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11/28 2010
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 民間で働いたビジネスマンの実感としては常識であるが、それを民間で働いた経験がない学者の研究によって実証している。こういった「権威」は、改革の実行を後押しするためにプラス要素なので、どんどんこうした本が出されて売れたほうがよい。

置き換え効果=中高年労働者の雇用維持のために新卒採用が抑制されること。分かりずらい言葉だが、「市場原理のもとでは本来、採用されるべき若年労働者」が、「解雇されるべき中高年労働者」と置き換えられる、という意味。
 企業別データを用いた研究として太田(2002)を挙げておきたい。この研究では、愛知県下の企業に対する若年雇用に関するアンケート調査結果を用いている。そこでは、「貴社の現状として、中高年の雇用を維持するために若年新規採用を抑えていますか」という項目がある。(中略)回答企業の3分の1以上で中高年の雇用維持が若年新規採用の減少に結びついているとの認識を持っていた。しかも興味深いことに、企業規模が大きいほど「当てはまる」とする比率は高くなった。

 (中略)

 太田(2002)によって指摘された、労働組合がある企業で「置き換え効果」が強くなるという点は、野田(2002)によって裏付けられている。(中略)1991年から96年にかけて、新卒採用の抑制を実施した企業の特徴を回帰分析で調べたところ、労働組合の「上部団体加盟ダミー」がいくつかのケースでプラスの効果を持つことが分かった。


世代効果=学生が社会に出た時点の労働市場環境によって、世代別に現れる差。氷河期世代が辛酸をなめ続ける構造。

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メモ入りは14枚
 業績悪化→整理解雇四要件によって、中高年を中心とする余剰労働者を整理できない→置き換え効果によって、若年労働者が正社員として雇用されない、雇用されても給料が上がらない→世代効果がどんどん拡大。大企業や、労組の力が大きい企業ほど、その傾向が顕著。

 このように、既に問題の所在や構造は分かっているので、あとは解決策のアイデアと実行する政治家のリーダーシップの段階ということ。本書では、解決策については、

①人員削減をしやすくする(解雇要件の緩和)
②雇用保障の程度を少し緩めた正社員職を数多く作り出す(正社員の多様化)

を示している。ごく常識的であり、こうした方向性は普通の学者なら全員が合意するだろう。置き換えは健全でないし、世代間格差もよろしくないのは明白なのだから。

 以下は、私が「キャリアの教科書」で書いたものだが、「同一価値労働同一賃金」「均等待遇」へと、移行期間5年ほどを設けて、一気に移行すべき。去年の衆院選では民主党も一応、マニフェストに書いていたが、全くやるつもりはない。結局、最後は、政治のリーダーシップの問題だ。若者や日本の未来のために、連合利権を打ち破れるか、である。

 第三に、均等待遇の法制化。現状では、正社員と非正規社員の身分制度を、国が法律によって作り出している。正社員になれば無期限で、定年まで雇用が守られるのに対し、非正規社員は長くても数年の契約が終わると自由に切られてしまう。どちらも、雇用の安定性に対して同じ条件とすべきで、業績が悪化すれば、どちらも同じ条件で解雇されるし、同じ条件で失業給付や職業訓練を受けられるし、同じ年金制度に入れるようにすべきである。つまり、既存の正社員の解雇規制を緩和し、そのレベルに全労働者を一元化する。

 中小企業の社員は業績悪化で解雇されても割増し退職金などゼロが当たり前で、翌日からハローワーク通いとなる。いわゆる整理解雇の4要件を改め、中小企業の社員でも、大企業の社員でも、正規でも非正規でも、企業から等しく半年分程度の割増し退職金を貰えるよう権利として明記すべきだし、逆に企業側としても、人員過剰になったら半年分支払えば解雇できるよう、解雇の金銭的解決を法制化すべきである。

 国にそれを補助する財源はないから、企業自身が、払える体力があるうちに、自らの経営判断で、人員整理できるようにする。すると、従来型の正社員のイスが空くことで、あらゆる労働者が再チャレンジできるようになり、社会全体の人材の流動化が促進され、経済に活力が生まれる。正社員という概念をなくすことで、キャリア設計よりも正社員の椅子にしがみつくことを優先する人も、いなくなる。その前提として、国は同時に、失業時に再チャレンジしやすいような職業訓練+公的インターン支援、といったセーフティーネット整備も行わねばならない。


35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書
キャリアの教科書

 
16:55 11/28 2010 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(877)


11/20 2010
 取材協力して貰っている友人の浅野健太郎が主催する講演会があります。本を読んでみましたが、実績が圧倒的にすごいので、納得せざるをえない、という感じ。僕はボリビアの首都ラパスで高山病になりかけたことがある。その2倍の高さのところを、酸素ボンベなしで登るというのは超人的で、想像を絶する世界。限界を超えちゃった人と直接お話ができる機会は貴重かと思いますので、興味を持った人は是非。


【トップクライマー・小西浩文さん講演会】開催のお知らせ
~危機の時代に生き残る技術~

 世界に14座存在する8000メートル峰のうち、6座を無酸素で(酸素ボンベなしで)登頂し、今なお14座完全制覇を目指して活動中のトップクライマー・小西浩文さんの講演会を12月3日19時~文京シビックセンターにて開催いたします。

