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「東進」ナガセが組織的な労基法違反で学生バイト搾取――労働条件記した書面交付せず、1年間ずっと研修扱いで最低賃金割れも

情報提供
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左:上場企業にもかかわらず遵法精神が欠落した永瀬昭幸社長(ナガセ公式サイトより)。弊社の質問にもすべて取材拒否。この程度の人物が進める教育事業に子供を預ける親は愚かというほかない。
右:「東進」最大の広告塔である現代文講師の林修氏(ナガセのCMより)。ブラック企業に加担する人物は放送コードに引っかかる。早期に手を切るべきだろう。
 「初期研修のあとは時給1000円、という説明を受けていましたが、2014年の1年間を通して、890円(最低賃金水準)のまま。上がる、上がる、とずっと言われ続けて、結局、研修扱いのまま、うやむやにされたんです。そのうえ、徹夜の無賃残業まで、やらされました」――。都内の東進ハイスクール校舎に勤務する大学生バイトのCさんは、そう憤る。取り返そうにも書面がない。時給は口約束で、労働者側の義務(損害賠償など)だけが記された「誓約書」のような書類にだけサインさせられ、それすら、その場で回収された。これは典型的なブラック企業の手口で、もちろん労基法違反。永瀬昭幸という男は、なぜ学生を違法に騙してまでカネ儲けに走るのか。大学生の知識不足と弱い立場につけ込んで搾取するナガセのブラックぶりについて、複数の現役アルバイト社員が告発した。
Digest
  • アルバイト社員を「闇の労働者」のごとく扱うナガセ
  • 最賃法にも抵触、賃金の違法カットが横行
  • 労基法・パートタイム労働法で書面交付は義務
  • 毎年、組織的に繰り返されている
  • 本部はもちろん把握している
  • バイトの顔写真が無断でビラに使われる、徹夜で無賃作業も
  • ナガセが支払うべき3億円の労働債権
  • 回答拒否で逃げ回るナガセ

林修氏をはじめ東進と契約する有名講師らは、ブラック企業の広告塔として悪事に加担するリスクに、どこまで気づいているのか。テレビCMでも有名な「東進ハイスクール」を展開するナガセ(永瀬昭幸社長、本社・東京 吉祥寺)が、組織的な労基法違反・パートタイム労働法違反に手を染めていることが明らかになった。

アルバイト社員を「闇の労働者」のごとく扱うナガセ

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左:Cさん 右:Dさん。在籍中につき、取材源秘匿のため色調変更した。

大学生のCさんは、2014年から東進ハイスクールで担任助手として働き始め、現在、3年目が終わろうとしている。契約期間は1年間らしいが、2年目も3年目も、契約の更新作業は一切、行われていない。それどころか、労働契約書の類は、一度も見たことがないという。

まるで不法移民でも働かせるような、“闇の労働者”の扱いをされているわけだ。仮に、会社側の過失で労働災害によって過労死が発生するなど「いざ」という時にでもなったら、「雇用契約は結んでいない」「そのような人間は在籍していない」と逃げることを想定しているのかと思うと、恐ろしい。

働き始める前は、「時給1000円」と聞いていたが、書面の交付はなかった。会議室で、他の学生たちと一緒に説明を受け、過失があったら損害賠償を負う、といった労働者側の義務だけが定められた「誓約書」のようなものにサインさせられた。その書類すら、その場で回収されたので残っていない。

つまり、休日・休暇や、昇給や、肝心の時給について記された、ごく一般的な労働契約書も含め、一切の書面による交付を受けていないのである。時給1千円で、最初の2ヵ月だけ研修だから時給が低い――そんな説明を口頭で受けた記憶があるだけだ。

最賃法にも抵触、賃金の違法カットが横行

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Cさんの給与支給明細書

結局、1年目は、年間を通して、研修扱いの時給890円(東京都の最低賃金は888円)のまま、ついぞ、上がることはなかった。

「自分だけでなく、同じ時期にウチの校舎で働き始めたバイトも全員、1年目はずっと890円にされました。さらに、一方的に1~2万円カットされた月もありました。指示された通り、説明会の準備作業を徹夜でやって間に合わせたのに、その分の賃金が支払われなかったんです。

私だけでなく、バイトの先輩たちも含め、校舎全体で一方的な賃金カットが行われていました。これには、2014年の1年間を通して、先輩のスタッフたちも、キレていました」(Cさん)

最低賃金のうえにサービス残業となると、最低賃金法(50万円以下の罰金)にも抵触している。おかしいのではないか、と指摘しても、ナガセの社員である校舎長は「業績が悪いから」などと、身勝手な言い訳をしていたという。

