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東進「東大現役合格実績」はやっぱりインチキだった――受かりそうな生徒を授業料タダで在籍させ“横取り”、駿台・河合「何を根拠に日本一と言ってるのかわかりません」

情報提供
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上:「日本一の東大現役合格実績」を広告宣伝の殺し文句に使う東進
下:永瀬昭幸社長と看板講師の林修先生
 著作権法違反労基法違反などでブラックぶりが明らかになっている『東進ハイスクール』運営のナガセ(永瀬昭幸社長)。「日本一の東大現役合格実績」という広告宣伝も、景品表示法違反(優良誤認)の疑いが強いことがわかった。他塾などで実力を伸ばした受かりそうな生徒を、林修氏など著名講師の授業をエサにおびき寄せ、授業料タダで『東大特進コース』なる広告宣伝用(つまり大赤字事業)の特殊講座に片っ端から在籍させ、東大(と他の有名大)の合格実績を無理やり積み増しているのだ。有名進学校の生徒には、何と学内順位の提示だけで在籍させる。全国学習塾協会が公正取引委員会の勧告等をもとに策定した自主規定では、「3か月または50時間」未満の受講者や無料在籍者を合格実績に数えることを禁じており、駿台・河合等の他塾も現役生向けの授業料無料制度は設けていない。「日本一」表記についても、現役生の東大合格実績を一切外部に開示していない駿台・河合は、「いったい何を根拠に言っているのか」と訝しげだ。
Digest
  • 「騙された、と思いました」
  • 実態は「広告宣伝生」
  • 高校内の成績表でも特待生に認定
  • 新聞やパンフで優良誤認広告
  • 「日本一」も根拠ナシ、優良誤認の比較広告
  • 合格者数「通期の授業」のみ、も嘘
  • ナガセは、業界団体の自主基準に軒並み違反
  • 業界全体がいい加減「釣られるところだった」
  • 現役東大生「教室の体をとった、ある種の広告だった」
  • ナガセは取材拒否

「騙された、と思いました」

「最初は、東大742人なんてスゴいな、と思っていたのですが、途中で『騙された』と思いました。他の塾に通って成績を伸ばした人まで横取りしてる印象で、まるで東進の授業で実力を伸ばして合格させたかのように宣伝してるのがヒドいな、と」――昨年、子どもの塾選びのために東進に資料を請求し、東大合格実績について説明を受けたОさん(40代)の率直な感想だ。

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子供の塾選びで東進に資料請求したОさん(40代)

Оさんが驚いたのは、通常の『東進ハイスクール』や『東進衛星予備校』とは完全に切り離して運営されている『東大特進コース』の実態についてだった。東大合格を目指す人だけが在籍する特殊なコースで、約1700人が在籍。そのうち圧倒的に多くの人たちが、特待生制度を使って、授業料を払わずに在籍しているのだという。

「東進が742人(2016年春)と言っている合格者のうち、8割がたが、この特進コース在籍者で、さらにその9割近いくらいの生徒が、何らかの形で『特待生』扱いとなっていて、授業料を払っていない、というんです」(同)

実態は「広告宣伝生」

東進の東大特進コース案内資料(2018年)を見せてもらうと、まず驚くのは、このコースが広告宣伝用であることを隠していない点だった。

特待生制度を利用するための入会資格には、はっきりとこう書かれている。

「生徒登録をし、志願科類、受験番号の報告を行い、合格科類・高校名・氏名の合格者名簿及び新聞掲載を了承する。また、合格体験記、アンケート等に協力する」

これが入会の条件だ。そして、「他予備校の『東大型模擬試験の成績表』の提出」まで、入会の1つの条件に入っている。無料なんだからマーケティングにも協力せよ、ということだろうか。

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東大特進コースの入会資格と「特待生制度」説明

そのうえで、成績基準に応じた、受講料免除についての説明が続く。ポイントは、指定した他社の模試(駿台、河合、代ゼミ)の結果でも、成績に応じてどんどんタダにして、東大に受かりそうな人なら、見境なく在籍させていく点だ。授業料の免除規定(詳しくは右記参照)は、模試の種類によって3つに分かれる。それぞれで成績に応じて3~4段階あるが、上位と下位は以下の通り。かなり幅広く取り込もうとしている。

 ①東進主催の一般模試
  765点以上で6講座分の受講料免除

 630点~674点で3講座の受講料免除

 ②東進主催の東大模試
  東大A判定 6講座分の受講料免除

 東大D判定 3講座分の受講料免除

 ③他社模試
  東大A判定 4講座分の受講料免除
  東大C判定 2講座分の受講料免除

つまり、成績がよいことに加え、新聞紙上での広告宣伝などで氏名を使わせてもらう、他社模試の結果も教えてもらう、ということを「特待生」制度を利用する条件にしているわけだ。

世間一般でいうところの本来の「特待生」が、広告宣伝とは無関係な意味で使われる言葉であることは言うまでもない。東進が「特待生」と呼んでいるものは、生徒が、東進の広告宣伝用に個人情報を全国にさらす許可を与える代わりに授業料をタダにする、という取引契約であり、むしろ実態は「広告宣伝生」制度とでも呼ぶべきものである。

高校内の成績表でも特待生に認定

これだけではない。模試の成績を提出しなくても、灘や開成をはじめ、東大に合格実績がある有名校在籍者は、その高校内での学年順位を示すだけで、特待生に認定される。それが、このパンフで記された以下の記述にあたる。

「※高校内成績順位による認定も行っております。対象模試の成績表をお持ちでない方はお問い合せください。」

とにかく、東進が東大合格実績の数字をかさ上げできる可能性が高ければ、何でもやるのだ。

「在籍している高校での順位を証明できる資料でも認定される、という説明を、私も受けました。具体的に高校名をあげて聞いたら、その高校なら6位以内だったら特待生に認定されます

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『朝日新聞』2016年3月14日朝刊広告。「東大現役合格実績日本一!」と根拠のない広告がうたわれている。契約に則って、738人もの氏名と高校名が掲載されている。広告宣伝要員なのだ。

東大の学科、氏名、所属高校がパンフに掲載される。東進は、このPR効果のために、高いコストを支払ってタダで受講させている。

ナガセが合格実績に含める「東進基準」。講習生は含みません、というものの、講習生とは何を指すのか、の基準が何も示されていない

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gotesar2017/11/19 07:13

東進「東大現役合格実績」はやっぱりインチキだった――受かりそうな生徒を授業料タダで在籍させ“横取り”、駿台・河合「何を根拠に日本一と言ってるのかわかりません」|MyNewsJapan  Оさんが驚いたのは、通常の『東

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phmpk2017/03/19 15:49

滅び行く業界はいろいろでてくるね

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