世界のマクドナルドも京都は染められず 屋上広告規制でさらに肩身狭く
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マクドナルド・西大路五条店では、屋上広告だけはなぜかケバい赤。今回の規制が施行されれば、間違いなく撤去の対象となる。 |
京都市によれば、条例で「けばけばしい色」はダメ、赤や黄色も避ける、となっており、赤はえび茶色に抑えられてきた。この11月には、さらに「看板などの屋外広告物による景観の悪化」などを理由に、市は新たな景観施策案を公表。食欲を誘うとされるケバい色で進出してきたマックも、日本の伝統を守る京都では大人しくするしかなさそうだ。
京都から屋上広告、点滅照明が消える日がやってくるかもしれない。京都市が11月24日、高さ、大きさ、色彩規制を強化した新たな景観施策案を公表したのだが、そこに、全面禁止などが盛り込まれているのだ。
その背景として、「京都市の市街地では,地域の町並みに不調和な建物の増加や京町家などの伝統的な建物の減少により,これまでの優れた歴史的な景観が失われつつあります。また,三方の山並みへの眺めなどが損なわれるとともに看板などの屋外広告物による景観の悪化も見られます。」といった「京都の景観の変容」を挙げている。
京都市民らに11月27日~12月28日まで意見を募った後、関連条例の制定・改正手続きなどを経て、2007年度早期の実施を目指している。すでに許可を受けている屋外広告物は許可期間を設け、それを過ぎたら撤去を求めていく。
◇違和感だらけの京都の看板の色
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京都市内のマクドナルド ■1段左から JR京都アスティ店/京都駅前店/烏丸五条店 ■2段左から 四条河原町店/四条寺町店/河原町三条店 ■3段左から 東山三条店/烏丸丸太町店/出町店 ■4段左から 百万遍店/京都円町店/西院駅前店 ■5段左から 西大路五条店/京都ファミリー店 ![]() |
まず目に付いたのはマクドナルド。アメリカンテイストの赤が、なんとも地味なえび茶色になっていた。コカ・コーラの赤も地味な赤だった。
赤いマクドナルドの看板に見慣れているせいか、えび茶色に黄色の看板を見て「なんだかまずそうだな~」と思い、京都御所近くにあった白地の看板を見て「高貴なところに、目立つ赤はダメなのかしら?」と思った。
パリのシャンゼリゼ大通に面したマクドナルドのMのロゴ文字は黄色でなく、金色だった。屋根の色も茶色系だった。
ファストフード、コンビニのあることがごく自然で、それに慣れてしまっているので、京都の色彩に違和感を持ったのかもしれない。
世界の、アメリカの“誇る”マクドナルドが、パリ、京都では違っているのはなぜか。きっと何らかの条例があるからだ。
そんな疑問をずっと持っていた。
◇「なぜ、看板の色がほかと違うんですか?」
京都市内のマクドナルド、コンビニなど何店舗かの店長やスタッフに、看板の色のことを聞いてみた(看板の色は、画像参照)。
まず、京都駅周辺。
「駅構内だから赤でいいんじゃないですか。よくわかりませんが……」(マクドナルド JR京都アスティ店・店長)
「景観のために茶色にしています」
--なぜ立て看板は赤なのに、表看板は茶色なんですか?
