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ANA 国際線対応で大量採用&“促成栽培”のCA、世界一のサービス支える「体育会系の女タテ社会」文化と高い同質性
要注意上司の情報が「リマリスト」で共有され、代々引き継がれていくANAのカルチャー。世界トップのサービスレベルは、個性豊かなベテランの怖い先輩たちによる“厳しい指導”(新人は「イジメ」と表現することも)によって維持されている。部下は事前に情報収集して心の準備を行い、無用な衝突を避ける。

 新卒と中途で年1千人弱のCA大量採用を続けるANA(全日本空輸)。一方で、『エコノミスト』誌が国際線の顧客サービスでシンガポール航空と並びトップにランクするなど、世界的なサービス水準の評価は高い。大量のルーキーを抱えつつ、なお世界トップを争うサービスレベルを維持する裏には、体育会系の厳しいカルチャーがある。ベテラン指導層と若手との間では日々、高ストレス職場を生き抜くための攻防戦が繰り広げられ、若手は要注意上司の情報を「リマリスト」を回覧させて共有している。世界一のサービス評価、日本一の就職人気、続く大量採用、厳しい規律とおもてなしの正体、そして高ストレスでドロドロな日々の現場…CA世界で保たれるハイエンドなバランスの現場を報告する。

【Digest】
◇国策に連動、国際線を5年で5割増の計画
◇1年目の終わりには全員が国際線に
◇Cabin Saff部門で「世界2位」の評価
◇「女子で1位」不動の就職人気
◇雰囲気採用――採用で見ているポイント
◇入社時54キロがMAX、太ると“相撲部屋”訓練所へ
◇2年目でパーサーも――入社後のキャリアパス
◇ギャレー担当「眼も手も10個必要なくらい」
◇正社員8千人のトップでも取締役になれないCA
◇班が現場の基本単位
◇「目標をお伝えしてもよいでしょうか?」聞かないとチクられる
◇やりがいは、上司やクルーとの人間関係
◇文化の共有――怒られるとトイレに籠る中国人CA
◇CA業の未来――「おもてなし」と効率化
◇顧客情報はどこまで共有されているか
◇トラブルシューティングとジャーマンウイングス事件
◇限られる転職先、潰しがきかない職種
◇住むのは蒲田周辺、遊ぶのは東銀座
◇海外は軒並み5スターも、国内はショボい
◇努力してないとイジメられる
◇24時半発バンコク便の、眠れない長~い夜
◇現地で50時間自由なパリ線、精神的にキツいインド線
◇fbを華やかにするとワーキングプア

◇国策に連動、国際線を5年で5割増の計画
 3年前の2014年4月からCA(客室乗務員)新規採用を正社員のみに正常化したANA。それ以前に入社した契約社員も3年以内に正社員転換を迫られるため、この4月で新卒非正規は、22年ぶりに完全に姿を消す。

 2017年4月のCA新卒入社予定は、834人(航空経済紙『Aviation Wire』調べ、ほぼ前年並み)にのぼり、全8千人規模のうち約2割がキャリア0~1年になる計算だ(※総合職は事務46人、技術59人を採用)。正社員化の完了で定着率が上がったこともあり、2018年入社は計画ベースで新卒550人採用と抑制するものの、高水準を維持。別途、中途や再雇用も随時行っているため、2020年には1万人の大台も見えてきた。これほどアゲアゲな日本の大企業は今どき珍しい。

 大量採用で増員を急ぐのは、政府が掲げる「2020年訪日外国人4,000万人(2016年は2,403万人)」という国策に沿って、国際線の売上を、2021年3月期までの5年間で5割増とするアグレッシブな計画があるからだ(右記)。まるで昭和の高度成長期である。

 ANA中期経営計画より

 売上を増やすには、単価が同じなら、路線を増やし、搭乗率を上げるしかない。JALの倒産を受け、羽田の発着枠が国策でANAに傾斜配分された結果、昨秋以降、2016年10月から「羽田―ニューヨーク」「羽田―シカゴ」「羽田―クアラルンプール」路線を続々と新規就航。2017年2月からは成田―メキシコシティ路線も就航した。

