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「世界のトヨタは全面解決の決断を!」 東京大気汚染訴訟 患者ら1千人、東京本社を包囲

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「トヨタは公害被害者に謝罪と賠償をしろ」と訴える東京大気汚染訴訟の原告ら約1000名がトヨタ自動車東京本社前で座り込んだ(3月16日)。「利益を被害補償にまわしてほしい」と主張している。
 3月16日、トヨタ自動車東京本社を約1000人の公害患者らが包囲する「あおぞら総行動」が行われた。自動車の排ガスで喘息や慢性気管支炎になったとして自動車メーカー7社や国などを訴えている東京大気汚染訴訟の原告団と支援者が、謝罪と一時金の支払いを改めて訴えた。「一歩前進」(繁野義雄副団長)とは言うものの明確な回答は得られず。原告に、マスコミでは報じられない被害者の実情を聞いた。


◇原告633人中109人が死亡
 東京では観測史上もっとも遅い初雪となった3月16日。この日は、東京高裁の和解勧告を受け、原告団がトヨタ自動車らに対し謝罪と賠償金の支払いを要求した回答期限の日だった。

 朝10時30分、交渉が行なわれるトヨタ自動車東京本社前に行くと、大勢の人が座り込んでいた。主催者発表で約1000人というのも決して大げさではなく、表通りの歩道にはスペースがないため、脇の道にまで大勢の人があふれ返っていた。

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633人の原告のうち、すでに109人が亡くなっている。座り込みをする人は、高齢者が多い。
トヨタ本社前に集まった1000人のうち約600人がパレード。「私の青空」の曲を流し続けて沿道の人びとに訴える。「世界のトヨタ、環境のトヨタは被害者に謝罪と賠償をすべきです」と繰り返し、訴えて歩いた。
 座り込む人は、高齢者が多い。毛布に包まりながら、じっと目を閉じている老人、鼻に透明なチューブを差し込んで酸素を吸入している人。周囲の歩道は、一見して痛々しく見える人びとで、埋め尽くされていた。

 108名死亡「トヨタは公害患者に謝罪と賠償をしろ!」 東京大気汚染訴訟原告が東京本社前で座り込みでは、原告633人のうち、108人が亡くなっていると報じたが、この日までにさらに1名が亡くなり、死亡者は109名になった。

 東京大気汚染訴訟は、日本有数の大型公害裁判であり、すでに多くの犠牲者が出ている。しかも、今後の公害被害者救済制度や環境行政、あるいは自動車メーカーの企業責任を考えても、きわめて重要な裁判である。

 にもかかわらず、これまでのマスコミの取り扱いは小さい。

 「しんぶん赤旗」が継続的に取材を続けているものの、同紙はあくまでも政党機関紙。一般のジャーナリズムでこの問題を長期的に追っているところは皆無だ。
 
 今回の「あおぞら総行動」では、トヨタ自動車と同時に日産自動車に対する交渉も行い、企業側が和解金の支払いに向けて前向きな姿勢を示したことで、朝日・毎日・読売などが記事を掲載した。

 特に朝日新聞は一面で報じた。これ自体は評価すべきだろうが、記事内容は裁判の流れと和解交渉のポイントの説明である。残念ながら、長期間にわたり肉体的精神的に苦しみ、生活破綻をきたした被害者の生の声はなかった。

◇一審は国・都・公団に7,920万円の支払い命令
 ここで、あらためて、この公害訴訟の概略と経緯をまとめてみる。

 自動車排ガス汚染が原因でぜんそくや呼吸器関連の病気になったとして、1996年5月、99人の患者が、国・東京都・旧首都高速道路公団(現首都高速道路株式会社)・自動車メーカー7社(トヨタ自動車・日産自動車・三菱自動車・いすゞ自動車・日野自動車・日産ディーゼル工業・マツダ)を相手取って、総額約22億3800万円の損害賠償や汚染物質排出の差し止めなどを求めた裁判を、「東京大気汚染訴訟」と呼ぶ。

 2002年10月の東京地裁の判決では、道路端から約50mまでに居住するなどにより気管支ぜんそくを発症、悪化した7名について被告の国・都・公団に損害賠償責任を認め、計7,920万円の支払いを命じた。

 しかし自動車メーカーの責任、汚染物質の差止めについては認めなかった。

 一審判決後に東京都は控訴を断念したため、被告は国・首都高・自動車メーカーだけになっている。昨年9月に東京高裁が解決勧告を出したため、現在は原告団がメーカーや国などと交渉をしている。

 すでに控訴を断念している東京都は、昨年11月、医療費救済助成制度の導入を提唱。東京都の提案によるとその原資は、3分の1が国、3分の1が東京都、メーカーが6分の1、公団が6分の1である。しかし、控訴している国は「お金を払わない」と言っている。