2年目から、やっと1000円になったが、前年未払い分の返金はなかった。3年目も1000円で据え置き。シニアのバイトとして、保護者との3者面談など社員同様の働きが求められる「担任」も任されているが、時給は1円も上がらない。東進ハイスクールの他校舎で同じ役割で仕事をしているバイトからは、「時給1500円貰っている」と聞き、不審に思ったという。

だが、書面で何も契約内容が残っていないため、文句を言うこともできない。実は、これが会社側の狙いだ。1年目に最低賃金で12か月間も働かされても、賃金を一方的にカットされても、他校で時給が上がっている人がいて自分は据え置きでも、最初に書面で時給や昇給に関する契約を結んで証拠を残していないため、「おかしい」と主張することができない仕掛けなのだ。

会社は、証拠がないことを逆手にとり、都合のいいように働き手から搾取することができる。典型的なブラック企業の手口である。

労基法・パートタイム労働法で書面交付は義務

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書面の交付が義務であることを周知するための厚労省(東京労働局)パンフ

こうしたナガセのような悪徳会社から労働者を守るため、労働基準法第15条1項、施行規則第5条では、使用者が労働者と労働契約を締結する際には、賃金、労働時間、休日休暇、契約期間などの労働条件を記載した書面を作成し、文書で交付しなければならないことが定められている。

これは努力義務のような甘いものではなく、雇用主が必ず守らなければならない「義務」だ。違反者は30万円以下の罰金が課される。

また、これに上乗せする形で定められた「パートタイム労働法」では、より具体的に4つの項目を文書で明示する義務が定められている(昇給の有無、賞与の有無、退職手当の有無、相談窓口)。違反者は10万円以下の罰金だ。

こうした法律は、Cさんがナガセで経験したように、なし崩し的に賃金が上がらない状態を続けられたり、理不尽にカットされたりする事態から、立場の弱い労働者を守るために制定された、基本的な労働法規である。ところが、東進ハイスクールを展開するナガセ(永瀬昭幸社長)は、これらを完全に無視している。

違反しても罰金が数十万円に過ぎないため、意図的に無視している可能性が高い。ブラック企業は、常にカネ儲けだけを物差しに判断する。数十万円の違反金を支払っても、約1000人にものぼるアルバイトに、本来支払うべき賃金を払わないでおくメリットのほうが圧倒的に大きい、という算段なのだ。

ナガセは、公共の電波でCMを流し、多数の株主を持ち、さらには教育を事業とする上場企業だけに、罪が重い。こういう会社は、法治国家においては本来、首謀者である永瀬昭幸社長を逮捕して有罪に処すべきであるが、労基署(東京労働局)は何も取り締まる動きをみせていない。

つまり、罰則を甘いままにしてブラック企業を野放しにする政府・厚労省ぐるみ、という構図もある。これが、日本がブラック企業大国となっている重要な背景の1つだ。

毎年、組織的に繰り返されている

同じ校舎で働く、現在2年目のDさん(つまり1年下)の場合は、2015年に働き始めた最初2か月間だけが研修扱いの最低賃金だったが、3か月目には1000円に上がり、1年目、2年目と、ずっと1000円固定だという。やはり書面の交付は一切、受けていない。

Dさんによると、2016年から働き始めた現在1年目のアルバイト社員も同様で、時給は3か月目から1000円、契約書なしの労働を強いられているという。

Dさんも言う。「僕の記憶では、ペラ1枚、A4サイズ1枚くらいの書類が提示されました。労働契約書かと思ったら、時給などの労働条件は何も書かれていなくて、過失によって会社に損害を与えたら賠償を行う、みたいな誓約の話ばかりが書いてあり、それも自分が捺印したら回収されました。

学生だから、書面を交わさない場合に、どういうマイナスがあるかわからないんです。いつまで有効かもわからない。ただ、契約は1年間だと説明は受けました。自動更新されるという話は聞いていませんし、どこにも書いていなかったと思います。2年目以降は、何も契約は交わしていません」

実は、まったく同じ話を、前回までに報道した、他校舎のAさん・Bさんからも聞いていた。(→「東進ハイスクールはブラックバイトなので要注意です」)。社会人経験がなく知識がない学生につけこんだ悪質な手口を、ナガセは毎年、大胆にも1000人規模の学生に対して、組織的に繰り返している可能性が高いのだ。

