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闘う労組「全トヨタ労働組合」委員長は語る(後編) CO2削減は建前、ゴミ箱にも思想統制見えるトヨタ

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闘う組合がビラを撒き始めると、会社はゴミ箱を各所に配置し、受け取った従業員からビラを奪って回収廃棄処分に。環境対策でトヨタ工場敷地内から撤去されていたゴミ箱が突然、現れた。
 トヨタ内に昨年結成された「全トヨタ労働組合」は、期間従業員・派遣社員も組合員になれる開かれた労組。ところが活動を広めようにも、敷地内でのビラ配りを禁じられ、さらに門外で配布すると会社は工場内をゴミ箱だらけにし、受け取った従業員からビラを取り上げて廃棄処分にするなど、子どものような対応をしてきた。既存組合の委員長は全員がトヨタ工業高等学園出身者で、高校時代から会社側のマインドコントロールを受け、本当の労組活動ができるはずもない。トヨタのカラクリについて、新組合の若月忠夫委員長が語った。

◇会社敷地内でビラ配り禁止、既存組合はOK
 僕ら(全トヨタ労働組合)は、きちんとした組合を結成して、もっと人間らしく働ける職場にしようと頑張っています。トヨタ本体だけでなく、下請けや孫請け企業の組合員、そもそも組合もないトヨタ関連会社の人、外国人、パート、期間工の人たちの生活も考えていきたい。

 ところが、僕らの組合活動は様々な制約を加えられています。トヨタ自動車をはじめとした各社は、隣国と変わらない思想統制をしますが、それは組合活動に対しても同じです。

僕らの組合の考えや活動内容を知ってもらうためには、機関紙やビラを配らなければなりません。ですが、既存のトヨタ自動車労組は自由にビラ撒きができるのに、私たちの組合だけ社内・工場敷地内でのビラ配りが禁止されているのです。撒こうとすると、会社は「構内では撒いてはならない。許可しない」と言います。ですから、しかたなく工場の門の外側でビラを撒いて訴えてるんですよ。

 しかも、私たちが機関紙やビラを配りはじめると、会社の人事と組合幹部が工場の外と中の二手に分かれ、業務を終えて出ようとする従業員と交代で、これから勤務する人たちに「ビラ配っているから取らないように」と耳打ちします。

それでもビラを受け取る人もいるのですが、そうすると会社と既存組合幹部が強圧的に取り上げようとします。

掲示板の設置も同じです。既存組合には認めるが我々には認めない。労働組合は認めるが社内での組合活動は認めないなど、めちゃくちゃです。これはあきらかに不当労働行為ではないかとわれわれは主張しているわけです。

 そんな中で、外部の人が聞いたら笑うような「事件」も起きています。
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「トヨタ総行動」に参加した全トヨタ労働組合の旗。

過労死従業員の遺族、孫受け企業、排気ガス公害患者ら約1,600人が今年は2月12日、愛知県豊田市のトヨタ自動車本社に向けてデモ行進した。今年は28回目になるが、大マスコミはほとんど伝えていない。
◇トヨタがゴミ箱だらけになるある日
 以前は、工場の入口には灰皿とゴミ箱が設置されていました。

 それが、いまゴミ減量の問題で、トヨタの各工場の入り口にかつてあったゴミ箱が撤去されています。「自分で持ち込んだゴミは自分で持ち帰りなさい」と会社は言うのです。会社の外で出たゴミは社内では処分しない。

 なぜかというと、燃焼させるのにエネルギーが必要だしCO2も出る。だからゴミを削減(社内の環境基準クリアーのため)せにゃいかん。持ち込んだゴミも含めて私物はすべて持ち帰らせているんです。

 ところが、これは建前。

 毎年2月に行なうトヨタ総行動という活動があります。トヨタ総行動とは、全労連傘下組合をはじめ、下請け孫請けなどトヨタ関連企業の従業員、大気汚染訴訟の原告などがともに行動し、トヨタ自動車にさまざまな改善を要求する運動です。(これまでに28回行なわれ、毎回1000人規模で本社などを包囲している)。

今年のトヨタ総行動(2月12日)でも、我々は、トヨタ本社等でビラを配り、昼からは集会をしてデモをしました。

 そうすると、会社の人事の人が監視していて、「来るぞ、来るぞ」と私たちを待ち構えているのです。

 そして、主要な工場の敷地外でビラを配ったのですが、会社はゴミ減量と称して工場内外から軒並みゴミ箱を撤去していたのに、私たちがビラを撒き始める前からダンボール箱等でゴミ箱をつくって、あちこちに配置したんです。右上の写真は、元町工場の入り口の前に設置されたビラ回収箱です。本社では、ダンボール箱で回収していました。