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小西さん著『勝ち残る!「腹力」トレーニング』
 入手できた資料でざっと計算したところ、20世紀半ば以降本格化した8000メートル峰への人類の挑戦者は延べ6,356人、そのうち死亡者は637人、なんと死亡率10.02%・・・。驚いてはいけません。この数字は酸素ボンベありでの登山です。

 酸素が平地の3分の1しかない7500メートル超の「デス・ゾーン」では9割以上の登山家が酸素ボンベを使用すると言われており、はっきりした数字はないのですが無酸素での死亡率は間違いなく跳ね上がるでしょう。そして小西さんの8000メートル峰への挑戦は既に18回・・・ということは死亡率が確実に200%を超えます。

 屈強な肉体を持つ選ばれし登山家でも確率的には2回死んでしまう、そんな神の領域と言われる場所に足を踏み入れ、奇跡の生還を続けてきたのが小西さんです。小西さんのホームページはこちら

近著:生き残る技術(講談社+α新書)、勝ち残る「腹力」トレーニング(講談社+α新書)

 最近ではチリの落盤事故での全員の救出劇に対して、テレビ朝日「ワイド!スクランブル」に生出演した他、日経新聞をはじめ各媒体に対し、危機を乗り越えるためのリーダーのあり方についてコメントを出しています。

 今回の講演では、小西さんの挑戦の足跡を振り返りつつ、限界を超える技術、失敗を繰り返さない技術、限界を超えるチームとリーダー、自分が限界を超えなければ運も開けない、心に限界はない・・・などなど、熱く熱く語っていただきます。

 出口の見えない不況、相変わらず先進国でもトップクラスの自殺率の日本。そんな危機の時代を力強く生き抜くためのヒントを、多くのビジネスパーソン、経営者、そして一般の方々につかんでいただければと思います。奮ってご参加ください。

【トップクライマー・小西浩文さん講演会】
~危機の時代に生き残る技術~
場所:文京シビックセンター

日時:12月3日19時~21時(質疑応答含む。受付は18時半より。講演開始前と終了後短時間ではありますが参加者同士の名刺交換タイムも設ける予定です。)

定員:90名

事務局:株式会社ライフ・ストラテジー

料金:5,000円(当日お支払いでご参加の方は6,000円)

お申込み方法:asano@lifestratety.co.jp
上記アドレスへ必要事項を記ご入の後、下記銀行口座へ11月26日までにお振り込みください。お振込みの際の手数料はお客様負担となります。その後事務局からご招待メール(文京シビックセンター内の会場施設名や当日の緊急連絡先など記載)をお送りし、お申込みが完了いたします。

当日はそのご招待メールをプリントアウトしてご持参ください。なお、定員を超え次第お申し込み受け付け終了とさせていただきますので、お早目のお手続きをお願いいたします。

※講演会終了後21時半頃より付近の居酒屋にて、小西さんを囲み懇親会を開催いたします。講演会お申し込みの際に参加か否かを申告ください。こちらは3,500円~4,000円程度の実費を当日払いとなります。

お名前:
フリガナ:
メールアドレス:
懇親会への出欠:
(以上必須事項)
年齢:
ご職業:

三菱東京UFJ銀行品川駅前支店 普通口座
0101008 カブシキガイシヤ ライフ ストラテジー

 
02:31 11/20 2010 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(537)


11/12 2010
 イギリスの学生が暴動やってる報道をテレビでみて、次の政権(3年後)の日本の姿なのかな、と思う一方、はたして日本で暴動は起こるのだろうか、と考えてしまった。

 イギリスのキャメロン政権は今、GDP比でいえば日本の3分の1くらいしか借金がないのに(2009年で英国70%に対し日本210%)、財政再建を頑張っている。年金支給は66歳からになるし、5年以内に公務員を49万人も減らす。

 大学の補助金も大幅に減らす。それで、授業料が3000ポンド(約40万円)から、9000ポンド(120万円)に引き上げられるというので、暴動が起きたそうだ。

 日本は国債を発行して未来の国民にツケを回す行為がそろそろ限界なので、次のみんなの党を中心とする政権がババを抜く形で、キャメロン並みのことをやらなきゃいけない。

 助成金の類は全てカットされるだろう。でも日本では学費を自分で払うケースは少数派で、ほぼ親が払うのが常識化している。だから、学生自身が値上げ分をダイレクトに稼がなければならないわけではない。

 そもそも日本の学生が暴動を起こしてガラスを割りまくるような姿を私は見たことがないし、それは全共闘の時代の歴史の世界でしかない。そのくらい今の若者は元気がない。僕は、20代が青臭い主張で理想を掲げて突進するのは若者の特権だと自覚していたから、会社とケンカしたし、裁判やったりもした。

 でも、今の若者にそういう気概や空気はまったく感じられない。いったいどこまで締め上げられたら暴動を起こすのだろうか。若者の失業率がスペインのように40%くらいになって、韓国のように職がある人も過半数が非正規になって、消費税が20%くらいに上がっても、まだ我慢している気がする。

