田母神俊雄(たもがみ・としお)航空幕僚長。大型ヘリと高級ジェットを駆使して出張していたことがわかった。民間機で行かなかった本当の理由は何なのか(防衛省HPより)
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国の財政が逼迫するなか、燃料費高などを理由に09年度予算で前年比5割超増しの1799億円もの燃料費を概算要求した防衛省。そんな折、空自イラク派遣に対する名古屋高裁の違憲判決に対し「そんなの関係ねえ」と発言したことで知られる田母神俊雄・航空幕僚長が、今年4月の北海道視察で、大型ヘリとジェット機を独占的に使い、燃料を垂れ流すかのような贅沢な出張をしていたことが分かった。試算によれば、燃料費だけで70万円~100万円以上。地球温暖化も、暖房費高騰に苦しむ北国住民のことも、“将軍様”には「関係ねえ」のか。
【Digest】
◇大型ヘリ、ジェット機独り占めで出張
◇毎時ドラム缶10本の燃料が煙に?
◇燃料代は非課税70万~100万円也
◇「時間的制約」「警備上の理由」というが…
◇民間機とJRで行く春の北海道出張
◇要警備の最高司令官が、なぜビジネスホテルに?
◇「長官用の宿泊施設がない」という不思議な理由
◇宿泊費1万3300円支給。「領収書捨てた」
◇泊まった部屋の種類も「覚えていない」
◇巡視15分、訓示20分。そして「懇親会」へ
◇田母神訓示「誰かのために頑張れ」を解釈すると
◇大型ヘリ、ジェット機独り占めで出張
筆者の手元にあるのは、今年4月15日から16日にかけて田母神俊雄・空幕長が、北海道の空自根室分屯基地と、襟裳分屯基地を視察した際の計画などの関連文書である。情報公開請求によって入手した。
航空幕僚長とは、航空自衛隊のトップで防衛大臣を補佐する重要なポスト。田母神氏は今年4月の定例会見で、航空自衛隊のイラク空輸活動を違憲とした名古屋高裁判決について「純真な隊員には心を傷つけられた人もいるかもしれないが、私が心境を代弁すれば大多数は『そんなの関係ねえ』という状況だ」と発言した人物である。
両基地の巡察や訓話を行った模様で、「行動概要(基準)」と題された文書には次のとおり移動手段や日程が記されている(括弧内は時刻)。
【4月15日(火)】
市ヶ谷(0920)→回転翼機→(0940)入間基地(1000)→固定翼機→(1130)千歳基地・昼食含む(1230)→回転翼機→(1400)根室分屯基地(1700)→部隊車両→宿舎
【4月16日(水)】
宿舎→部隊車両→(0815)根室分屯基地(0830)→回転翼機
→(0940)襟裳分屯基地(1310)→回転翼機→(1355)千歳基地(1415)→固定翼機→(1555)入間基地(1615)→回転翼機→(1635)市ヶ谷
航空幕僚監部広報室によれば、回転翼機はCH47J大型双発輸送ヘリコプター、固定翼機はU-4機(右写真参照)。米国ガルフストリーム社製の約20人乗り高級ビジネスジェットを元にしたVIP仕様の人員輸送機だ。俳優のアーノルド=シュワルツネッガー氏も所有しているといわれる。
空幕長の出張は、これらの自衛隊機を駆使して行われていた。15日の午前9時すぎに市ヶ谷の防衛省をヘリで発ち、翌日午後4時半すぎ、防衛省にヘリで降り立つまで、完全に自衛隊機と自衛隊車両のパックツアーだ。
電車やモノレール、タクシー、民間機といった一般国民が使う乗り物は一度も使っていない。
しかも航空機はすべて特別便。つまり空幕長のために飛ばしている。CH47Jヘリは乗員を除いて55人が乗れる。U-4も19人が搭乗可能だ。その機体に空幕長と随行の自衛官ら2名~数名だけを乗せて飛んでいる。
ビジネスジェットや大型ヘリを独占使用とは、外資系大企業のCEOばりの絢爛豪華な出張である。
◇毎時ドラム缶10本の燃料が煙に?
折りしも国民は石油高であえいでいる。自衛隊も各地で訓練を自粛して節約をアピールしている。気になるのは空幕長出張に要した燃料の量だ。
1泊2日の日程を通して、空幕長を乗せたCH47J大型ヘリは5回飛んでいる。飛行時間にして約4時間。ジェット機のU-4は入間-千歳を1往復して同約3時間10分。これだけのフライトでどれほどの燃料を使うのか.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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今年4月15日-16日に行われた空幕長根室・襟裳出張の日程表。細かく検証していくと、民間機でも行動可能な部分が多々見受けられる。「警備」と「日程」の都合から自衛隊機だけで行動したという。 |
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50人以上乗れる大型ヘリと、20人乗りのジェット機にパイロットほか2人だけ乗って旅をしたことを示す輸送請求票(上)。ビジネスホテルに宿泊した空幕長には1万3300円の宿泊手当てと日当3000円が支払われているのだが、いくらの部屋に泊まったかは「覚えていない」という(下)
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出迎え、儀じょう、栄誉礼の要領を細かく書いた計画書(上)。くたくただったろう隊員を前に、田母神空幕長は「誰かのために頑張れ」と訓示した(下)。まるで〝俺のために頑張れ”といっているように聞こえてくるのだが…。
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