実は、オフィスを一覧するだけで、会社の体質やカルチャーは、かなり見えてくる。会社を選ぶ際には、外せないポイントだ。トヨタ自動車のように、トヨタ町の本社に一度も足を運ばないまま(のみならず名古屋市にも足を運ばず)採用が決まるケースもある会社もあるが、本社のオフィス風景を見ずして決めるべきではない。会議室、オフィスレイアウト、電話、紙、机、椅子…オフィスの風景を見てまわることができれば、見る眼さえあれば、かなりの程度まで、会社を理解することができる。以下、それぞれ解説していこう。
【Digest】
◇会議室の命名効果
◇構造改革に対応
◇フリーアドレス制、目的は経営側のコスト削減
◇背面対抗式の三菱商事
◇ペーパーフルな全日空、ケータイ電子決済の富士通
◇単独作業を許さない日本の新聞社
◇序列を見抜く
◇ぶち抜きワンフロアの効用
◇天井を見る
◇煙を見る
◇奇をてらった?「犬」や「バー」
◇会議室の命名効果 「イントラ上のスケジュール表に、“@ New York”と書いてあって、急に海外出張が入ったのかとビックリしましたよ」
日本IBMの、ある事業部長のセクレタリ(秘書)が、そう言って笑っていた。IBMはコンサル部門を強化するため、2002年にグローバル規模でPWCコンサルティングを買収。日本IBMのコンサル部門は、私も在籍していたPWCと統合され、協働することになった。
PWCの丸ビル(大手町)18階にある本社には、顧客を招く際にも利用する共用の会議室が十数個あるが、そのすべてに都市の名前がついている。Tokyo, London, Cairo, Paris…。
要するに、大手町で会議の予定が入ったというだけのことだったのだ。当の事業部長は「ウチは女性の名前をつけたろか。そしたら会議に行きたくなるやろ?」などと冗談を言っていた。
一般的な「1805会議室」のような数字の羅列よりは、「じゃあ、明日13時から、ホノルルで」と言われたほうが、少しはリラックスできる。少なくとも、一服の清涼剤にはなる(多少、むなしさも感じるが)。訪れた顧客には、センスの良さを感じさせられる。顧客志向のコンサルティング会社らしいところである。
会議室は、3面にプロジェクターでPC画面を映しつつ議論を進め、その場で決定事項も入力、合意する。紙資料は一切、使わないルールになっていた。会議は「報告」が目的ではなく「議論・決定」が目的であることも、徹底されていた。
実は、WEBの世界で快進撃を続けるグーグルも、東京オフィス(渋谷)の会議室には、「アフリカ」「ハワイ」などの地域名がつけられている。もともとは社員の発案だそうだ。
また、ソニー子会社で「VAIO」の設計部門から独立しソフトウェア開発を手掛けるソニーデジタルネットワークアプリケーションズ(SDNA)では、会議室に「屋久島」「松島」などの島の名前をつけている。この会社は「自由闊達な雰囲気」をうたっているが、それにも、なんとなく説得力を感じるから不思議だ。
◇構造改革に対応
上記3社は、コンサル、WEB広告、ソフト開発と業種は異なるが、いずれもモノ作り(ハード)とは異なり、目に見えないもの(ソフト)を売る仕事で、アイデアが勝敗を決する。会議室は重要な“生産拠点”であり、リラックスして高いモチベーションで活発に議論が交わされる場所でなければいけない。
産業構造改革が進むにつれ、会社は、労働(Labor)を行って「稼ぐ場」から、仕事(Work)を行う「知的生産の場」になりつつある。そこでは、楽しさ・ウィット・センスの要素も、必然的に求められてくる。構造変化に対応できない会社は、生き残れなくなるかもしれない。
一方で、伝統的な、大手町の本社内にある、番号とアルファベットの組み合わせで呼ばれるような薄汚い部屋で、部下に作らせた分厚い紙資料をめくりながら、管理職たちが、電子メールでも済むような「報告」会を行っている風景も、未だに多く見られる。
複数の社員によれば、その典型はNTTだ。「内容は、議論ではなく『通達』に近い。《何を言ったか》より、《誰が発言したか》が重要とされます」(NTT東日本中堅社員)。この傾向は、規制に保護された旧官業系(JR、ANA、JAL…)に共通して.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
