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モンゴルで働く(5) 「賄賂」という旧社会主義国のビジネスリスク

情報提供
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建設バブルでウランバートル市内の中心地でも至る所でビル建設が進められているが、許可が下りないために建設が進まないパターンもある。土台を作ってしまえば、ビルの建設は進められるが着工に至るまでに賄賂などのハードルをクリアしなければらない(画像は本文内のビルとは関係ありません)
 筆者はモンゴルに来て半年ほど経過するが、会社内のあるプロジェクトが頓挫してしまったため、仕事は一旦ストップした状態だ。その原因は、日本には見られない、旧社会主義国的な「賄賂」のためだった。これは露骨なもので、ビルの着工許可を貰うための賄賂、眼鏡店の許可証をもらうための賄賂、民間企業のマネージャー職をもらうための賄賂…と大小、様々あることを知った。さらに、一時帰国VISA取得のために最低3回は入国管理局に通わないといけないなど骨が折れる体験をして、一筋縄にはいかない旧社会主義国的な役所の対応を実感した。そこで今回は、モンゴルでビジネスをすすめる上でのリスクにあたるネガティブな面を、自身の体験を含めて記載したい。今後、モンゴルに進出する企業、更には、旧社会主義国の新興国への進出を考えている方々の示唆になれば幸いである。
Digest
  • ビジネスのリスクとなる“Money Under the Table"
  • 個人商店の許可や会社の昇進でも要求される不明瞭なカネ
  • 入国管理局で体験した旧社会主義国らしい理不尽な役所対応
  • 不安なカネ事情だった銀行の破綻例と自己資本比率規制
  • 不自然な市場の火事と相次ぐ商業ビル建設の関連性
  • 働かないモンゴル人の管理の難しさ

ビジネスのリスクとなる“Money Under the Table"

“Money Under the Table”― 英語ではa bribery、日本語では「袖の下」と表現されるその言葉を聞いたのは、私がモンゴルに来てウランバートル市内まで車で送ってもらっていた際、社長のLkhamaaさんとの会話の中であった。

「この国でビジネスを進めるのは大変なところがあるよ。まだ、”Money Under the Table”があるからね。そんな状況だから、いま、ビジネスはSlow downしますね。これからビジネスを大きくすることはしません。中澤君には何をやってもらおうかな・・・」と話していた。

それはトップレベルの話だけではないか、と思っていたが、実際にそのお陰で自分の仕事が手持ち無沙汰になるという事態に直面することになった。“Money Under the Table”に応じなかったため、プロジェクトが頓挫してしまったというのである。

その”Money Under the Table”は一体何か。

まず、会社のプロジェクトであるが、ある地域に新しいビルを建設し、複数のプロジェクトを進める予定であった。そのビル建設について、役所の申請などすべて完了したにもかかわらず、ほとんど進んでいない。

なぜ、そのような事態が起こるかというと、役所の着工の許可が下りないのである。何を基準にしているのか不明なところがあるが、書類の提出は正式に済んでいて問題無いはずなのに、とにかく「許可は下りません」と回答するという。

そこで、許可を下すためには賄賂が必要となる。これが、”Money Under the Table”である。さらに、その賄賂の金額を聞いた所、日本円で1,000万円以上は要求されたという。日本にいる者にとっては、数億円以上の価値の感覚となる。

金銭感覚がおかしいのではないか、としか言いようが無いが、実際にその金額を要求されたのだという。あまりに馬鹿馬鹿しいので、Lkhamaaさんはその賄賂を払えないと返答していたため、ビル建設は遅れに遅れてしまった。

ビル完成はおそらく、来年春ぐらいにはなるのではないか・・・と言われた。冬季は、寒すぎて仕事にならないため、時間が長引く。

当初、Slow downというから、仕事があまり無いぐらいだろうと思っていたが、日本人の感覚からすると「本当に何も無い」状態になってしまった。当初は資料を作っていたものの、すべてペンディングした状態となっている。

他の同僚は何をしているかというと、日本車のローンビジネスをいつも通りに継続しているが、ピーク時に比べると、忙しさは無くなってきていると言う。

私は、前職では猛烈に働いていて、朝3、4時まで資料作りをして10時にはミーティング、という日々が続くぐらいの激務の状態にいた。しかし、今は全く真逆の状態に変化したと言っていい。時間はたっぷりある。これは最初ストレスになっていたが、段々と慣れてきた。

むしろネガティブな面も前向きに捉えて、現地の人と積極的にコミュニケーションをとっていかないと、この国ではやっていけないのだろう、と気を改めることにした。

私が「バリバリと仕事をする」ことを阻害している、この”Money Under the Table”は、モンゴル国内で一般的なのだろうか。複数のモンゴル人に訊くと、全員、「それは有る」と答えた。

聞いた全員が不満を口にしていた。政治が腐敗している、政治家は自分のことしか考えていない、というのは誰もが思っているようであった。それは、モンゴルにいる外国人からも同じ意見を聞いた。

エルデネットという地方都市で知り合った、日本で8年働いたことがあり現在はエルデネットで不動産関係の仕事をしているというBatkhuuさんから、建設現場のチェックでも賄賂があることを聞いた

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ビザ申請書(VISAAPPLICATIONFORMONGOLIA)の書面。こういった書面を手に入れるだけでも苦労する。PDFでダウンロードできるものと様式が違うのに注意。表面は住所・パスポート等の個人情報、裏面は犯罪履歴など(もちろんNo)。Professionが意外にも困った。通信営業とITコンサルなので、これと言った具体的な専門性を書けずにいた。同僚に聞いたら「適当にITEngineerでいいんじゃない」ということで、そう記入した。自分の飯を食うスキルについて考えさせられた。

モンゴルの入国管理局は市内中心地からバスで一時間もかかるところに。周りは草原と山しかなく、ある意味モンゴルらしい風景を見ることができるが、市内からアクセスは悪い。目印は、横にある大きな赤い体育館である。

入国管理局の内部。日本の郵便局・携帯ショップの様に待ち合い札を取って、自分の番号が呼ばれるまで待つ。意外にハイテク化が進んでおり、窓口には職員の対応の良い悪いを押す機械が付けられていた。しかし、対応は全体的にはあまりよくなかった。

『地球の歩き方』にも載っているナラン・トゥール・ザハ(Нрантуулзах)という大きな市場での火事。この火事は不審な点が多いことから、意図的に放火されたのではないかという噂が立っている。事実、近くに商業ビルの建設が進められている。

エルデネットで親しくなったJさんが経営するレストラン兼バー。この店で、アルバイトの従業員が来なくなって困っていると、Facebookで相談された。人事コンサルはやったことがなかったが、思いつくアイディアは返答しておいた。

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アルタイ2014/04/26 14:12
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