「押し紙」の墓場にあたる紙集積場。人目を避けてコンテナ型のトラックで運搬されることもある。「押し紙」は資源の無駄づかいにあたり、重大な環境問題でもある。
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「押し紙」問題の追及には、民族運動に携わる人々もかかわってきた。その典型が、1998年ごろから実施された、森敏行氏による「押し紙」調査だ。調査対象は、自身が4年間、店舗で新聞セールスを担当した読売新聞の販売会社「ユース」(全国で約百店を所有)。その内部資料を検証すると、芝浦店(東京・港区)で4600部のうち973部が「押し紙」だったことなど、既に十年前から公称と実売に大きな差が出ていることが分かった。
【Digest】
◇「押し紙」問題が“村社会”の外へ
◇森敏行氏による綿密な調査
◇膨大な数の「押し紙」写真
◇わたしの見解とユースの反論
◇「押し紙」問題が“村社会”の外へ
昨年の暮れに福岡県で、大量の「押し紙」を抱えるYCが次々と発覚して以来、「押し紙」問題に対する関心が一般住民の間でも急激に高まってきた。「押し紙」排除の運動も加速している。たとえば、「押し紙」問題に取り組んでいる弁護団(江上武幸弁護
士ら9名)が制作した「新聞社は押し紙をやめろ・販売店いじめをやめろ・環境破壊をやめろ!」の横断幕が、11月4日、販売店訴訟の開廷前に福岡地裁の門前集会で登場し、住民らが「押し紙」排除を訴えた。
また弁護団が制作したパンフレット、『「押し紙」を知っていますか?』は、10月末までに全国の約六〇〇団体に配布されたという。わたし自身も集会などで、不特定多数の人々にこのパンフレットを普及している。
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(写真上・中)破棄される「押し紙」。包装されているのは折込チラシ。(写真下)新聞の回収風景。
森氏の調査より。
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「押し紙」問題が、ようやく“村社会”の境界を超えて、一般市民の間へ浸透し始めたのである。
その背景に福岡の弁護団が果たしてきた役割があることは言うまでもない。しかし、あまり知られていないが、右派系の人々もかなり以前から「押し紙」問題に取り組んできた事実がある。いわば「押し紙」問題は、思想の枠を超えて、多くの団体や個人が重大視しているのだ。
それにもかかわらずマスコミや役所は、この問題にはあまり係わろうとはしない。黙殺の実態に迫る前に、まず、右派系の人々が展開してきた「押し紙」問題の追及を紹介しよう。
◇森敏行氏による綿密な調査
2008年の9月、わたしは「桜友政経研究会」という民族運動団体の会長を務める森敏行氏から新聞販売問題についての情報提供を受けた。
森氏は1998年から数年の間、
読売新聞の販売会社ユース
の「押し紙」を徹底的に調査した。この調査結果について考察すればするほど、新聞の闇が見えてくる。
調査を紹介する前に、ユースについて若干説明しておかなければならない。
ユースは読売新聞の販売会社である。全国で約100店の新聞販売店を経営している日本で最大規模の販売会社である。設立は1970年2月12日。会社の登記簿によると、事業の目的は次のようになっている。
1、株式会社読売新聞社の発行する日刊新聞及び出版物の販売
2、広告の企画、取次及び代理
3、日用雑貨類の販売
4、酒類小売業
5、古物の売買
6、前各号に付帯する一切の業務
ユースについて知るある新聞関係者が言う。
「新聞奨学生の出身者を中心に理想的な販売を実現しようというかけ声のもとで、設立された会社です。設立当初は読売本社が支援していましたが、現在は完全に独立しています」
さらに久松叔男社長については、
「もともと読売新聞の労政部にいたひとです。読売を退職してユースに入社したそうです」
と、話す。
森氏はユースの店舗で、4年のあいだ新聞セールスの仕事をしていた。1990年代のことである。そのためにどの店舗にどの程度の『押し紙』があるのかを把握していた。『押し紙』やチラシを回収車に積み込む作業を手伝ったこともあるという。あまりにも異常な実態を前に、退職後、内部告発に踏み切ったのである。
◇膨大な数の「押し紙」写真
森氏の調査はプロの取材チーム顔負けの綿密なものだった.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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森氏が残した調査メモの一部。
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折込チラシのスポンサーリストの例。元ユース社員が入手した資料より。
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