告発に踏み切った制作スタッフのAさん。製作費の未払いに加え、間違った情報で受験生を苦しめたくなかったという。
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特定の意図を排した“ホンネの予備校ランキング”をうたい、2015年から3年連続で発売されている書籍『予備校図鑑』(コスモス社)で、ランキングの不正操作が行われていることがわかった。制作スタッフAさんによると、通信教育「Z会」で知られる増進会出版社の100%子会社で「増田塾」を運営する株式会社MY FRONTIERが、制作費を全面的に負担。その見返りとして、増田塾が「文系私大ランキング」の首位となることが予め決まっていた。また、版元であるコスモス社は出版コードを貸与しただけで、企画と制作を取り仕切っていたのは「とりい書房」という小規模出版社だという。書籍が丸ごと広告のようなものだが、Amazonのレビューには「広告がついていない、ということで中立性があると思い、購入しました」との感想もある。スタッフのAさんに、消費者を騙す手口と、ずさんな製作過程の全貌を聞いた。
【Digest】
◇「ホンネの予備校ランキング」のずさんな実態
◇増田塾長がメールでランキングを指示
◇版元は出版コード貸与を認める
◇「ホンネの予備校ランキング」のずさんな実態
コスモスという出版社から発売されている『予備校図鑑』という本がある。2015年度版から2017年度版に至るまで三冊が出版され、最新版は昨年12月の発売だ。いわば「予備校選びのガイド本」的な内容で、「私立文系」「医歯薬系」など、志望校別のランキングが掲載されている。
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『サンデー毎日』連載でも紹介された増田裕介塾長。
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記者の手元にある2015年度版の表紙には「ホンネの予備校ランキング」というキャッチコピーと共に、「テレビや広告にまどわされない予備校の実像がセキララに」とある。
なるほど、ランキングビジネスというのは、「広告費を払えば優遇する」というのが、往往にしてまかり通る業界であり、その風潮に反旗を翻し、あくまで受験生目線に立った「ホンネのランキング」にこだわるというのは、見上げたものだ――。
一見、そんな志の高い書籍に見えてしまうのだが、驚くべきことに、実際に本書の制作に関わった編集プロダクションのスタッフ・Aさんは「表紙に書いてあることは、ぜんぶ嘘っぱちですよ」と喝破する。
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自社サイトの「メディア実績」で「私立文系BEST20で1位と掲載されました」と誇らしげにお知らせしているが、実はただの自作自演である。
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「“広告に惑わされない”どころか、この本自体が”広告そのもの”なのです。増田塾という受験塾がありますが、そこのオーナーが制作費をすべて負担して制作されたのが、この『予備校図鑑』です。試しに、私大文系のランキングを見てみてください。どの年度も、1位に輝いているのは、増田塾ですから(笑)」
増田塾といえば、難関私大文系に特化した受験予備校で、全国に41校舎を展開。塾長の増田裕介氏が代表取締役を勤める、MY FRONTIERという株式会社が運営している。
同社は2017年6月30日付で、Z会を運営する増進会出版社の子会社となっている。増田氏としては、不正をしてでも生徒をかき集めて業績にゲタを履かせ、増進会出版社に自社株を高値で売り抜けたかったのかもしれない。教育事業者として、特に踏み込んではいけない「生徒を騙して入会させよう」という禁じ手に打って出ていた。
◇増田塾長がメールでランキングを指示
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増田塾長のランキング指示メールを、とりい書房の大西氏が転送。大手予備校を凌いで増田塾が1位になるよう指示。 |
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「公正中立」を標榜しながらも、丸ごと広告という“トンデモ本”は、どのような経緯で出版されるに至ったのか。前出の制作スタッフ・Aさんは、「出版不況で窮地に立たされた小規模出版社の社長の“暴走”とでもいいましょうか…」と前置きし、実情を語る
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堂々の1位に輝く増田塾。だが、そのランキングはでたらめ |
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「特定の意図を持たず」と記されているが、実態は特定の予備校への入学を不正に誘導するような、丸ごと広告本だった(『予備校図鑑』より) |
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Amazonには「広告がないので買った」というレビューまでついている |
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説明責任を果たせないなら、こうした都合のよい合格実績の情報についても、同様に操作していると疑われても仕方がない |
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