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東レ 家賃補助15万で競合並みに賃金改善も、追い出し部屋「人事開拓室」で保障は55歳まで

情報提供
他社並みへの引き上げ
見直しが行われた賃金カーブ(※資料全体は末尾にてダウンロード可)

東レの報酬体系は、2015年度に人事処遇制度の改定が行われ、「大卒30歳以降の賃金水準が化繊他社比で見劣りがあるとの労使共通の課題認識」(労組資料)のもと、水準を4年連続で引き上げ、2019年度の賃金見直しで、現在の形に落ち着いた。引き上げられたのは初任給(学部卒24万~博士卒30万に)と、G2~G3の26歳~35歳にわたる約10年間の賃金だ。滋賀の田舎企業としては高めでも、東京の競合他社に比べれば劣っていた給与水準が、改善されたことになる。

Digest
  • 年収8百万+住宅補助まで一律で到達
  • 住宅補助15万円の理由
  • 37歳がイーグル…管理職昇格試験が難化
  • 部長以下は全員エコノミークラス
  • 窓際族300~400人「人事開拓室」へ
  • 55歳で課長ポストオフ
  • 「全員1100万円まで」維持できるか

年収8百万+住宅補助まで一律で到達

東レは典型的な古い昭和企業なので、年功序列的にしか給料は上がらない。その間の水準が同業他社と比べて低いと、社員が不満を抱え転職してしまう問題があった。あわせて、管理職クラス(G4)の賃金も引き上げられた。

その結果、開示データ上でも、全社員平均の賃金が、過去10年間で643万円(2013年3月期)→756万円(2023年3月期、平均40.3歳)へと、113万円アップしている。ようは、経団連会長を輩出する大企業になった割に、以前が安すぎたわけである。

賃金が上がるスピードは採用コース別で全く異なり、かつ福利厚生も異なるため、全体平均だけみても実情は分からない。同社の社員数は全6992人(2023年3月期)。多くのメーカーがやっているような生産子会社化を行わず、工場労働者も、本体が直接雇用している点に特徴がある。コース別採用は以下の通り。

Gコース:Global Level Assignment Cource。ようは総合職。キャリア組。

Sコース:Specified Assignment Cource。ようは一般職。各拠点で採用。

肝心のコース別社員数は非開示だ。社員が実態を解説する。

「Gコースが約2千人で、ホワイトカラー。うち、管理職クラスが約1千人です。残りの約5千人がSコースで、各拠点の工場で勤務するブルーカラー。つまり、残業代が発生する組合員は、Gコースの非管理職1千人と、Sコースの5千人になりますから、労組活動は圧倒的にSコース社員たちの影響力が大きいです」(中堅社員)

GとSの新卒中途採用実績
GとSの新卒・中途採用者数推移(過去3年)。Gが全体で何人いるのかという基本的な情報すら非開示な闇企業である。

役割分担と待遇面は、官僚のキャリアとノンキャリにも似た違いがある。Gは文字通りグローバルな転勤がある幹部候補であり、Sは拠点別で採用され地域間異動(転勤)はない。したがって、両者は同じ東レ社員ではあるが、賃金体系が異なる。

Gコースの労働者層はG1~G3、SコースはS1~S6のランクで管理される。

東レ_キャリアパスと報酬水準
東レのキャリアパスと報酬水準

総合職にあたるGコース社員は、左記図のとおり、学部卒でG1(初任給24万円、院卒は26万円、博士卒は30万円)からスタート。残業代は本部ごとによって全く異なる(Sコース社員を含む全社平均で14.4時間と開示)。地域手当(東京・大阪の2本社体制で、本店事務所手当がつく)を含め、学部卒では、額面で約30万円×12ヶ月=360万円。

「サブロク協定では月70時間程度を超えるとまずいので、残業はそれ未満にします。残業代のつけやすさは、人事権を握っている本部長(事業本部は「繊維事業本部」など6つ)が大枠の残業時間を決めているほか、事業部門のカルチャーによってつけやすさが異なります。実際に100時間やっても20時間までしかつけるな、という部門もあれば、150時間やって60時間つけさせる部門もあります。『やった分そのままつけろ』『MAX20時間だ』など運用がバラバラです」(同)

このように、中央の人事部が弱く、会社全体でガバナンスが利いていないのが東レの特徴である。事業本部ごと、さらには、事業部ごと、上司ごとの裁量権が大きく、社員から見るとガチャ要素が強すぎる。コンプライアンスの統制がとれていない会社なのである。

ボーナス計算方法
ボーナスの支給算式

ボーナスは、複雑でわかりにくい計算式になっているが、業績連動方式で、2022年冬は2.7か月分(1人平均82万9千円)だった。1.5~3ヶ月×年2回で、年間5か月分前後で安定している。リーマンショック後の最悪期でも0.9ヶ月出ていたという。G1の間(学卒1~3年目)は、ボーナス年130万円ほどを含め、年収は450~500万円程度である。

年功序列的に、一律で4年目にG2、辞めずに残っている同期入社組の8割がたは10年目32歳でG3に昇格

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G3(30代)社員の給与明細。残業代は多めの部門である。

G3(30代)社員のボーナス明細

UL認証不正事件で降格29人、減給8人、けん責2人。コンプラ意識は低い会社である。

東レ・セグメント別売上(2023年3月期)

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