福利厚生の分類と各エリアの特徴
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あくまで報酬の一部であるが、福利厚生が無視できないのは、それが「税金や保険、年金がかからない報酬」だからだ。仮に同じ7万円が支給される場合、家賃補助として支払われる場合と、額面給与に含めて支払われる場合とでは、明らかに家賃補助のほうがお得だ。
【Digest】
■「ゼロ、または、ほぼ全廃」エリア
◇持ち家率が高い
■「気持ちだけある」エリア
◇カフェテリアプランの導入
◇朝飯まで削られる
◇資産売却進む都銀
◇削減進むNTTグループ
■「それなりに充実」エリア
◇月6万円の補助
◇IT企業なのに
■「特典いっぱい」エリア
◇専用スタバ、専用エレベーター、専用ジム…
◇インフラ産業の特権
◇社員が使い放題のマイル
■「わがまま言うな」エリア
◇選ばせてくれない
◇2人部屋の強要
■「独身寮だけ」エリア
◇ソニーとホンダは社宅なし
■「むしろマイナス」エリア
◇自社製品買いの強要
◇従業員の懐からカネをとる仕組み
◇いまどき4畳半の寮
額面で給与としてもらうと、そこから2~3割を天引きされ(『
額面、手取り、人件費、年収ランキング…これが本当の見方だ!』参照)、それらはほとんど戻ってこないため、実際には5万円程度に目減りしてしまう。年収700万円で試算すると、7万円の福利厚生は、約9万1千円の給与と同じ効果があるのである。
経団連が2006年1月に発表した福利厚生費調査(2004年度)の結果によれば、回答661社の法定外福利費の平均は、従業員1人あたり月28,266円で、その50.4%が住宅関連であった。古い寮や社宅などはすでに償却期間を終え、この数字に表れてこないことを考えると、やはり圧倒的に大きいのは住宅である。私は新聞社のサラリーマン時代、東京で9万円の家賃補助が出ていたが、これはかなり高いほうだ。年収750万円で試算すると、額面給与11万8千円に相当し、額面年収を140万円も押し上げる効果がある。
それは無料航空券などでも同じことで、チケットとして会社から支給されれば無税なので、所得税などを天引きされた後の手取り給与でチケットを買うのに比べ、何割も安い。私は福岡に住んでいた頃、知人のJAS(現JAL)社員から、半額割引チケットを譲ってもらい羽田に飛んだことが何度かあった。航空会社の社員は、そういう目に見えない福利厚生が充実しているのだ。これは、ばかにならない金額で、旅行好きにはありがたいだろう。
全体の流れとしては、キヤノンやソニーの家賃補助全廃に象徴されるように、国際競争が激しい業界を中心として、成果主義の流れのなかで、福利厚生は削られる傾向にある。いまどき豪華けんらんな宿舎を新築しているのは、世間知らずの国会議員くらいのものだ(2006年3月完成の赤坂の新議員宿舎は、相場50万円のところ議員の負担は約9万円だという)。
ここでは社員の立場からの実態を重視し、「現金など年収として支払われるもの以外」の、フリンジベネフィット(周辺の報酬)すべてを福利厚生と考える。月5万円相当が目安だ。さらに、次に重要な視点が、社員がそれを給与と同様に自由裁量で使えるのか、という「自由度」。いくら内容が高価でも、押し付けられたら効果半減であり、押し付けを拒否する社員は、さらに不公平感を持つ。これは無駄な投資なので、経営者はこの点をよく考えるべきである。
■「ゼロ、または、ほぼ全廃」エリア
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図2:福利厚生の分類における、各エリアの代表的な企業名 |
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そもそも最初からゼロだったり、全廃に踏み切った会社が、このエリア。成果主義を徹底する会社に多い。子供をたくさん作った人に手当てをたくさん出すという発想は、仕事の成果とは何の関係もない報酬なので、家族手当を全廃。同様に、一部の人だけに恩恵がある寮や社宅も、廃止。キヤノンやリクルートが全廃組で、ヤフーなど新興IT企業は、もともとゼロだ。
◇持ち家率が高い
キヤノンでは、2004年に寮が全廃され、ベースサラリーが引き上げられた。2002年には家族手当や住宅手当なども廃止済みだ。「もともと会長の終身雇用宣言を信じているのか、持ち家率が高い。50人以上の部で、既婚者で家を持っていない人は10人いないくらいですから」(中堅社員)
リクルートも住宅補助や家族手当といった福利厚生は、1999年に全廃済み。2005年から半期年俸制の成果主義に移行しており、労組も結成されていないため、ほとんど外資系のノリだ。
マイクロソフト社員の間で、「社内で唯一の福利厚生」と言われているのが、無料の紙コップジュースと、50円の缶ジュース。ほかには、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