 相談窓口の設置や検討部会の設置、企業への採用補助金がめくらましに過ぎないことに気づき、均等待遇や解雇規制をタブー視するマスコミ報道に気づいてもなお、座して死を待つような気がする。

 おそらく湯浅誠と雨宮カリンがなぜか最大の敵である「連合」と一緒になって平和的なデモ行進を続けるのだろうが、40代以上の中高年は、それを見て、逆に安心するだろう。「湯浅、雨宮、ガス抜きご苦労!ガンバレよ!」と。

 僕は、若年労働者の最大の敵が連合であることに気づき、湯浅雨宮系の職業アクティビストから離脱したうえで団結し、国会に乗り込んで機動隊に石を投げるくらいでないと、世代間格差問題は解決に向かわないと思う。出でよ、リーダー。

 
14:26 11/17 2010 | 固定リンク | コメント(10) | アクセス数(1590)


11/06 2010
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 数年前から、出張先のホテルなどで読売新聞がドサっと入ったラックが目に付くようになった。無料で勝手に持っていってよい、というものだ。販売店がノルマを課されて読売新聞社から押し売りされ、処分に困った「押し紙」を無料サービスで提供していたのだ。

 しかし、それでも誰も持っていかずに、いつ見ても、どっさりと1メートルくらい積んだまま。ついに『東京ヘッドライン』の仲間入りかと思いきや、次の手段に出ていた。

 よほど人気がないのだろう、ついにファミレスで1部ずつ配り始めたのだ。『ジョナサン』で机に案内されると、既に1部がメニューの隣に置かれているのだった。全ての机に1部ずつ強制配布である。

 これならラックに入ったまま捨てられることはないが、それでもほとんどの人が手も触れずに無視だった。新聞には紙が貼ってあり、「これは試読紙である、持ち帰ってもよいです、さらに1週間無料で宅配もします、契約してください」といったコメントが書いてある。

 押し紙を再生紙工場への直行で捨てるよりも、キャンペーンの一環で無料配布しているという体裁をとっておけば、良心が痛まなくて済むのだろう。

 かつて、10年ほど前まで、『デニーズ』には新聞ラックがあり、130円を自分で入れて買ったものだった。いまや、誰も買わないものだから、強制配布を始めた。しかし、タダでも手にとられない代物になってしまった。

 間もなく、試読期間が1年になり、2年になり、事実上のフリーペーパーになっていくだろう。それでも、部数が出ていれば広告収入がいくらかは入ってくる。そのうえ、習慣の呪縛から逃れられない『団塊の世代』を中心とする年寄り連中は、しっかり月極の定価を払い続けてくれる。

 ぱっと見、文字が大きすぎて、まるで小学生の教科書だ。こんな子供騙しの印刷物、若い人は読まないよ。でも団塊の世代はあと20年くらい生きるから、読売も縮小均衡しながらリストラ、リストラ、で、余命20年は持つ、ということだ。

 30代以下の読売社員は残念ながら逃げきれないと思う。早く脱出を。

「まだ新聞読んでるの?」トップページへ

 
17:58 11/06 2010 | 固定リンク | コメント(6) | アクセス数(1116)


11/03 2010
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『日経ビジネス』第1563号(2010.10.25)
 『週刊ダイヤモンド』が特集を組んでいた解雇規制解禁問題について、意外にも『日経ビジネス』が岩瀬大輔氏の提言として載せていた。内容はごく常識的なもので論理的思考力があれば誰でも行き着く唯一の結論なのだが、マスコミは自分らが解雇されることを恐れてタブーとしてきた。

 記事の掲載権を持つデスククラス以上は40代・50代だから、真っ先に解雇の対象者になりうるためである。そこで「触らぬ神に祟りなし」になっていた。

 最近、議論の遡上に載せ始めたのは、新卒で就職できない人の数が増えつつあるのは確かなので、このあたりでガス抜きしとくか、くらいの感覚だろう。
大学就職率、過去2番目の低さ
 今春の大学新卒者の就職率(4月1日現在)は91・8%と前年同期に比べ3・9ポイント減少したことが21日、厚生労働省と文部科学省の調査で分かった。調査を始めた平成8年度以降、「就職氷河期」といわれ過去最低だった平成11年度の91・8%に次ぐ低さで、同時期の下げ幅としては過去最大。高校生の就職内定率(3月末現在)も2年連続で下落し、前年同期比1・6ポイント減の91・6%となった。(2010.5.21産経ニュース)

 この問題を解決するには、既得権を持つ40代50代の正社員を解雇してイスを空けさせるしかない。年収1000万円でろくに成果をあげない社員を1人カットして年収500万円の20代を2人雇うほうが企業にとっても、国の未来にとっても、日本経済にとってもよいことだらけなのだ。

 この置き換え比率が、たとえ1:2ではなく1:1.5でも、雇用は増える。失業率は改善する。1:1であっても、少なくとも若者に未来を与えることはできる。

 1:0、つまりリストラだけするとなると、リストラされた人は必死になって起業したり仕事を探すから、産業構造の改革が進む。職歴がなくスキルもない学生よりも、直近まで職があった人のほうが、その経験を生かした仕事を得やすいし、家族がいるなどの理由から、差し迫った必要性も高い。

