

ギルソンCEOの決断待ち

タウンホールミーティングは、本社機能を置く丸の内『パレスビル』内で開催され、午前・午後の二部制。直接リアル公聴とオンライン中継視聴の併用で、録画ビデオも後日閲覧できる。2年前(2021年4月1日)のCEO就任以降にはじまり、その年末の「石油化学事業と炭素事業の分離方針」表明以降は、組織の分け方を変え(フラット化)、社名を変え(三菱ケミカルホールディングス→三菱ケミカルグループ)…と、現場には影響がない話ばかり。

決算報告もこの2人
四半期ごとに決算報告を行うCEOとCFO。外部から外国人と女性を登用し、表面は外資系企業っぽく見えるが、図体はまだまだドメドメの年功序列JTCという、コラ画像みたいな会社になっている。

「メルアドを@mcgc.comに統一します、社名変更にともないロゴの右側の文字が3行に増えます、社用封筒も代わります…など、どうでもいい仕事が増えるなぁ、と。改革を期待して聞いていると、しらけます。化石燃料事業の《カーブアウト》をどう見通しているのか、中核事業に据える機能商品のなかでも、どこで勝負するのか。はっきり言わないんです。突発的に来るのだと思いますが」

いわば、嵐の前の静けさ、である。これは同じく化石燃料の問題から脱炭素・EV化で、100年に1度といわれる激変が予想される自動車業界にも似ている。

〈これまでの経緯〉 ジョンマーク・ギルソンCEOは、同社初の外国人社長で、どの事業部門ともしがらみのない、外部からの落下傘的な登用だった。他業界では、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長、日産自動車のカルロス・ゴーン社長などの例があるものの、財閥系・業界最大手の化学メーカーとしては、異例中の異例。年収も4億4500万円(2022年3月期)とグローバル基準に設定されている。

この人事は、不正経理問題が明らかになった後に東芝の社外取締役も務めた経験がある小林喜光会長が主導し、その意を受けた指名委員会(元日本IBMの橋本孝之委員長)が決めたもので、社内からも驚きを持って迎えられた。《日本人社長ではとうてい踏み切れない、大胆な事業整理や大改革断行》の予告編としては、十分なものだった。

三菱ケミカルGの合併・統合の歴史と現在の組織体制

同社は三菱化学を中心に10社ほどが合併して誕生した、長い継ぎはぎの歴史をもつ。

その中核事業である石油化学製品は、世界的な脱炭素(GX=Green Transformation)プレッシャーとコモディティー化のなかで未来は縮小の一途であり、利益が圧縮される運命。

「選択と集中」を行い、ぜい肉をそぎ落とし、収益の柱を絞り込んで行く改革が必須の事業環境にある。

ギルソン氏は、就任1年目の2021年末に、売上高の約25%を占める「石油化学事業」と「炭素事業」を、2024年3月までに分離する方針を公表。

2年目の2022年4月に組織の一体化を進め、フラット化した(上記図参照)。製薬メーカーは食品会社の一事業として展開されることも多いが(明治、味の素など)、帝人や大塚と同様、田辺三菱製薬は、化学品会社の一部門としてシナジーを追究していく。薬害エイズ事件で歴代社長3人が逮捕された「ミドリ十字」を呑み込んだ同社だが、上野裕明代表取締役は“名ばかり社長”に格下げとなり(社長ポスト廃止)、ギルソンCEOに権限を全集中。改革は準備万端、な状態だ。

そして、3年目が始まった2023年度。石油化学と炭素は、分離して他社と統合する計画だったが、合弁相手が見つかっておらず、難航している。法人自体も、まだ4つがそのままあり(持ち株会社の下に三菱ケミカル、田辺三菱製薬、生命科学インスティテュート、日本酸素HD)、社員の採用はそれぞれの会社で行う。

ギルソン氏が掲げる「One Company, One Team」という標語は、日本では、20年にわたって統合できずシステムトラブルが続く「One Mizuho」にも似て、まだまだ困難が予想される。

継ぎはぎグループを1つにまとめて生き残るには、当初から想定されていた「石化&炭素事業のリストラ」だけでは不十分とみられている。次の一手で、どこを削り、どこにリソースを集中していくのか――に社内外の注目が集まっている。

