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新人警察官が配属2か月めに署内トイレで拳銃自殺――「息子は警察に殺された」現職警官・父が語る、愛知県警のイジメ体質

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愛知県警中警察署地域課に配属され、交番勤務をはじめて2ヶ月後、拳銃で自らの頭を撃って自殺した米山雄司さん(24歳)。先輩巡査部長らから激しく怒鳴られ、退職を強要されていたことがわかった。
 父のように警察官になって社会のために働きたい――幼いときからの望みどおり、米山雄司さんは愛知県警に入った。だが、警察署に配属されて2ヶ月後の2010年11月29日、署内で拳銃自殺した。享年24歳。悲嘆に暮れる両親の前に浮かびあがったのは、「イジメ」疑惑だった。ささいなミスで長時間罵倒する、公衆の面前で数百回の腕立て伏せをやらせる、眠らせない、私物をひっくり返す、執拗な退職強要――“心ある警察官”から、匿名の内部情報がもたらされたのである。だが愛知県警は、一般社会では明らかにパワハラとみなされるような数々の事実を認めながらも、「本人の出来が悪いのが原因だ」と責任を全面的に否定。死人に口なしと言わんばかりの冷淡な態度に、両親は無念と怒りを募らせ、国賠訴訟という戦場で戦いをはじめた。
Digest
  • 幼いころからの夢は実現したが…
  • 日ごろからいじめ訴え--胸騒ぎがした
  • 「心ある警察官」からの手紙
  • 内部調査が裏付けたおぞましい日常
  • いじめではないと愛知県警
  • “悪いのは自殺した警官”と法廷で公言

幼いころからの夢は実現したが…

「お父さんのようにお巡りさんになって悪い人を捕まえる」

両親によれば、息子の米山雄司さんは保育園のころから警察官になるのが夢だったという。そして夢をあたためて、念願どおり、愛知県警の警察官になった。

しかし待っていたのは、悲惨な結末だった。2010年11月29日昼ごろ、配属先となった中警察署のトイレ内で、拳銃で頭を撃ち、自殺したのだ。24歳の若さだった。

この日起きた衝撃的な出来事を、現職警察官である父・洋司さんが振り返る。

「拳銃の吊りひもが無くなって困っている――朝方息子からそんな電話がありました。よく探せ、見つかったら電話しろ。そう伝えて切りました。またイジメられるんじゃないかと心配でした。先輩らからイジメられていると聞いていたものですから…」

息子の雄司さんは、2010年4月に警察官に採用され、愛知県警察学校で6ヶ月間の初任科教養修了後、10月に愛知県警・中署の地域課に配属されていた。自殺する2ヶ月前のことである。名古屋市内にある交番2ヶ所の担当となり、寮で生活しながら本署と交番を行き来する毎日だった。

紛失した拳銃のヒモとは、体と拳銃をつなぐ道具のことである。普段の制服勤務中には身につけている。だがちょうど署で拳銃の研修があり、その際、ヒモを一時的にはずした。そして、そのまま忘れて交番勤務に戻り、ヒモがないことに気がついたという。

朝の電話から数時間がたち、昼になった。父に、息子から連絡はなかった。洋司さんは胸騒ぎを覚えた。

「息子はなんでもメールしてきたんです。それが、連絡がない。虫の知らせというのか、いやな予感がしました」

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米山巡査が亡くなった愛知県警中警察署。拳銃のつり紐が紛失したことを先輩巡査部長らから激しく責められ、土下座もさせられたという内部告発があった。愛知県警は「土下座」を否定している。

日ごろからいじめ訴え--胸騒ぎがした

洋司さんは、中署に電話をかけた。応答したのはよく知っている署員で、「(交番)勤務についていますよ」と答えた。ならば、ヒモが見つかったということだろうかと洋司さんはおもった。だが釈然としない。見つかったのなら息子から連絡があるはずだ。

「おかしいな」――胸騒ぎが収まらない洋司さんは、菓子折りをもって中署を訪ねることにした。息子が迷惑をかけて申し訳ない。そう、わびを入れるつもりだった。そうすることで息子へのイジメが少しでも減ることを期待していた。

中警察署は、普段とちがって騒然としていた。救急車が停まっており、署員が右往左往している。それでも洋司さんは「まさか」と落ち着いていた。救急車が警察署にくるのは、珍しいことではない。被拘留者が留置場で首を吊って自殺をはかることは、たまにある。おそらくそうだろう、と思っていた。

あわただしく行き来する署員のなかに、地域課長の姿があった。洋司さんは言った。

「息子に会わせてくれ」

勤務についているという説明を、このときはまだ信じていた。だが課長の反応に洋司さんは驚愕する。

「いやな…」

課長は口ごもった。そして続けた。

「じつは…息子さんが…拳銃を使って…自殺した」

「何!」

悪い予感が的中した。午後零時40分ごろ、2階男子トイレの個室で、雄司さんは拳銃で頭を撃って自殺をはかった。署の混乱は、そのせいだったのだ。「勤務についていますよ」というのは真っ赤な嘘だった。

それからまもなくして、搬送先の病院で、雄司さんの死亡が確認された。洋司さんの頭に、ある言葉が浮かんだ。イジメ――である。

警察の内部調査を待つまでもなく、雄司さんが亡くなる直前の様子は、署員が密かに寄せた情報によって浮かび上がってきた。

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米山巡査が勤務していた名古屋市内の交番。ペナルティーと称して数百回の腕立て伏せをさせられていた。仮眠もろくにできず寝不足でふらふらだったと訴えていた。

「心ある警察官」からの手紙

「心ある警察官の代表」と名乗る、匿名の手紙にはこうあった。

…私なりにそれとなく怪しまれないように聞き込み調査をした結果、下記のとおり判明いたしましたのでお伝えします。

○米山(雄司)君が、拳銃吊りヒモを紛失した件で、当署地下2階においてされていたこと。

・3人の警察官から正座させられていた(係長もいた)

・S巡査部長(先輩)が、米山君を殴る等暴行をふるっていた(足で蹴っていたところを見たものもいる)。

・「おまえなんか死んでしまえ」等と(S巡査部長が)怒鳴っていた。

・米山君の死体が見つかったとき、S巡査部長は狂ったように暴れて手がつけられなかったので、数人の警察官で取り押さえて拳銃を取り上げて保護房で保護した(自分の責任を強く感じていたからだ)。

・夕方、その場にいた警察官が集められ何か幹部から指示を受けていた(口止め)。

・米山君が暴行を受けていたのを見ていたと話していた若い警察官が、その後事件のことを聞いても「何も知りません」と言いだし

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米山雄司さんは、警察官の父にあこがれ、幼いころから警察官になりたいと夢見ていた。

米山洋司さんら両親が愛知県を相手取って国家賠償請求訴訟を起こした名古屋地裁。愛知県側は責任を全面的に否定している。右奥は愛知県警本部。

米山巡査が勤務していた交番近くを通る愛知県警のパトカー。中警察署は格の高い「Aランク」で、上司の出世欲が比較的強く、好成績の獲得や不祥事の防止に過敏になるゆえ、成績を上げ格下の署よりもいじめやパワハラがおきやすいという。

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