「あ、そうなんですか? いやー、わかりません」(マクドナルド 京都駅前店・スタッフ)
同じマクドナルドでも京都駅構内と構外では違っていた。
次に、京都の目抜き通りである四条河原町。
「私どもにはわかりません。東京本部に問い合わせてください」(マクドナルド四条河原町店・店長)
「東京本部がデザイン設計をしています。近年、各店舗の改築が進み、さまざまなデザインが用いられるようになりました。私たちにはなぜかわからないので、本部設計管理部に問い合わせてください」(マクドナルド 河原町三条店・店長)
店長クラスでも理由がわからないようだ。
一方、東山三条の店長は次のように答えた。
「茶色なのは景観のためだと思います。京都は茶色がほとんどですよ。どうして赤い店舗もあるのか、わかりません」(マクドナルド 東山三条店・店長
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京都のコンビニ ■1段左から ローソン八坂神社前店 ■2段左から ローソン京都駅前店/ローソン西院駅前店 ■3段左から ファミリーマート烏丸丸太町店/セブン-イレブン ■4段左から ampm烏丸七条店/デイリー河原町二条店 ![]() |
祇園、八坂神社の前のローソンの看板は水色ではなく濃紺。景観に配慮だとしたら、看板は目立たないようにすると思うのだが、わたしには濃紺のほうが目立っている気がする。
その目立った看板のローソンの店長は以下のように答えてくれた。
「普通のローソンは水色にピンク色なのですが、ここの看板が青いのは、景観に合わせました。ここは八坂神社の前で、祇園にあるので水色だと目立ちます。青色の方が似合うんじゃないでしょうか。本部の意向で観光地近くのローソンは青看板に変わりつつあります。現在、何店舗が青看板なのかはわかりません」(ローソン 八坂神社前店・店長)また、赤地を白に変えた看板がある。これは、地域によって違うのか、それとも企業ごとにばらばらに出しているからだろうか?
「ここは、本願寺前で風治区域に指定されていますから、白基調の看板です。詳しいことは大阪本部に問い合わせてください」(ampm 烏丸七条店・店長)
京都大学周辺の百万遍では、
「京都市内全店のモスは緑ではなく、白地に緑文字、紫のロゴマークです。(緑と白、どっちがいいですか?) どっちでもいいけど、白でいいんじゃないですか。京都の都市景観条例で決められているからね」(モスバーガー 百万遍店・店長)
商売で目立たせるにも、”京都流”に従わなくてはいけない。
景観条例で縛りがあるのはたしかだが、店長クラスに聞いても詳細がはっきりしないので、京都市の景観条例を調べてみた。
◇「けばけばしい印象を与える色」はNG
京都市では市域全体が広告物の規制区域になっている。
そのため、自由に広告物が出せる地域はない。その規制区域は5つに分かれていて、屋外広告物禁止地域、沿道型規制地域、伝統的な町並みが保存されている特別規制地区など、基準が細かく定められている。
広告物の種類ごとにさらに、高さ、面積、総量(広告面積の合計)、表示率(広告の割合)、形状、内容、意匠(色やデザイン)などの基準が細かくある。
今回、注目したのは意匠だ。
(f)「広告の意匠」
広告物の色やデザインについては,文章や数字で書かれた具体的な基準というものはありません。条例でもこの点に関しては「意匠がけばけばしい色彩又は過度の装飾でないこと」と抽象的な表現しかしていません。
そして、京都市が申請受付窓口でお願いしている点は以下の3つ。
1 特に景観の保全が必要な第1種地域・第2種地域・沿道第1種地域では広告の「地」の部分は白地を原則とし,周囲の景観との調和を配慮する。 2 第1種・第2種についで規制必要度の高い第3種地域又は第4種地域で高い位置にあるものについては,広告の「地」の色彩を全体の1/2程度に押さえる。 3 特に,赤・黄色を下地に用いる場合は,これらの色と補色関係にある色の使用を避ける。 |
■許可基準のくわしい内容
■京都のまちなみとの調和をめざした広告物の事例
「禁止広告物」として「けばけばしい印象を与える色」「建築物と不調和」「都市の美観・自然景観を害する」などが規制されている。
◇マクドナルドは目立つ、すばらしいデザイン?
京都市都市計画局都市景観部都市景観課広告物担当に聞いてみた。
TEL.075-222-3474
--どういう法律ですか?
「京都市市街地景観整備条例の中の京都市屋外広告物等に関する条例になります」
1954年(昭和31)に出来た条例で、1996年(平成8)に大幅改正されてより厳しくなった。このような広告物の条例は各自治体にもあるが、京都以外で色の制限が厳しい都市としてほかに金沢、奈良があると教えてもらった。
--守らなかったら、罰則があるんですか?