 今なら、介護など人手が足りない分野に人材が流れるだろう。新聞記者が解雇されれば、過去50年間、新しい新聞テレビが誕生しなかった規制経済の日本においても、米国のようにネット新聞が次々に生まれるだろう。いずれにせよ、絶対に緩和したほうがプラス要素が多い規制なのだ。もちろん新しい仕事を得るための支援は、政府がセーフティーネットとして充実させることが前提となる。

 現状では、解雇規制が厳しいおかげで、企業は、仕事がないのに無理やり仕事を作るようなことまでしなきゃいけない。社内ケインズ政策を強制されている。何をやらせても仕事ができない人にも、1千万円払い続けなきゃいけない。降格すら難しいからだ。

 そのため、会社の外に「より適した仕事」がある人まで、ゴネてたほうがラクだから、社内に定年まで居座ってしまう。それが易きに流れる人間の弱さだ。そして不良債権を抱え込まされ続ける企業は、国際競争力を落とし、ますます新卒を採用しなくなる。まさに、全員が不幸な仕組みなのだ。そして、そのゴネの親玉が民主党政権最大のスポンサー、「連合」である。

 この問題は、平時に民主的な手続きを踏もうとすると、絶対に解決しない。若者の失業率の高さは、何も日本だけの問題ではなく、まだまだ日本などかわいいものだからだ。欧州の若者のほうが、日本よりもデモなどで政治力が強いが、それでも改善されない。

 ましてや、ヨーロッパと比べて大人しい日本の若者は、少なくともヨーロッパ平均の失業率(20%)を超えない限りは動き出さないだろう。それまで、搾取されるだけされ続けるわけである。

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2010.67-613「Bloomberg Businessweek」

 

 なにしろ、新卒で92%がまだまだ就職できている。最近、さまざまな不満から若者を中心に暴動が起きている中国は70%、英国は15%だそうだから、日本で若者が動き出すとしても、はるか遠い先になる。

 若者が暴動を起こす以外で、解決の道はあるのかというと、これはほとんどありえない。民主的な手続きを踏んでマジョリティーの既得権を奪うことは多数決主義の民主国家では不可能に近い。

 民主主義は多数決→多数の既得権を奪う決議は独裁でしかありえない。これは民主主義のパラドックスである。だから、先の代表選では、若者が多いネット上では小沢待望論が高まったわけだ。「小沢なら強力で独裁的なリーダーシップを発揮し、多数の既得権を壊してくれるのではないか」という期待感からだ。

 菅は小沢より民主的で、小沢よりもみんなの話を聞くから、改革できるわけがない。なにしろ、有権者のマジョリティーは正社員なのだ。

 民主主義は多数決主義であるがゆえに、マジョリティーの既得権を奪うことはできない。これがヨーロッパ各国が歩んだ道で、長い歴史を持つ民主主義国であるフランスでさえ、そうなのだ。日本がブレイクスルーできるはずがない。

 消費税については、まだ希望がある。確かに有権者全員の既得権にかかわるが、ゼロサムゲームではないからだ。つまり、財政破綻してハイパーインフレになれば年金受給額も目減りする。だから税率引き上げも、自分のためになる。しかし、解雇規制については、完全な世代間闘争。

 父親が、自分が失業する代わりに、失業中の息子に職を与える、という選択をするだろうか?絶対にしない。自分が稼いで息子を養っていないと、自分が相手にされなくなるからだ。家庭内ですらそうなのだから、国全体でできるはずがない。だから、この国の息子は、親のスネを骨の髄までしゃぶり続けるしかない。それが父親の選択なのだから。

 解決できるとすれば、支持率の高い小泉政権が最後のチャンスだった。郵政選挙では、(製造業派遣解禁などで)自分の既得権を奪われることになる20代の都市の若者までが、その意味もよく分からないまま熱狂し、小泉に投票していた。ヒトラー的な独裁人気があった。だから、小泉なら、できえた。もはや、あれほどの独裁リーダーは生まれないだろう。だから解雇規制は、平時では永遠に解決しない。「希望は戦争」とは、よく言ったものである。  

 
14:41 11/03 2010 | 固定リンク | コメント(2) | アクセス数(903)


10/25 2010
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大前研一ライブ/2010年8月1日号より
 日航 機長目前、悪夢の中へというトンデモ記事を見つけてしまった。

>>「私がパートに出るから大丈夫」という妻の言葉が胸にしみた。

 この山田泰正って記者、相当に重症。よっぽど世間知らずだ。

 「弱い労働者」対「資本家・経営者」という文脈が最初から頭の中にできていて、それを絶対に変えられない。「お涙ちょうだい」のストーリーが最初から決まってる。

 あとはその定型的な「結論」に、聞いた話のなかから、都合のいい事実を当てはめたり、強引に言わせてるだけ。たぶんこの記事も、そうとう「言わされた嘘」が混じっているはず。特捜検察のやり方そのもの、なのである。

 それどころか、家のローンや子供2人のくだりは、いかにも定型であるがゆえに、作り話の臭いがプンプンする。僕は、このベテラン副操縦士なる人物は、実在しない可能性が高いと思う。毎日は会社として、取材実態があるかを調査したほうがいい。そのくらい、どこかで聞いてきたようなリアリティーのない作文にしか見えない、ということだ。