 CAは典型的な労働集約型の職種なので、生産性は劇的に上がらない。同じサービスレベルで乗客を増やすには、同じ比率でCAの頭数も増やさなければならない。

 そのため去年(2016年)は、新卒だけでなく既卒も2017年1月以降入社で40人規模を採用。中途入社組は、CA未経験でも30代半ばまで普通にいるという。さらには、退職者の復帰枠でも募集をかけている。手を挙げれば、辞めたときの待遇のままで再雇用され、働くことができる。

◇1年目の終わりには全員が国際線に
 激務もあって、その大半が20代のうちに辞めていく離職率の高さを考えると、CAが所属する「客室センター」は、年間1千人規模の採用→教育→離職→補充のサイクルをコマネズミのように続けねばならない、という慌しさ。国内線の売り上げは2020年度まで据え置く計画のため、増強が必要なのは、国際線要員のほうである。

右:現役CA、左:元CA。2人とも現在20代半ば。

 「契約社員採用の頃(2013年まで)は、入社して3年間は国内線だけで、それから国際線へ、というキャリアパスが普通でした。それが今では、新卒入社して10か月めには国際線の内示が出てトレーニングを受け、1年目の終わりには国際線エコノミーにデビューするように変わりました。どんどん習熟が早まっていて、これから国際線資格を取る子たちは6〜7か月めで内示が来ています」(若手CA)

 計画を達成するためには、悠長なことは言っていられない。

 基本的に、1年目から全員に国際線の社内資格を取らせて国際線を担当させる“促成栽培”になった。国際線は各国の税関規制や言語・宗教の違いによるミール提供、飛行時間の長さから、難易度は上がるが、多くは、ほどなく適応していくという。長い経験よりも体力と気合でカバー可能なタイプの仕事、ということだ。

 とはいえ、経験者のほうが心強い。1年ほど前まで国際線にも乗っていた元CAが言う。「退職するときも、『戻る場合はこういうプログラムがあって、このページに登録しておけば声をかけますから』と説明を受けました。私は戻るつもりがなかったので、登録しませんでしたが…」。会社側の都合に左右されるものの、退職後でも同じ待遇で復帰できる点は、よい仕事である。

◇Cabin Saff部門で「世界2位」の評価
『エコノミスト』誌(APRIL/MAY 2016)に掲載された、サービスの顧客評価と価格による航空会社のマッピング
 世界的にみたANAの評価は、著しく高い。『エコノミスト』誌(APRIL/MAY 2016)に掲載された記事『COME FLY WITH ME』(サービスの顧客評価と価格による航空会社のマッピング)では、ANAとシンガポール航空の2社が、サービスの顧客評価において5段階で4点台前半に位置し、世界トップを争う(価格はANAのほうが安い)。顧客評価ポイントは米国系の2倍と、圧倒している。

 この評価で情報源の1つとしている航空サービスリサーチ会社「SKYTRAX」調査結果では、CA部門の「World's Best Cabin Staff」で、ANAは世界2位を獲得している(1位はガルーダインドネシア航空)。同社調査の内訳をみると、「キャビンスタッフ」部門では、語学力以外は満点を獲得(右下参照)。実際、ANAはCAの採用で語学力は重視していないため、かなりリアルで納得感のある調査結果だ。日本人には日本語で対応するため語学の問題はなく、日本人顧客から見たらパーフェクト、ということになる。

SKYTRAX調査
 なお、空港(地上)におけるサービスを評価する「エアポートサービス」でも、ANAが世界1位を獲得しており、ANAという企業全体が提供するサービスレベルが、世界ナンバー1と言ってよいほど優れた水準であることを示している(過剰クオリティー&過剰価格、という議論は、別途ある)。

 同調査で、機内での食事や音楽ゲーム映画の提供などハード面も含めた総合評価においても、ANAは世界5位だ(JALは21位、「The Top 100 Airlines of 2016」)。

 当然のごとく、日本人旅客を対象にしたエイビーロード『エアライン満足度調査2016』では、「機内サービスに対する満足度」部門で、ANAが1位。総合2位だった(総合1位はシンガポール航空)。

◇「女子で1位」不動の就職人気
 世界トップのサービスを提供するには、採用と教育がポイントとなる。最前線の顧客接点となるCA組織に、優秀な素質を持った均質な人材が供給されなければ、全体のサービスレベルは維持できない。

 だが、日本の労働市場がひっ迫するなかにおいても、ANAが人材の獲得に困ることはない。発展途上国でよくみられる現象として、国際線のCAがエリート扱いされ就職人気が高い現象があるが、日本では経済発展を遂げた今にいたっても、なお人気が高止まりしているという不思議な現象が続いている。「ステュワーデス」と呼ばれていた時代から、途切れることなく応募者が続々と集まってくる。