「守ってもらわないと(屋外広告物は)出せないので、罰則以前にまず許可が出ません」
--勝手に出した場合は?
「科料、罰金、懲役とあり
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■1段左から吉野屋西院駅前店/ガスト■2段左からJOMO/餃子の王将■3段左から三菱東京UFJ銀行/なか卯京都円町店■4段左からモスバーガー百万遍店/au
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読者コメント
袖看板自体を禁止すべきだと思う。
京都の姉妹都市であるボストンのマクドナルドは、京都よりももっと地味です。ほとんど発見できないくらい。
どこにでもあるマックですが、ゴキブリの落ちたシェイクを見て以来、行かなくなりましたね。
店長クラスでも分からないんじゃなくて、本部から勝手なこと言うなって通達がでているだけなんじゃ・・・?
パチンコ業界の規制は難しいですね(この業界固有の出自に関わる理由から、行政も強硬に出られない)。京都といえども同じ(というか、京都は結構多い筈)。
看板と言えば、何と言ってもパチンコ屋の電光。アレこそ規制して欲しいですね。
とかの色の合わせ方とか、十分に過去の日本人には色彩感覚があった。しかし、駅前のサラ金や英会話の看板はひどいね。これは、感覚というより、もう金の力に屈服しているからだと思う。
ふたつ下のコメントは、三つ下のコメントに対してつけた物です。日本人にそういう感覚が備わっているのならば、そもそもアメリカ的な看板自体でないですよ。あと、言葉の数や表現方法の違いで、話者のセンスはそう簡単に測れないと思いますが。。たとえば、マゼンダって日本語でなんて言います?
日本人に繊細な色彩感覚が無い、というのは不勉強な発言ですねー。無くなってきた、というなら分かるけど。色につけられた名前を調べてみな。
日本人に繊細な色彩感覚がないから、こんな統一感のない町並みが全国に広がっているんでしょう。当方、フランス在住ですが、確かに整然とした都市計画と、一部ではかなり厳しい建築規制がありますが、景観を乱すような看板や建築を自ら進んでやる人はいませんし、マックの赤と黄色の店舗も、町並みにしっくり来るような工夫をして建ててますよ。
は、規制してもらいたい。ギルトさんの意見に激しく賛成。もっと日本人の繊細な色彩感覚にあった、気の効いた看板を作ってみ。
全国的に規制をかけるべきだ。どこに行ってもこんなケバケバしい看板・風景とまるで合わない我侭だけで建てられた家ばかりでは心が荒むばかり。看板などが好きに建てられるのは許可された一部の商業区域のみでよい。
京都は大人の憩いや癒しの街だと言われており、私にもまだその良さがよくわかりませんが、外国人の観光客には、京都が日本で一番人気があるそうです。町並みの色の統一感に関しては、役所が規制する問題かどうか。。地域毎に使用目的や高さ制限はありますけどね。
総じて今の日本の町並みには統一感がない。突然派手な色のアパートが住宅街にあったりする。建てる側のセンスの問題だろう。
パリは、バーガーキングも地味な看板だな。確かに。京都には興味がない。
京都の景観規制については、多少やり過ぎな気がしますが、まあそういう地域もあって然るべきかな?という気もします。マックを食べるとパワーが出るので、時折食べています。某政党幹部のご子息の方もよく考えられてるね。と感心されていました。P.S.HB!toy.
おっしゃるとおり、シャンゼリゼのマックは、白地に金ですし、イスラム圏では、ポテトの油にラードを使わないなど、地域社会をちゃんと尊重した経営をしています。また、徹底した衛生管理は、外食産業の中では群を抜いています。メニュー自体が健康的かどうかは別問題ですが。。
とりあえず店長達も看板の色にさほど興味がないということが分かりました。
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