My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

三菱ケミカル 逆三角形の人口ピラミッドで“給料だけ高い兵隊課長”だらけに――「下はいないのに、上は辞めない」

情報提供
2030年ビジョン
中期経営計画では2030年までに、成長事業で売上の7割超を占めるポートフォリオ目標を公表。かなり大胆な構造改革が急務だ。

ギルソンCEOのもと、石油化学・炭素事業以外にも、事業撤退や売却により、組織のスリム化が進むことが予想されている三菱ケミカル。2030年には、選択と集中によって成長事業(温室効果ガス=GHG低減事業や炭素循環など6つ)の比率を70%以上に高めるという大胆な中期経営計画を公表しており、逆に“衰退事業”は1.8兆円規模へと4割も刈り込んでいく。この一環として、2022年3月には、自動車の排ガス処理に使われるアルミナ繊維「MAFTEC」事業が、外資の投資ファンド(Apollo)に850億円で売却された。

Digest
  • リストラされないポジショニング
  • 半年で200件出る社内公募
  • 「労組が雇用を守ってくれる感じはない」
  • 課長=「給料だけ高い兵隊」な逆ピラミッド組織
  • 新卒TOEIC990点クラスが4~5人
  • 30代以下で海外駐在「5人に1人くらい」

リストラされないポジショニング

この事業、2011年には「当社が成長事業の一つとして位置づけるアルミナ繊維MAFTECは~」と、工場で新ラインを増設するプレスリリースを出していた。だが10年を経て、衰退事業に区分された。そもそも電気自動車は排ガスを出さないため、この製品は使われなくなるからだ。

KAITEKIストラップさしかえ
同社が掲げる「KAITEKI VALUE FOR TOMORROW」のストラップつき社員証

「自分が知っている後輩社員が、このアルミナ繊維事業に所属していたのですが、発表されてから転職活動を始めて、すぐに外資企業に転職が決まっていました。英語が得意で、優秀な社員だったので…。事業売却されると、本人に全く罪はないのに別会社の社員になってしまって、かわいそうです」(中堅社員、以下同)

事業売却の場合、会社分割法によって、その事業に主に従事している社員は、事業と一緒に売却され、「元の会社に残る権利」はない。

売却先の企業が同じく日本の大企業であれば、待遇も雇用安定性も維持される可能性はあり、たとえば東芝→キヤノンに売却された医療機器事業(現キヤノンメディカルシステムズ)のように、泥沼・泥船から抜け出せるケースもある。一方で、事業「撤退」の場合は、単純に社員があぶれてしまう。

「以前に、私と近い部署で、3つのチームのうち2つのチームが事業撤退することになって、7~8人の居場所がなくなったことがありました。それで、雇用維持のために、地方の子会社に転籍になった人もいました。自ら手を挙げて、機能商品の部門へと異動した人もいましたが、社内に籍を残せたという意味で、このパターンはいい方です」

どの事業が売却・撤退対象なのか、すべてが明示されるわけではない。売却する場合、人材流出したら事業価値が下がるからだ。だが情報収集していれば、だいたい予想がつくという。本体からの分離を表明済みの石油化学事業・炭素事業といった原料系(付加価値が低い・コモディティー系)がもっともリスクが高く、温室効果ガス低減や炭素循環などGXに資する機能性商品を扱っている部署は撤退リスクが低い。

「社内で情報収集して、自分がどの部署にいるべきか、常に考えないといけません。そういう嗅覚が必要な環境に、我々は置かれています。だから、本社管理畑の社員と飲みながら、情報収集しています。リモートワークで自宅作業をしていると、雑談がないのが問題。昼飯、タバコ、お茶をしながらの雑談で、情報を得るんです。そして、異動希望を出したり、社内公募で手を挙げて、脱出します」

半年で200件出る社内公募

社内公募制度は、どのくらい機能しているのか。

「活発に公募制度を運用しようとはしていて、半期に1回程度、エクセルで200件くらいずつ募集案件が出ます。そのうち4割程度の異動が、実現すると聞いています。エントリーシートを書いて、

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り6,057字/全文7,348字

4事業会社合計の同社非財務データ集「社会性データ」(2021年度)より

三菱ケミカルの等級定義書(E職の2,1)

逆ピラミッドの社員年齢構成。50代をリストラしてもまだまだ多い。

逆三角形の現場組織。ヒラと同列の「兵隊課長」が多い。

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、こちらよりご連絡下さい(永久会員ID進呈)
新着記事のEメールお知らせはこちらよりご登録ください。