 「朝日学情ナビ」が2017年3月卒業・修了予定の大学生、大学院生を対象に行った調査(母数12,808名)でもANAは総合1位、男女別ランキングでも、女子部門で、大差をつけて1位だった。パイロット職や総合職、整備職はいずれも男性が圧倒的に多く、空港の地上職は制服が同じだが別会社化しているため、女子はANAの職種としてCAをイメージしているはずだ(または何も考えず単に印象がよいブランドを選んでいる)。

朝日学情ナビの調査結果で女子1位、総合1位

 もともと人気は高く、その弱みに付け込む形で経営側が1994年(JAL)・1995年(ANA)に「契約社員のみの新卒採用」方式に切り替え、不安定な身分と低コストで使い倒してきた真っ黒な歴史があったが、2014年度入社からANAが正社員化を表明したことで安定雇用のイメージも加わり、不動の地位となった。

 「親や親戚は、正社員ということで身分が安定して嬉しいみたいでしたが、自分は何とも思わないですね」(若手CA)

 実際には、頭数を揃えて急激に増やさねばならない経営環境のなか、よほどのことがない限り契約社員でも雇止めになることはなく、現場に雇用面の不安はなかった。

 月々の手取り収入も、非正規時代のほうが多かったという。「非正規の頃は、深夜早朝勤務の場合のタクシー代が1回8千円も一律で出ていて、実際には蒲田周辺に住んでいる人が多いから、せいぜい2千円。6千円も浮いたんです。これが正社員化したら会社がすべてのタクシーを手配する仕組みになり、1円も浮かなくなった」(元CA)

 こうした手当は非課税なので、給与として貰うよりも実入りが大きかった。課税所得を回避できる賢い制度で、働き手に配慮された仕組みだ。実は、こうした交通費や飛行先での滞在手当(パーディアム)が、CAの実質的な収入としては重要だ(詳細は後述)。給与とは別に振り込まれ、非課税だからである。

 契約時代に入社した元CAが言う。「私は3~4年で辞めるつもりだったので、契約のままのほうがよかった。でも、2014年4月に、ほぼ全員が正社員になり、50人に1人くらいが、正社員化を拒否していました。会社があんまり熱心に勧めるので、反発した人でした。手取りが減って、その人の判断が正しかった、と思いました」

 同じ総人件費であっても、正社員に転換すると、退職金など裏で積み立てられるものが増えるため月々の手取りは減り、短期で辞めると支給率がカットされ損をする。短期で辞める人にとっては、月々の手取りを犠牲に、名ばかりの安定雇用を得たことになる。

 いずれにせよ、最長3年で自動的に正社員になり、嫌なら辞めろ、という契約内容だった。2014年4月以降に新しく採用された人は全員が正社員のみだから、2017年4月には非正規の新卒CAは存在しなくなる。

◇雰囲気採用――採用で見ているポイント
 世界一のサービスを提供する人材は、どのように採用されているのか。実は、国際線を増強するといっても、英語のスピーキング能力は見ておらず、英語力に関する応募資格は「TOEIC600点程度以上」だけ、と低い。3~4年前の例では、ヒアリングとリーディングのみのTOEICのような英語のテストを受け、プラス筆記試験が、国語、数学、SPIだったという。「英語はできなくても受かります。実際、ぜんぜんできない人が受かっていました」(元CA)

 では、どこを見ているのか。数年前に、CAの一次面接で面接官を経験したという総合職社員に話を聞くことができた。

 筆記の次は、まず一次面接がある。「一次は、面接官1人:候補者5~6人でディスカッションをさせて、上位2人を通していました。見ているポイントは、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。



左:2017年の選考ステップ。 右:ある年の面接で聞かれたこと(1次~3次)。いたって普通。
ANA客室センター組織図
CA職の出世と報酬
「集合早め」「目付けられたらアウト」など注意事項のほか、「池袋のホームレスみたい」など人物評が厳しい
ヒラCAの給与。時給にすると2200円ほど。別途、給与明細に出てこない非課税のパーティアム(出張滞在手当=乗務で訪れた先の都市に泊まった日数による)が通常勤務で月5万円程度、振り込まれる。

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