 つまり、自民党(経団連)と社会党(連合)による55年体制が、毎日新聞のなかではまだ終わっていない。天然記念物級といえる。

 驚くのは、これが朝日や日経のような高給社員ではなく、食べていくのがやっとのはずの薄給・毎日記者による記事であること。JALの52歳副操縦士がどれだけ裕福な労働貴族であるかくらい、知っていて書いているはずだからだ。

 JALの年間賃金は年功序列で、2009年度実績で、40代で既に1700万円を超えている。来期は約1200万円にカットされるが、それでも52歳だから、このベテラン副操縦士は、残れば1300万円ほど。辞めても、来年は53歳、会社都合だから退職金も満額出るし、割増も税金から6ヶ月分プラスまでされる。もとがべらぼうに高いため、退職金は1億円前後になってもおかしくない。退職金なくたって、もう十分、資産を築いてるよ。

 そういう基本的な数字をちゃんと確かめたうえで記事書いてるの?山田君は。あまりにも非常識だ。労組がゴネまくってパイロットの異常賃金を改革できなかったことが倒産→税金1兆円投入の一因になっていることは間違いないのだが、去年まで年収1800万円ずつ支払われていた超富裕層であることに何の疑問も呈さず、1つしかない文脈で意味不明な記事を捏造する。こんな欠陥記事、よく売るものだ。

 JALの副操縦士らが加盟する「日本航空乗員組合」は特に強硬で、2005年には事業改善命令を受けてから、わずか5日後にストを通告するなど、世間知らずの強欲ぶりは目に余っていた。

 機長になるための国家資格についてのくだりも意味不明だ。その費用を自費で出したわけでもなく、それさえも会社持ちという恵まれた環境であるところが、他の資格とも決定的に違う。弁護士や会計士は資格の勉強が全て自費であり、さらに合格まで何年もの機会費用まで支払うが、パイロットは高給を貰いながら社費で資格をとらせてくれる優遇ぶりである。

 もしJALの「逃げ切りパイロット」に同情が必要だとしたら、年収803万円のスカイマークのパイロットなんて、どうすればいいのだろう。アメリカの航空会社だって1千万円で働いている。世の中の労働者の99%超に同情しなきゃいけない。

 毎日もJALも、規制に守られ、世間常識から乖離したイタい会社になっている点が、きわめて似ている。毎日新聞は、自分たちのJAL化が進んでいることに少しは気づいたほうがいい。再販規制さえなければ既に存在しないゾンビ企業を、これ以上、政府の規制によって延命させるのは、それこそ悪夢だ。さっさと規制を撤廃し、潰すべきものはしっかり潰すべき。JALにしても、毎日新聞にしても。

 
03:19 10/25 2010 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(1215)


10/13 2010
 先日、『POSSE』という学生NPOから「ブラック企業」について取材を受けた。若者の「働くこと」に関する様々な問題に取り組む団体で、若年労働者の労働相談と季刊誌発行がメインの活動だという。志は買いたい。

 僕は、問題の現状認識を述べたうえで、解決策を2点述べた。

 まず、本当に問題を解決したければ、相談業務をいくらしても無駄だ。むしろ問題の解決を先延ばしにする。モグラ叩きにしかならず、解決に向けて前進はしない。「いいことしてる感」に浸ることはできるが、それだけだ。

 厳しいことを言うようだが、問題の本筋から逃げている。中高年正社員の既得権を守りたいロビー団体「連合」が、非正規労働者相談窓口を作ってお茶を濁しているのは、ご存知だろう。連合を最大の支持母体とする民主党政権も最近、追加経済対策の一つとしてハローワークに新卒者専用の相談窓口を設置することを決めている。

 相談窓口の設置というのは、既得権者たちが問題の本筋から逃げる場合によく使う、弾除けの盾だ。本当の改革者は、マシンガンで盾を突き破り、病巣ごとふっ飛ばさないといけない。抗暴である。そして、それをできるのが若者の爆発力であり、特権だ。行政のまねごとをいくらやってみたところで、既得権者たちは裏で笑っているよ。

 論壇誌の真似事も同じ。問題を解決したいのなら、議論ではなく、特定の意志を持って実行に移さないとダメである。本当の改革には、常に既得権者の流血がともなう。論壇誌が100創刊されても、相談窓口が日本中にできても、ブラック企業経営者は困らないし、非正規労働者と正社員の格差にしても全く埋まらない。

■ブラック企業への抗暴
 そこでコンサルタントとしての僕が解決策として提示したのは、第一に、ブラック企業の情報共有インフラ整備だ。現状、求職側と経営側で情報のギャップがあり、それを埋めるのは信憑性の低い『2ちゃんねる』くらいしかなく、機能していない。

 だから、ブラック企業の経営者は自社の評判を考えることなく、やりたい放題になる。サービス残業を強要して社員を過労死させたって、鬱で入院せざるをえなくなったって、外部に情報が漏れないことをいいことに、次々と新しい人材を採用できて「使い捨て」ができてしまう。

