■「Hiroko Uchino & Tadao Wakatsuki, "Karoshi & Compensation"」。
12月5日、日本外国特派員協会で行われた記者会見。内野博子さんと若月忠夫さん(全トヨタ労働組合委員長)
|
トヨタで亡くなった夫の労災認定の裁判で勝訴した内野博子さんと、会社や“御用”組合と闘ってきた「全トヨタ労働組合」委員長の若月忠夫さんが12月5日、日本外国特派員協会で世界にアピールした。外国人ジャーナリストの関心は「karoshi(過労死)」。広告料日本一の圧力と国内メディアの沈黙への疑問があがったほか、トヨタが控訴断念要望書の受け取りを拒否したことなど、冷たい対応に終始していることが分かった。記者会見映像付き(会員限定、撮影:三宅勝久)。
【Digest】
◇トヨタ「訴訟にコメントする立場にない」
◇「名古屋の自動車メーカー」と小さな扱い
◇生産拡大で状況はむしろ悪化
◇国が控訴せず、判決確定をアピール
「判決の当事者ではないとして、まともなコメントをせず、控訴しないようにとの要望書も受け取ろうとしなかったトヨタ自動車の態度は、とても冷たいと思いました」
過労死で2002年に夫を亡くした内野博子さん(36歳)の訥々とした語り口に、会場を埋め尽くした数十人の外国特派員たちは、思わずじっと聞き入っていく。
12月5日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で、内野さんは記者会見し、11月30日に名古屋地方裁判所が下した、過労死を認める判決(詳しくは、トヨタで過労死認定、無報酬の"自主活動"も業務、「トヨタの常識」崩れた判決)を、豊田労働基準監督署やトヨタ側が受け入れ、12月14日の期限までに控訴しないようにと、改めて訴えた。
会見には、内野さんの裁判を支援してきた全トヨタ労働組合委員長の若月忠夫さんも同席し、労働組合の立場から、「現実のトヨタは(労働環境を)何も変えようとはしていない。生産拡大によって、状況はむしろ厳しくなっている」と、批判した。
|
内野さんは「国側が控訴せず、この判決が確定することを願っています」と訴えた。
|
|
◇トヨタ「訴訟にコメントする立場にない」 単にトヨタの事柄についての会見であれば、経済ネタとして流してしまうことも多い外国特派員も、「karoshi(過労死)」と聞けば俄然、関心を持つ、との声も、当日参加したジャーナリストのなかにあった。
それを示すかのように、次々と質問者の手が挙がった。確かに、労働組合があるにもかかわらず、会社の業務で社員が死に追いやられるなどという事態は、欧米を中心とする外国特派員にとって、にわかには信じがたいだろう。
その核心を突く質問があった。
--豊田労基署の処分を取り消した判決について、「ご遺族と国の訴訟でコメントする立場にない」とした、トヨタ側の態度について、おふたり(内野さんと若月さん)はどう思いますか?
内野「トヨタは、(自らは)当事者ではないので、関係ないと言うつもりなのでしょうが、夫は、トヨタのために一生懸命働いて亡くなったのです。簡単に関係ないとは言い切れないはずです。
ただ、今回の判決で、サービス残業が業務と認められた意味は非常に大きいと思います。判決が確定すれば、それはトヨタが現状の労働環境の誤りを認めたことになりますから、もはや関係ないと言っていられなくなります。
今でもトヨタでは、サービス残業に苦しめられている人たちはたくさんいますが、会社組織とのしがらみのなかで、何も言えないでいる場合が多いと思います。今回の判決が、そうした人たちにとって、少しでも助けになればと思っています」
若月「トヨタは裁判の際に、豊田労基署側の証人として社員2人を出廷させているにもかかわらず、いざ判決が出ると、関係ないと主張する。そこにトヨタの驕りや傲慢さがうかがわれる」
常識的に考えて、トヨタ社員の過労死に関する判決について、はっきりとした意志表明ができないのは、そこに、トヨタにとって触れられたくない問題があるからだろう。
自動車業界に詳しいジャーナリストの井上学氏は「今回の判決は、トヨタはもちろんキヤノンも松下も含め日本の全製造業を根本から揺るがす内容を含んでいる。もし判決を認めれば、労務コストを極限まで削って、それを企業の利益に回してきた手法が、根本的に間違っていたことになるからだ。
それをごまかすために、必死に無関係だと言い張っているのだろう。残念ながら、それを指摘できる日本のメディアは一部を除けば、あまりにも少なかった。トヨタからの広告費に大きく経営を依存しているからだ」と、説明する。
◇「名古屋の自動車メーカー」と小さな扱い トヨタは、年間1000億円を超え、日本で最大の広告宣伝費をばらまく企業である。この数値は、2007年度でいえば、2位の松下電器産業、3位のホンダの広告費を200億円以上も上回る。
|
外国人ジャーナリストの関心は「karoshi(過労死)」。
|
|
会見では、この点についても質問があった。
--トヨタは日本で最も大きな広告主なので、全国紙もテレビも、悪いニュースについては報道したがらないというのは本当ですか?
内野「それは本当だと思います。地元(愛知県)の新聞には、トヨタにとって良いニュースばかりが載ります。私が豊田労基署を相手取って提訴をした際の記事でも、トヨタではなく、"名古屋の自動車メーカー"と記述され、小さな扱いとなりました。
また、ある雑誌記者に取材された時は、記者の方自身は掲載したかったにもかかわらず、編集長の意向でボツにされたそうです。後でその雑誌をみたら、裏表紙にトヨタの広告が入っていました。
また、以前、TBS系のテレビ番組の取材を受けた場合は、東京を含む全国では放映できず、結局、大阪方面でのみの放映となりました」
--トヨタは、日本のメディアの沈黙を、どのようにして金に変えているのですか?
内野「実は(トヨタでの)過労死はまれなケースではなく、私たちのほかにもたくさんあり、弁護士も相談を受けています。最近では、うつ病で自殺するケースも多い
.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
(上)内野さん、若月さんに質問する外国人ジャーナリスト。
(下)イタリアメディアの取材を受ける若月さん。
|
|