まとめると、東進ハイスクールのバイトは共通で、以下の違法行為がまかり通っているとみられる。

・会社として時給や昇給について定めた労働契約の書面交付をいっさい行わず、労働者側の義務だけを定めた書類にサインさせ、その場で回収する。

・1年契約だと口頭で説明されるが、更新作業は全く行われず、1年目の終わりに「来年もやるよね」と口頭で確認がある程度。

・その結果、なし崩し的な賃金カットやサービス残業、3年間昇給ゼロなど、一般的には起こりえない違法行為がまかり通っている。

・最低賃金で1年間働いたうえ、さらにサービス残業が発生している校舎もある(最賃法違反)。

・同じ内容の仕事をしている他校舎のバイトは1500円なのに自分は1000円、といったアンフェアで納得性の低い「同一労働・多重賃金」が横行している。

こうした大規模かつ組織的な犯罪行為は、なぜか当局(三鷹労働基準監督署)によって見逃され、摘発されていない。

本部はもちろん把握している

もちろん、本社が組織的に関与しているからこそ、どの校舎でも同じことが起きているわけだ。校舎の人間が個人的に勝手にやった、などという言い逃れはできない。責任は雇用主である(株)ナガセにある。

「時給の額は、本部に稟議書をあげて決めていますから、本部も知っています。つまり、組織的なものです。東進の他校舎にいる友人に聞いても、労働契約書を交付されたバイトは聞いたことがありませんので、これも会社が組織的にやっているものと考えられます。

東進ではない、他の塾で働いている友人たちに聞いたことがあるのですが、それはおかしい、ちゃんと時給について記された書面を交わして一通は受け取って保存しているのが普通だ、と。学生でそういう知識がなくて、わからなかったんです」(Cさん)

ナガセは、直営94校の「東進ハイスクール」で、約1000人のアルバイトを雇用している。各校に、リーダークラスのバイトが3人または2人ずつおり、保護者対応や3者面談といった、より重い責任がある「担任」を任されているバイトも、各校舎にいる。リーダー以上は、約300人と推定できる。

リーダー以上の役割で仕事をしていても、時給1500円(またはそれ以上)の人と1000円の人がいることについては、Aさん~Dさんの4人が、ともに証言している。店舗ごとの業績や地域相場によって時給に数十円~100円程度の差をつけることは他業界のチェーン店でもよくあることだが、500円(50%)もの大差を、会社は、どうやって合理的に説明できるのか。

バイトの顔写真が無断でビラに使われる、徹夜で無賃作業も

このリーダークラス、およびその上の「担任」は、社員同様の仕事をしている。そもそも、東進の校舎には、社員が1人しかいないケースが多く、アルバイトは、1年目から社員並みの仕事を任される。Cさんは、働き始めた後、かなりのギャップを感じたという。

「働き始める前は、担当の生徒と週1で面談するだけかな、という認識でした。でも実際には、ぜんぜん違うことまでやらされました。校舎に課された営業目標数値達成のため、自分が卒業した高校の後輩を集めて説明会をやるよう強制されたり、公開授業の準備に追われたり。シフト通りだと営業関連の仕事は難しいので、シフト時間外も拘束されました。

高校向けの説明会は、締切を設定され、間に合うように準備をオール(徹夜)でやって。しかも、その賃金を請求できない、というのが不満でした。さらに、それが入学につながらないと、校舎長から怒られます。これ、もはやバイトの仕事じゃないですよね。潔く、社員並みの学生インターンとして採用して仕事をさせるべきです。そのくらい、アルバイトの範疇を超えた仕事内容です。

さらに、営業活動では、校門配布で使うビラに、その高校を卒業したアルバイト社員の顔写真が、無断で勝手に使用された、という人もいました。校舎長(ナガセ社員)にコンプライアンスの意識が全くないんです」

社員並みの仕事をバイトの低賃金でやらされたうえに、肖像権まで侵害されてしまう。やりたい放題の無法企業である。

ナガセが支払うべき3億円の労働債権

仮に、安倍政権が進める同一労働同一賃金の原則(日本では「同じ企業内の同じ役割で同一水準であること」を求める方向)に則って、パートタイム労働法が定めるとおり、昇給の有無について「バイトリーダー以上の役割は1500円」と労働契約書で記した場合、年間でナガセは、どのくらい支払うべきなのか。

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ある月の給与明細

1ヵ月の労働時間を平均90時間として試算してみる。これは、Cさんの実績値(右記参照)を参考にした。

実際には、夏休みなど繁忙期は100時間を大幅に超えるが、閑散期は70時間程度だという。また、実際に1500円払われている人数は、リーダー以上全体(約300人)のなかの1割とする。

1500円と1000円の差額の500円×90時間×12か月×270人=約1億5千万円、が本来なら支払われるべき賃金となり、ナガセの収益を圧迫する。だからこそ、違法を承知で、ナガセは書面契約を交わさないでいるのだ。

法律では、労働債権には過去2年分の支払い義務があるため、約3億円を返金しなければならない計算になる。この金額は、ナガセの連結純利益(2016年3月期)の約1割にも相当する。

それ以外にも

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質問にも答えず逃げ回るナガセ。取材拒否。

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2017/01/14 11:10
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