 そして、あろうことか、日本国政府はブラック企業の味方となり、情報公開請求に応じない。問題解決志向のMyNewsJapanは、もちろん情報公開法に則って開示請求を出しているが、拒否されている。たとえば残業代が不払いだったり、過労死を発生させたり、内定を取り消したりするブラック企業を、政府がかくまっているのが現状だ。

過労死発生の企業名を非開示 厚労省「出すと会社の不利益になるから」

「きれいになったから」と残業代不払いの企業名を非開示 厚労省

厚労省、内定取り消し企業名を全面不開示 「法人の権利害する」

 これらは公開されれば間違いなく問題発生の歯止めになる.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
asahi.com『ウェブ論座』にも出した)

 
12:22 10/13 2010 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(1053)


10/10 2010
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『暴走する資本主義』(ロバート・ライシュ)は33枚(66ページ)も書き込んだ箇所があった示唆に富む異例な良書

 

 

 

 

 

 僕には決まりきった通勤がなく、電車に30分以上乗ることもないので、ケータイやipad、キンドルを持ち歩いて電子書籍を読みたい、というニーズがない。本は、自分で思いついたことや思いついた概念図などを余白に書き込みながら、折り目をつけて、読む。どれだけインスピレーションがあるか、示唆を与えてくれるか、こそが僕にとっての本の価値だ。

 この著者は、なんでこんなこと言ってるんだ、下手くそな論理展開だな、とかいろいろ考えながら、著者の経歴を見て、ああ現場を知らない学者か、サラリーマンやったことないから分からないんだな、とか、コンサルだから文章が下手なのか、とか、自分で書いてないな、とか、章立てが分かりにくいんだよ、とか、勝手に著者と対話しながら読む。文句は書き込んでもしょうがないので、書き込まない。

 だから、何も書き込むことがなかった本は駄作であり、さっさと捨てる。そして、自分の書き込みがある貴重なページだけはかけがえのないものだから、デジタル化して永久保存するため自宅へファクス。せいぜい5~10枚だ。ファクスはデジタル化され、ファイル名に日付が自動で入って、添付ファイルとしてメールで届く。原本は捨てる。

 200ページの本なら、通常は95%(190ページ)はゴミなので、ゴミを自宅に持ち帰るという愚かなことはしない。自分にとって価値のある情報なんて、そんなもんだし、10ページも著者とブレーンストーミングができたなら、十分に買ってよかった、と思うべきだ。

 そう思うと本は安いし、山の手線の内側に住んでいると大きな本屋まで20分だから、いつでも買い直せる。カネで買いなおせるものは捨てる。これがモノを増やさない生活のルールだ。

 したがって、僕にとっては、書き込めることが書籍の価値のほとんどすべてだから、自由にメモを書き入れられない電子書籍なんて困る。

 電子書籍のメリットとしては、「あの本にあの件で面白いことが書いてあったな」という曖昧な記憶がある場合に、PCでキーワード検索できる機能があればいいと思う。現状の電子書籍は『アゴラブックス』はじめ、未だに検索ができない。それがデジタルの強みなのに、強みを活かさないのは経営として間違っている。

 たとえば、僕が今回出した本でいえば、そういえば会社を入社1日で辞めた人がいたな、と。沢木耕太郎と落合信彦だ、と。ここまでは自分の読書のなかで記憶にある。そこで確認したいけど、どの本に書いてあったかまでは覚えていない。

 沢木は思い出してすぐ見つかった。『深夜特急』だ。なにせ10年以上前に、自分で打ち込んだものがウェブ上にある。電子書籍で検索できれば、こんなことする必要もないわけだ。

 落合は覚えてない。こういうとき、電子書籍で調べられれば、便利である。一冊1000円くらいなら、30冊くらい普通に全部購入して、検索をかけたことだろう。結局、著作があまりに多すぎて人海戦術では無理だったから、書名の引用は断念した。

 逆に言えば、電子書籍のメリットというのは、そのくらいしかない。記憶探索機能、というのかな。検索ができないことに以前から不満があったので、僕の本9冊については、全てMyNewsJapanに全文をあげており、会員は検索コーナーでキーワード検索できるようにしている。

 新書のように価格が安く、amazonが当日配送してくれ、本屋まで20分で自宅の書庫代わりに使える東京では、好き好んで目に優しくない画面で読書したい人が、どれだけいるんだろうか。少なくとも一読目にざっと読むときは、紙のほうがいい。だから、検索できない電子書籍なんていらない。

 
17:02 10/10 2010 | 固定リンク | コメント(2) | アクセス数(859)


10/09 2010
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35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書』。タイトルも副題も帯文も帯の背景写真も、僕が考えた案を採用して貰った。ちくま新書を選んだのもデザインが圧倒的に洗練されているから。従って、僕の美意識のなかでは、この表紙は、まさに「完璧の出来栄え」と言える。なんと美しいパッケージであろうか。

 

 本が出ると、本当に並んでるのか、売れてるのか、気になるもんなのさ。なにせ、たとえば大学教授や経営者が片手間で、オマケや趣味のノリで本を出すのとはワケが違って、物書きを本業としている僕にとっては、これが全く受け入れられないなら死活問題であり、何のために仕事してんだよ、という話にもなるわけで。

