「押し紙」を回収するトラック。多量の写真やビデオが撮影されているのに、新聞人はいまだに「押し紙」の存在を否定し続けている。
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販売店に「押し紙」(虚偽部数)があったことを理由とした改廃事件が続いている。「押し紙」とは、新聞社が部数や売上を水増しするために、販売店に意図的に押し売りをする新聞のこと。ところが奇妙なことに、新聞社側が、自ら押し付けた新聞が店にあることを改廃理由として持ち出すケースが増え、裁判所もそれを認めることがある。つまり濡れ衣を着せられるのだ。どうすれば新聞社に本来の偽装責任を負わせることができるのか。毎日新聞S販売所(東京・練馬区)の事例を中心に検証する。
【Digest】
◇「この新聞は何ですか?」と突然言い出す
◇販売店主が販売局員を騙していた?
◇新聞社が閲覧権を行使しない理由
◇毎日新聞は発証数を把握している
◇新聞社と販売店の合意があってもNO
◇福岡高裁は虚偽報告を認めず
◇「知らぬ振り」をさせない方法
◇「この新聞は何ですか?」と突然言い出す
元新聞販売店主が、ドラスチックな改廃の手口をイメージ化して語る。「改廃」とは、新聞社が、販売店主を廃業させるか、別の店主と入れ替えることである。
午前5時半。配達員たちがバイクや自転車で街に繰り出し、物音ひとつしない店舗に、突然、販売局の社員2名が到着する。2階から店主が降りて来ると、挨拶もそこそこに、1人の社員が店舗の隅に積み上げられた「押し紙」の山を指して、
「この新聞は何ですか?」
と、怒った表情で切り出す。
「えっ?」
「この新聞は何ですか?」
店主は戸惑うばかりである。
「あんた、今まで紙を積んでいることをわれわれに隠していたのか?こんなに新聞が余っていることを報告していなかった。おかげでわれわれは経営判断を狂わされた。本日をもって契約を解除する」
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練馬区の毎日新聞S販売所の係争では、全印総連が毎日に対して再三にわたって交渉を申し入れたが、毎日は拒否し続けた。(上)は、交渉申入書、(中)は、毎日からの回答書、(下)は、全印総連の抗議文。
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新聞社が販売店を改廃するときに、常套手段のように持ち出してくる理由が「虚偽報告」である。この「虚偽報告」とは、具体的に何を意味するのだろうか?搬入部数が2000部の販売店を例に説明しよう。
大半の新聞社は販売店に対して、部数の内訳を定期的に報告するように求める。実際の部数内訳は次のようになっていると仮定する。
搬入部数:2000部
実配部数:1200部
予備部数: 800部
「予備部数」とは、実質的には「押し紙」(偽装部数)のことである。しかし、「押し紙」は独禁法で禁止されているので、もし、上記の部数内訳が公取委の耳に入ると指導の対象になりかねない。また、ABC部数をかさ上げしている証拠にもなり、広告主から苦情がでかねない。
そこで対策として、「実配部数」と「予備部数」を改ざんする。それが新聞業界の慣行になっている。たとえば次のように報告する。
搬入部数:2000部
実配部数:1980部
予備部数: 20部
「予備部数」が20部あるが、この程度の部数は新聞が破損したときに備えて必要なので、「押し紙」とは見なされない。正常な取り引きの領域である。新聞社はこうして独禁法の網の目を潜りぬけ、同時に広告主を欺く。
裁判所もこのあたりのカラクリを見破るただけの洞察力はないようだ。その結果、虚偽報告という言いがかりは、新聞社が販売店を改廃する場合の常套手段になっている。
もっとも、なかには本当の部数内訳を報告している店主もいるようだが、わたしがこれまで取材したケースでは、上記のような「処理」が大半を占めている。
◇販売店主が販売局員を騙していた?
去る8月8日に東京都練馬区にある毎日新聞S販売所が強制改廃された。その時の改廃理由のひとつに「虚偽報告」がある。
この販売店の店主は、改廃通告を受けた後、東京地裁へ地位保全の仮処分命令を申し立てた関係で、毎日側も裁判所でみずからの正当性を主張した。毎日が提出した書面のひとつに店主の「虚偽報告」を指摘する販売局員の陳述書があった。該当部分を引用してみよう。
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私が毎月S販売所を訪問し、翌月の新聞販売数量などを打ち合わせる際に、I氏(元店主)からは毎月の毎日新聞の販売部数の報告がありますが、平成20年3月に訪店したときには、I氏からは毎日新聞の購読者数が925部、拡張カードの枚数は854枚を保有していると報告がありました。しかし、相変わらずI氏からは、補助金の増額の要請と経営が苦しいとの苦情が出されるので、報告の状況からすれば、経営が出来ないはずはないと疑問を感じるようになり、どうして経営が成り立たないのか説明を求めました。
その結果、I氏は、実は報告していた部数は、大きく水増しした数字で、実際はそれほど売れていないということで、大変驚きました。何故なら、販売担当として、販売店の状況を踏まえて、奨励金や補助金が設定されるのに、実際と異なる数字を計上して補助金や奨励金の支給を受けていたことになり、取引する上で相手の報告内容をそのまま信用できたいことが判明したからです。
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この陳述書を読む限り、店主が販売局員を騙していたことになっている。裁判所も「虚偽報告」を認定する判断を下した。
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(略)債権者は、平成20年4月にT(担当員)から補助金の増額を求める理由を問いただされた際に、それまで、Tに報告していた新聞の販売部数や契約カードの枚数を大幅に水増し(新聞販売部数で207部、契約カードで558枚)して報告していたことを告白した。これは虚偽申告であり、それまでの間、債権者は、この水増しされた数字に基づいた奨励金や補助金を受け取っていたことになる。
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この記述に店主が怒り心頭に達したことは言うまでもない。
既に述べたように、「虚偽報告」を理由とした販売店の改廃は、新聞社の常套手段になっている。たとえば本サイトでも紹介した
YC久留米文化センター前(福岡)や
YC広川の係争(第1次真村訴訟・福岡)でも、「虚偽報告」が改廃理由のひとつになっている.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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古紙回収業者の伝票。この日は、約5トンを回収している。 |
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残紙があっても、販売店が合意していれば問題ないとする読売の準備書面。と、すれば広告主を騙してもいいということか? |
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