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東レは“生産機械様”文化 「化学好きには向かない会社です」

他事業にも及ぶ繊維カルチャー、在庫管理厳しく

情報提供
東レの所属業界
セグメント別で全く異なる東レの所属業界。昭和JTC(Japanese Traditional Company)は一括採用でガチャ配属する。配属先業界によってキャリア人生の方向性が決まってしまう点には要注意。

東レは、昭和元年(1926年)1月に東洋レーヨンとして滋賀で設立され、昭和とともに成長し、経団連会長(榊原定征)も輩出した“ミスター昭和JTC”。創業100年を目前に、ユニクロ向け素材『ヒートテック』などで知られる祖業の「繊維」は売上全体の4割まで縮小。自動車・家電向け樹脂など「機能化成品」が同規模に育ち、『ボーイング787』機体向けの炭素繊維、ヴェオリアやスエズなど水メジャーと競合する淡水化プラント、人工透析器やコンタクトレンズなど医療機器にも進出。社員は、それぞれ全く関係のない業界でキャリアを積み商流も異なるが、配属は一括採用からのガチャだから要注意である。現役社員に実態を聞いた。

Digest
  • 最多配属地は「滋賀」
  • 西の旧帝大卒をかき集める
  • ユニクロ提携戦略で新社長に
  • 工場が強い「生産機械様」文化
  • 繊維カルチャー「化学好きには向かない」
  • 本部が違えば別会社
  • 飲みかゴルフで情報収集し相場を読む
  • 「毎週のように海外出張、駐在は少ない」
  • 海外キャリアはガチャガチャ運試し
  • 同期は「毎年1人辞めていく」

最多配属地は「滋賀」

東レは例年、140人程度を採用し、うち事務系は約3割。メーカーは生産機能と営業機能を別会社化している企業も多いが、東レは本体内部に、生産も営業も、どちらもコアな部分を持ち続けている。

「生産」機能と「営業」機能:ソニー、キヤノン、トヨタ

 たとえばソニーの半導体事業なら、本体は「ソニーセミコンダクタソリューションズ」(厚木)で、その生産子会社が「ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング」(熊本)。何が違うかというと、子会社は、給与体系が親会社よりも安く設定され、人事面でも上級管理職ポストが親会社の天下り先になる。子会社に入るメリットは何もない(→『子会社には入るな!』)。ソニーは営業機能も「ソニーマーケティング」という子会社に分離。キヤノンも、キヤノンマーケティングジャパンが営業を担うため、本体はノルマや接待とは無縁で、社内は落ち着いた雰囲気で静かだという。キヤノンやトヨタは、生産工場を重視するカルチャーがあり、国内のマザー工場は別会社化していない。その点は、東レも同じである。

素材メーカーの営業職は、需要動向や価格など相場を読むマーケティング力が求められ、特殊性が強い。また、たとえばディスプレイの新素材など、技術に詳しい営業職(技術営業)が必要で、「理系出身者の事務系就職」組も目立つのが特徴である。

東レの採用推移(新卒、女性、中途)
東レの採用数推移(新卒、女性、中途、専攻別)

技術系の専攻分野別では、繊維業を母体とする化学メーカーなので、化学系が中心。女性は少なく、新卒全体で102人のうち14人(2022年)しか採らない。

採用には、地理的な特徴が色濃くでている。東レは、滋賀で創業。労組の拠点である「全東レ労働会館」も、大阪府のなかで京都・滋賀方面に近い茨木市にある。東レを担当する年金事務所は現在も「大津年金事務所」で、被保険者は10894人(2023年11月2日現在)。営業上の理由から東京・大阪の2本社制をとっているが、実質的には「日本で一番有名な滋賀県の会社」である。

技術職の本拠地は、今でも創業の地である滋賀県大津市の「滋賀事業場」敷地内にある。大津市は京都市に隣接し、京都市は大阪府の隣とあって、京大・阪大・神戸大・名古屋大・九大など、西のほうの旧帝大出身者が中心の構成となっている。『就職四季報2024年版』に開示した技術職の初期配属地は、29人の滋賀が一番多く、次が12人の東京だった。事務系は東京16人、大阪10人の順である(2022年)。

西の旧帝大卒をかき集める

京大と滋賀事業場
京大と滋賀事業場は電車で1時間、車で30分。

例年、新卒採用は京大卒が一番多く、2022年は、事務系も含めた全102人のうちの19人を占めた(大学通信オンラインより)。実に、5人に1人が京大出身、という高学歴ぶりである。京大から滋賀事業場までは、電車で1時間。地元がこのあたりなら、大学院時代から引っ越すことなく通えてしまう。親元から離れたくない人にとっては好都合である。

2023年も一番多いのは京大15人(うち事務系1)と慶大15人(うち事務系12)。次いで、阪大10人(うち事務系2)と早大10人(うち事務系7)、までが2桁である。技術系は近場の京大阪大から、事務系は無難に早慶から——という、実に分かりやすい採用を行っている(以上、『就職四季報2024年版』より)。

「技術系は、教授推薦で、配属先の部署や勤務地が決まった状態で入社してきます。事務系は、私の周囲だと一橋や慶應が多めな印象があり、大矢光雄社長も慶應(法学部)。シェアトップの炭素繊維や、水処理技術の先進的なイメージを持って入社してくる人が多いですが、配属はガチャです」(中堅社員)

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東レの組織図(2023年10月、公式サイトより)。図の一番左が「本部」(13個)、真ん中が「部門」(35個)、一番右が「事業部」。

事務系だと、「繊維事業本部」への配属は、100%文系出身。「繊維は伝統があるだけに、昔ながらの体育会系カルチャーがあって、『体力だけは自信がある』といったタイプが多く配属されています」(別の社員)。逆に、「電子情報材料事業本部」は8割が理系出身で、院卒者も多い。技術が分かっている人が営業したほうが効率がよいためだ。「樹脂・ケミカル事業本部」は文理半々くらいだという。

「自分は、第一志望は『水処理・環境』ですが、他もいろいろ見てみたい――と面接時に言って、内定しました。研修のあとの配属面談時に『〇〇部門以外はやりません』――と言って、希望どおり配属されました」(同)

ガチャが基本なので、そのくらい強く言わないと、通らない。希望が通らなかったら辞めます、くらいの迫力が必要である。人事としては、すぐに辞められたら「なんで採ったんだ」となり、自分の失点になって困るから、言ったもの勝ち。逆に、曖昧にしておくと、数合わせ要員にされてしまう。

「営業を希望していたのに人事に配属された人が同期でもいました。人事が2~3人。一番多いのが繊維で、7~8人。環境、プラスチック(樹脂・ケミカル)、情報通信、炭素は、各2~4人くらい。炭素と水が、圧倒的に人気がありましたが、実際に行けたのは計6~7人だけ

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東レの現場組織と人員構成

日覺昭廣会長・大矢光雄社長。同社の本流は日覺氏の生産設備開発畑(エンジニアリング)。装置の開発、効率的に生産する設備技術の開発、プラントの設計・導入・保全・改善、を中心に置く「生産設備様」が東レのカルチャー。

2561人が割かれるメイン事業は機能化成品(有報より)

実数ナシで、海外駐在員数「11年間で57%増」という開示の仕方から、会社の体質が見えてくる

海外駐在者数の範囲について東レの返答(2023年12月8日追記)

ESGデータのS(社会関連)項目。離職率すら開示できておらず、新興企業にも劣る標準以下の開示レベル。経団連会長を出した会社としては、実に不誠実な姿勢といえる。

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海外駐在者数の範囲について東レの返答を追記した(2023年12月8日、画像参照)

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