「社内では、三菱化学出身・和賀昌之社長の時代(2018年4月~2022年3月)に、レイヨン出身者と樹脂出身者を淘汰して、三菱化学による支配を強めた、とみられています。別の事業畑から、三菱化学出身者が上層部に天下ってくる、というパターンが増えました。

そういう人は、しがらみなく改革できるかというと、逆に、冒険しないんです。その事業のことは、よく分からないから。和賀社長は慶應幼稚舎上がりで、慶應人脈が出世では有利だと思われていましたし、上司にゴマをすれていたかどうか、が重要な会社になっていました」

こうした、統合会社にありがちな出身差別や内向きな派閥争いを排して、社員から見た納得性の高い改革を進めるには、これまで全く利害関係がなかった外部人材のリーダーシップが不可欠となる。その点、ベルギー出身で、しがらみゼロのギルソンCEO(過去に5年間日本駐在経験アリ・妻は日本人)は、適任であった。

ボーナスが年1回、業績連動方式に

2021年の人事制度改定によって、社員の待遇面の構造改革が進んだ。

「ボーナス制度が大きく変わって、年1回支給になりました。6月に1回、前年度業績に連動して、通常は5~6か月が安定的に出ます。6ヶ月分出ると多い、というかんじです」

計算式が示され、「前年度の三菱ケミカル社連結コア営業利益」に連動する仕組みになった。安定している理由は、個人業績連動分で4か月分を占め、これは5段階の個人査定で1.3~0.7の係数がかかるものの、だいたい1(つまり4か月分)とみてよいからだ。

上から、FEX=1.3、EX=1.15、ME=1、BE=0.85、FBE=0.7である(Far Exceed Expectation、Meet Expectation、Far Below Expectation)。

「人事評価は普通の目標管理で、運用上、7割がたの人に、真ん中の1の評価がつきますから、差はつきません。化学品の多くは、1年前から発注されるような長期サイクルですから、だいたい売上の見通しは予め決まっていて、プラスの提案をどうできるか。期初の目標に達していなくても詰められることはなく、評価もほぼ真ん中がつきます。そこは外資と違って、JTC(Japanese Traditional Company)らしいユルさがあると感じます」

プラス1~2か月分が会社全体(連結ではなく三菱ケミカル社)の業績に連動する。こちらは個人ではどうしようもない。ただの運だ。その支給月数は、営業利益が、

500~1000億以下:0.0008×コア営利(億)―0.4

1000~2000億以下:0.0016×コア営利(億)―1.2

2000~2500億以下:0.0024×コア営利(億)―2.8

となっており、かつ、この範囲に収まらない場合は「別途労使協議」。一見して分かりにくく、労使協議という裁量の余地まであり、アンフェアだ。これでは目標の共有もできず、士気も上がりにくい。社員全員に関係するボーナスの算定式はシンプルなほどよい(→三菱商事は非常にわかりやすい)。

コア営業利益とボーナス
コア営業利益に連動して決まる三菱ケミカルの年間ボーナス

2023年6月支給分は、業績悪化により、コア営業利益が607億円にとどまった。上記計算式に基づき、

【会社業績分】0.0008×607 ー 0.4=0.09 ≒0.1ヶ月
【個人業績分】4.0ヶ月
 合計  4.1ヶ月分

これが、1年分のボーナスである。前年比マイナス1.5か月分と、落ち込んだ。

前期比930億円もの減益となったケミカルズセグメント(石油化学・炭素事業)のインパクトが大きく、その原因内訳は「需要減退に伴う減販」が最大の要因となっている(同社5/12決算説明資料より)。

ベネフィットワン21.4万円分に福利厚生をカット

社員にとって、待遇面の最大の変化は、住宅面などの手厚い福利厚生にメスが入ったことだった。

「福利厚生は、この数年で大幅にカットされました。

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三菱ケミカルのキャリアパスと報酬水準

三菱ケミカル30代半ばの源泉徴収票(非管理職=E1ランク)。うちボーナスが220万円程度。財閥系大手メーカーらしい十分な処遇。

三菱ケミカルの再雇用者待遇

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hiroomi2023/06/20 19:47

”決算報告などを中平優子CFO(マッキンゼー・3M出身)に委ね、特にトピックとなるような発言はナシでした ”デカくなりすぎたのと、事業部の中も散漫なのかな。

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