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東京の大気汚染マップの前に集まった裁判の原告たち。
(下)は、東京の大気汚染を各地で測定し、人目でわかるようにした地図。東京の喘息患者は20万人とも50万人とも言われるが、とくに中学生以下の子どもの喘息が増えている。
 自動車メーカーは、謝罪と賠償金の支払いは拒否しているが、この助成制度に関しては前向きの姿勢を示している。しかし、原告のひとりによると「東京都の提案では、気管支せんぞくの患者のみを対象にするとしていますので、慢性気管支炎と診断されている患者は対象になりません」と言う。

 そうなれば、多くの被害者が医療費で丸裸にされているのだから、自動車メーカーに対して謝罪と医療費に相当する賠償金の支払いを要求するしか、まともに生活していく術がない。

◇酸素吸入器だけで年120万円
 原告のひとり初山彰一さんは、元オイルライターメーカーの社長だった。排気ガスで慢性気管支炎になり、会社をたたみ、治療に専念した。しかしいっこうに健康は回復せず、治療費がかさんで生活破綻をきたしてしまった。

 途中、離婚もし、現在は生活保護を受けて生活している。

 「私は生活保護を受けて医療費が無料です。ただ、一定程度収入のある患者は大変です。たとえば、酸素を吸入する機械だけで月に9万9,000円、年間にして約120万円。治療代だけで消えてしまいます。原告は高齢者も多く、これからどんどん年老いて、いろいろな病気を併発する」(初山さん)

 多くの患者が生活の苦しさを訴えているが、身体そのもののつらさと精神の葛藤もまた、すさまじい。

◇自宅隣では何十台もの清掃車がアイドリングを
 「あおぞら総行動」当日、朝から夕方まで行動に参加した原告団の石川牧子事務局長(50歳)も、その一人だ。気管支喘息に悩まされた29年間を語ってくれた。
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原告団の石川牧子事務局長(中央)。

 私は、東京西部の三多摩で暮らしていました。このあたりは東京でも比較的空気がきれいと言われていますが、家のすぐそばを新青梅街道が通り、隣は市の清掃車の駐車場でした。

 夜はトラックがゴウゴウ通り、朝は何十台もの清掃車が出発前のアイドリングを長時間するという環境の中で暮らしていました。 

 気管支ぜん息と告げられたのは20歳を過ぎた頃でした。当時の私はぜん息という病気の知識がまったくなかったので、発作が起きるたびにその苦しさと息の出来ない恐ろしさにパニックになり、ヒイヒイと泣いては家族に背中をさすってもらいました。

 けれど発作は段々重くなり、救急車で行って入院することも多くなっていました。発作が起きると身動きひとつ出来なくなり、まだ若かった私は、トイレの世話をしてもらうのが死ぬほど恥ずかしかった。それでもまだ当時は、いつかこの病気も治ると思っていたので、一緒に病気を治そうと言ってくれた夫の言葉に勇気づけられて、数年後に結婚しました。

 しかし一向に病状は良くならず、夫は看病と入院費の支払いに追われ、疲れ果てていました。そんな状態にもかかわらず妊娠した私は、周囲の反対をよそに子どもを産む決心をしました。何もできず、自信をなくしていた私には、自分を強くするために命と引き換えてでも、子どもを産みたかったのです。
◇娘が4カ月のときに大発作
 私は病院をたらい回しにされながらも、なんとか子どもを産むことができましたが、本当の苦しみはここから始まりました。

 生まれた娘が4カ月のときに大きな発作を起こし、長期の入院をしました。まだお乳を飲んでいる子どもが母親と離れるということが、どれほど切ないことか、その時まで私は知らなかったのです。

 死ぬより辛いと言う言葉がありますが、この時の発作の苦しみと子どもと離れる悲しさは、まさにそうでした。

 わたしはただ一つ動かすことのできる目を病室の窓に向け、家族が待つわが家があるあの窓の外へ、私はどんなことをしても帰らなくてはならないと思い、ステロイドの大量投与も甘んじてうけました。

 やっと子どもに会える日がきましたが、娘は私の顔を忘れていました。私はその言い知れぬ悲しさに声をあげて泣きました。
◇尿を垂れ流し、這いつくばる苦しさ
 どうしてこんな思いをしなくてはならないのだろう。どんな悪いことをしたと言うのだろうか、こんな人生しかないのなら生まれてこなければ良かった、と思うようになりました。

 しかしそれ以後も病状は悪くなるばかりで、発作が起きると血液中にガスが溜まり、意識が混濁して

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