 だから発売日には本屋に行くんだ。まず、品川インターシティの「くまざわ書店」。ここは店頭入り口の嫌でも目に入る目立つところに、発売と同時に新書を並べる店なので、反応をダイレクトに知ることができる。さっそく、発売日(7日)の夕方に行った。

 いきなり見当たらないので書名を伝えて店員に尋ねると、「売り切れた」という。

 「いや、今日が発売日のはずなんで、あるはずなんだけど」

 「あ、うちは昨日の昼から店頭に出してますから。5冊ずつくらい入って。ほら、これも1冊しかないでしょ。来週、また入ってくる感じだと思います」

 確かに、同時発売の5作品のうち『電子書籍の時代は~』も見当たらないから、それも売り切れた模様。あとは3冊、3冊、1冊と残ってる。なるほど1日余りのうちに、そのくらい減るもんなのか。だったら、もっと入れればいいのに。でも、ちょっと嬉しい。そういうもんなんだよ、著者は。

 今回、はじめて新書というパッケージで出したのだが、ちくまは毎月、5作を同日発売する。で、通常、1つの書店では同じ冊数が同じ場所に並べられるので、露骨に、明らかに、売れ行きの差が見てとれてしまうのだ。

 単行本だと、いつ発売されたかも知れぬ隣の本との減り方の差なんて気にならないけど、この“減り方競争”は新書ならではで、面白くもあり、冷徹な現実を突きつけられる場でもあることが分かった。

 というわけで、ますます他店での状況が気になるのだった。

 汐留の2店(リブロ、芳林堂)は誰も気づかないような新書コーナーにひっそりと5冊、2冊ずつ並べてあり、いずれも1冊ずつしか減ってなかったが、他の4作品も減り方がゼロか1かで差がつかず。せめて新書の新刊コーナーにヒラ積みにしてくれないと目に入らないんだな、これじゃ。

 仕入れ数が多そうな大型店に行こう。

 銀座ブックファーストへ。ここは10冊ずつ入ったらしく、9冊も残ってた。他の4作も似たり寄ったりで、10冊丸ごと残ってる作品もあった。冷酷な現実である。ま、でも、誰も好き好んで「ちくま新書」のコーナーなんて行かないからね。そもそも僕のは、銀座で売れる本じゃないし。思ったとおりだ。

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三省堂有楽町店。箱の上に6冊残ってた。

 

 

 有楽町の三省堂へ。ぱっと見、あんまり差がついてないな、と思ったが、さにあらず。『快楽の効用』は19冊残っている一方、『デジタル時代の著作権』は残り9冊になっていた。つまり、20冊ずつ入った、というわけだ。

 そして僕の本は・・・上げ底のための紙箱の上に、6冊残っているだけで、一番減っていた。つまり2日間で14冊売れたわけか。売れすぎても『バカの壁』みたいでダメだし(想定読者層から外れる)、このくらいが「いい売れ方」といえる。よろしい。いい子だ。納得。

 僕の本は売れる場所が決まっていて、東名阪、なかでも首都圏の中核都市。とりわけ渋谷、恵比寿、品川、有楽町、池袋、新宿など、都内で若手サラリーマンがたくさん徘徊してる本屋である。逆に、地方都市でグリーやモバゲーにハマっちゃってるようなガテン系が多い街道沿いの本屋では置くだけ無駄。地方では全然減ってないんだろうな…。

 だから、最初から強弱つけて配本して集中投下すれば売上を最大化できる訳だけど、出版業界はマーケティングの概念が幻冬舎を除いて欠落している。だから旬を逃して本が売れないんだろう。僕の本も情報は日に日に古くなっていくわけで。

 というわけで、新書特有の「減り方競争」見物、という楽しみ方が分かったのだった。

 今回、売り場を歩いて改めて思ったのは、日本の新書マーケットというのは、とんでもなくよくできてる、ということだ。800円前後という超安価で、コンパクトに情報が詰まった美しい装丁に、趣向を凝らした鮮やかな帯までついた本が、これだけのペースで、こんなに大量の点数が踊り出て所狭しと並び、減り方競争を繰り広げる。

 こんなレベルの高い国って、ほかにありえないだろう。究極まで来てしまっている、と感じる。紙市場がこれだけ完成度が高いと、電子書籍に、これを越える魅力を感じさせるのは難しそうだ。もう、おなか一杯、という感じ。

 正直、著者としても、こんなに時間と労力をかけて作った作品を800円余りで売っちゃっていいのか、というくらいの思いがある。そのくらい、日本の新書というのは、お買い得だと思う。  

 
01:01 10/09 2010 | 固定リンク | コメント(3) | アクセス数(934)


10/05 2010
 昨日、某ベンチャー企業社長と神保町でランチして、三省堂で1冊、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』という本を買って喫茶店でだらだらと読みふけった。僕はあくせくスケジューリングしてせわしない毎日を送るのは嫌いで、予定は1つしか入れないことにしている。

 とりあえず散歩でもして帰るか、と後楽園方面に向かっていると、日が暮れてきた。「そういえば、この辺に立花隆の事務所(通称ネコビル)があったっけ」と思いつき、カンで探してみることに。どこに住み、どこにどういう事務所を構えるか、は僕の解決すべきテーマの1つとして、いつも頭の片隅に横たわっている。