 ビラを受け取った人に対して会社が、「そこに入れろ」と臨時のゴミ箱にビラを入れさせるんですよ。あるいは受け取った人から取り上げたりね。

 「会社は、私物のゴミは持ち帰りなさいといっているに、なんでゴミ箱を置いてビラを回収するんですか?」と僕らは詰め寄りました。明らかに回収するのは矛盾しています。

■トヨタ本社を1600人が包囲 過労死、賃金抑制、大気汚染で
◇儲かっているのにベースアップ要求さえしない組合
 まっとうな組合活動をしなければならないと思ったのは、40代の社員が会社に追い詰められて首吊り自殺してしまった事件だと、すでにお話しました。

■闘う労組「全トヨタ労働組合」委員長は語る(前編) 「結成のきっかけは40代社員の首吊り自殺でした」

 その後、新組合結成へ具体的に動き始めたのは、既存組合がベースアップを要求すらせず、労組の存在意義に疑問を感じたからです。

 2002年度にトヨタ自動車労働組合(既存の組合)は1,000円のベースアップを要求しましたが、トヨタ自動車は拒否しました。(グループ各社も追随)。

 03年、04年、05年度と労働組合がベースアップを要求せず、結局4年間はベースアップゼロだったんですよ。労働組合が3年間も要求しなかったという歴史的な出来事があったんですね。

 これが決定的でした。企業業績が伸び、企業の利益も伸びているのに労働組合が組合員の言葉に耳を傾けず、ベースアップすら要求しない。これは労働組合の存在が疑われました。

 もちろんそれだけじゃないですよ。かつて組合員のための労働組合という意識を私は持っていた。でも今は組合員だけでなく労働者のための労働組合が必要だと思っています。

 労働組合に入りたくても入れない非正規雇用者が増えていますからね。彼らを抜きにして労働組合運動はあり得ない。全労働者のことを考えなければならないというのが今の視点ですね。雇用や生活不安定の人達が増えるということは、社会として大きな損失なんですよ。
◇新組合結成をトヨタは「重要問題の発生」 
 去年(2006年)組合結成後、人事部企画室の主導で、緊急SAMIT(サミット)というものが行なわれました。

 会社いわく「現場力」が落ちている=コミュニケーション不足だということです。このサミットでは、(1)部長・総務室長と人事部の懇談会 (2)部内基幹職等への説明会(3)各グループ・各組でのミーティングが行なわれます。

 この「緊急SAMIT」に関して人事部企画課が出している資料には、課題が出ている。この中にある「心のやまい」は、デンソーの損害賠償問題(後述)を意識したもの。「コンプライアンス」「サービス残業」の摘発問題、「品質欠陥車問題」などと列挙されています。「重要問題の発生」と書かれているのは、私たちの全トヨタ労働組合ができたことを意識してのことだと思います。

 基本的に、「緊急SAMIT」の意図するところは、「重要問題の発生」=私たちの組合結成に向けての対処なのでしょう。このような点でもトヨタは、ずば抜けているんです。危機管理への対応のシステムができている。

 私たちの組合ができたことも「危機」だと。

 現在は組合員15名。関連企業の正社員、組合のない小企業、非正規、OBも加入しています。トヨタ自動車労働組合のメンバーで辞めて、こちらに来た人もいます。私たちの組合は間口が広いですから。
◇既存組合による中傷ビラは配布自由
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トヨタ自動車労働組合(御用組合)による中傷ビラ。全ト・ユニオン若月委員長は「会社がやると不当労働行為になるので、既存の組合にやらせているのだと思う」と指摘している。
 私たちの組合に対して既存の労働組合は、中傷ビラを撒いています。ここにあるのは、2回目のビラです(左記画像参照)。

 太字で「新たに当該組合が、私たちの仲間であるトヨタ労組の組合員(更に1名)を巧みに勧誘し、当該組合に加入させた」と書いている。

 巧みになんてしてませんよ(笑)。

 組合と会社が常に一体となって危機感をもって行動に移している。

 また、このビラには「同じトヨタで働く期間従業員、派遣社員の皆さんも含めた勧誘活動を進めるなど、私たちの会社生活、地域生活を脅かす様々な活動を行ってくる事が考えられます」とある。

 これは逆に評価してもらわなきゃ困る。正社員より苦しい立場に追い込まれている「期間従業員・派遣社員のみなさん」にこそ手を差し伸べなければならないのに、自分たちが組織できない人を私たちが組織しているのに、

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(上)日本の真正労働組合「全トヨタ労働組合」の若月忠夫委員長とフィリピンの真正労働組合「フィリピントヨタ労働組合(TMPCWA)のエド・クベロ委員長(下)フィリピントヨタの大量解雇に反対するフィリピンの労働組合問題でも、全ト・ユニオンは抗議と要望書を出している。

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すげぇ2008/02/01 02:50
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