 大前研一は麹町、猪瀬直樹は西麻布、田原総一朗は佃、佐野眞一は流山。みんなそれぞれ、なるほど、というところにいる。それぞれ、作品や活動内容、ワークスタイルとオフィススタイルは深く関係している。風水とか気とか、信じているわけでもないが、そのテの影響も間違いなくあると思う。

 で、立花隆は、東京ドームを北上し、文京区役所を過ぎた小石川界隈。「こんにゃくえんまの北側あたりだったな」。以前、グーグルマップで調べたときの記憶だけが頼りだった。

 近づくと、暗くなっていた。はじめて歩く土地だ。しかも、考えてみれば、ネコビルって、雑誌で見た限りでは真っ黒のはず。こりゃ、見つからないな・・と思って引き返そうとしたら、正面から小太りの年寄りが歩いてきた。一瞬、おばさんなのかおじさんなのか分からない。だが、茂木健一郎風な天才特有のボサボサな髪形で白髪、片手に手提げ袋。すぐに、立花隆さんだと分かった。

 僕は『知のソフトウェア』『アメリカジャーナリズム報告』『エコロジー的思考のすすめ』など、立花氏のかつての著作が好きで、影響も受けている。秘書が書いた『立花隆秘書日記』も面白かった。『ぼくはこんな本を読んできた』など90年代の絶好調なころも、リアルタイムに読んでいる。

 だが、さすがに癌を患って復帰した今は、田中角栄の金脈を調査報道した往時の覇気は感じられず、左右にえっちらおっちらと揺れながらのんびり歩く普通の70歳のおじいさんに見えた。やはり人間、第一線にいられるのは60代までだな、と強く思った。これは小沢一郎(68)や大前研一(67)、田原総一朗(76)などを見ていて、強く思う。逆に言えば60代までは十分やっていけるのだから、まだ先は長い。

 本人なら話は早い。すれ違って、きびすを返し、少し離れて後ろから現地まで案内してもらうか、と勝手に思ったところ、角を左に曲がったらすぐ、ネコビルが見えた。なんだ、こんな近かったのか。本人が中に消えたあと近くで見ると、地形は細長く、まさに猫の額ほどの面積で4階建て。なるほど、仕事場として「篭る」には十分かも。住むには明らかに狭いなぁ…。名前の由来は、立花さんが動物のなかでネコが一番好きだからだとどこかで読んだ。

 それにしても、これは偶然なのだろうか。僕は、別に待っていたわけでも、探し回っていたわけでもない。カンで大通りから曲がって、数十秒ほど、はじめての土地を歩いただけだ。立花さんが1日2回出入りするとしても、ばったり出会う確率は、0コンマ何パーセントという世界だろう。偶然じゃないな。共時性(シンクロニシティ)について、再び考えてしまった。

 読んだばかりの『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』(橘玲)によると、世界的なベストセラー『ザ・シークレット』が、人生を変える偉大なる秘密として「引き寄せの法則」について書いているそうだ。

 引き寄せの法則の原理は、「ひとは自分に似たひとに引き寄せられる(自分に似たひとを引き寄せる)」というものだ。この原理は古くから「類は友を呼ぶ」として知られており、その正しさは子供を観察することで誰でも確認できる。
 僕は、立花さんに引き寄せられるようにして出会ったのかもしれない。

 しかも、これを書いていて気づいたのだが、この本の著者は橘さんで、しかも立花隆の本名は「橘 隆志」と漢字まで同じ。数時間前に1冊だけ買った本なのに。これもシンクロしている。意識はしなかった。けっして橘という人の本を読んだから立花事務所へ、と考えたわけではなかった。だが、無意識下では、そういうことが起きたのかもしれない。実際、私はそのように歩いて向かったのだから。

 人間の意識って、いったい何なのか、と考えてしまう。

 映画を観る→無意識のうちに涙が出る→あ、自分は感動したんだな、と意識上で自分の感情に気づく。それと同じで、人間という生物個体の本質は無意識にあって、思考とか感情などという表層のものは後付けに過ぎないのだ、ということに改めて気付いてしまった。ある人の本質は、無意識にこそある。

 そして、無意識下と外部の世界はつながっていて、無意識のうちに引き寄せられるように立花さんに出会う。そうでなければ確率的には起こりえないことが発生している。おそらくこのようにして交通事故も起こるのだろうし、宝くじも当たる。スピリチュアルの世界でも「偶然」はなく、すべてが「必然」である。

 それがどのような意味やメッセージを持っているのかは、僕はユング心理学などを勉強不足で、まだよく分からない。だが、人間の意識よりも深いところで、何かしらの法則によって人間は動かされているのだ、ということを実感し、怖いものを感じるのだった。

 
21:19 10/05 2010 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(1073)



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渡邉正裕(WATANABE Masahiro)
(株)MyNewsJapan代表取締役社長/編集長/ジャーナリスト。ほぼすべての主要企業内ホワイトカラーに情報源を持つ。現役社員への取材に基づき企業の働く環境を一定基準で評価する「企業ミシュラン」を主宰。日経新聞記者、IBMのコンサルタントを経てインターネット新聞を創業、3年目に単年度黒字化。
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