会員収入とRОAの年次推移
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2016年は70本と記事の数を1割縮減した一方、会員収入は5%減にとどまったため、記事1本あたり売上高は約55万円となり、結果的にROA(Return On Article=記事1本が生み出す収入)が過去最大になった。これは、ナガセの嫌がらせ訴訟に対処するため(弁護士費用、訴訟費用などの捻出)、一時的に保守的な予算を組んで表面的な利益率を上げる必要があったことによる。売上縮小は必ずしも望んでいない。よって2017年は、より価値の高い調査報道記事に対して多額の取材経費をかけ、本数も増やすことで、質量ともに、会員に高い付加価値を提供していく。「会員に読まれる記事」に対し、ますます経費をフォーカスしていく。
◇電通報道で強み発揮
2016年は年末にかけての電通報道に時間をかけたが、広告ゼロ・タブーなしの純粋なジャーナリズム企業としての付加価値を発揮し、圧倒的に他社よりも深い記事を送り出すことができた。他のマスコミとは全くレベルが違う調査報道となっていることは、読んでいただければすぐにわかる。電通は、さらに掘り下げていく。
典型的なマスコミタブーだった電通に対して、発表モノ(当局側と会社側と遺族側)しか書けない伝書鳩のようなマスコミ報道、評論家しかいないネット記事を見るにつけ、もはや週刊文春くらいしか書ける可能性すらない現状では、うちの居場所と役割は大いにあるのだな、と実感している。
◇過去最高水準を維持
2016年の会員収入は、概算で3800万円強。会員数は1900人前後を維持している。2016年は、ナガセの嫌がらせ訴訟が1月にあり、その対応に時間をとられた。おかげで情報が次々と集まり、教育産業の深い闇が見えてきたため、よい面もあった。(→情報提供はこちら)
「東進」については多くのネタが集まったため、現在、記事化に向けて整理しているところだ。ナガセは訴訟で口封じできると考えたようだが、全く逆であることをこれから思い知るだろう。
悪いことをすればするほど、正義感の強い関係者が動き出してヤバい情報が表層に炙り出されてくるところに、人間社会の醍醐味とジャーナリズムの面白さがある。読者の皆さんにも、会員になっていただき、また、続報を望む(個別記事の一番下にボタンがある)という形で、ぜひ支援をお願いしたい。
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ブラウザ別のセッション数(2016年の1年間) |
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「広告収入ゼロ」を強みとするビジネスモデルにつき、ページビューは全く関係ないが、ブラウザ別でセッション数の分析をみると、アップルが提供するサファリが45%と圧倒的に多く、グーグルクロームは30%だった。
モバイルからのアクセス比率は66%と、前年並み。これ以上は上がらなそうである。デスクトップが29%、タブレットが5%(いずれも、グーグルアナリティクスによる)。つまり、一番多いサイトアクセス手段は、iPhoneでsafari経由、ということになる。
モバイルアクセスは2013年→2014年で7割も激増したあとの2年間で、完全に落ち着いた感がある。モバイル:デスクトップ:タブレットは、65:30:5の比率で、もう大きな変動はおきないのではないか。
◇2016年アクセスランキング
アクセスランキング、つまりこの1年間に限ったアクセス数によるランキングをまとめたものが以下であるが、「まとめサイト」やSNSの影響によって、古い記事が突然、アクセスを集める現象が相次ぐようになった。
その結果、上位30位のなかに、直近1年にアップした記事が7本しか入っていないという、かつてない状況が発生。広告ゼロの弊社にとっては、アクセス数はもはや完全に意味のない数値となった。これはこの数年の話で、ウェブ世界の動きは速い。
| 2016年のアクセスランキング(過去記事含む) |
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1 |
三菱商事 リストラも降格もなし!9時~5時勤務で定年まで最低年収1300万円な“最高のサラリーマン”たち
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2 |
豚にコンビニ弁当与え奇形・死産続出「具体名公表するとパニックになる」
| 61,600
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3 |
発がん物質入りシャンプーワーストはノエビア、コーセー、カネボウ…中小のナチュラル系に要注意 大手は資生堂『ツバキ』だけ
| 56,900
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4 |
本物のビールはヱビス、モルツなど5%だけ 「まじりっけなし」の嘘
| 50,940
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5 |
やっぱり危険だった!P&G『ファブリーズ』の除菌成分に生殖異常・精子減少リスク――汗や臭い対策の薬用化粧品でも使用
| 48,280
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6 |
プルデンシャル生命 年収数百万から数億までの実力世界
| 44,560
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7 |
花王ハンドソープ『ビオレU』はEUで使用禁止の殺菌成分「トリクロサン」入り 環境ホルモン作用、皮膚に浸透
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43,260
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8 |
キーエンスは「基本ブラック、給料はホワイト」 パワハラ被害退職者が告発する“アメとムチ”
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42,380
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9 |
洗剤の柔軟剤、除菌剤にも生殖毒性リスク――P&G『レノア』、花王『アタック』『ハイター』に要注意
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34,700
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10 |
「自衛隊はブラックでした」窃盗、強姦、脱走、自殺…就活失敗でやむなく入隊して知った“人間破壊工場”の実態
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33,900
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11 |
電通、NHK取材に「自浄能力がない」と感想を述べた若手社員を「戒告」の懲戒処分にして自浄能力のなさを改めて示す
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31,540
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12 |
損保ジャパン日本興亜 給料高すぎて辞められない“ヤクザ火災”出身者たち――ボーナス7.5カ月分、「転職先が外資でも年収下がる」
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30,180
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13 |
電通が“夜の部会”でやってること――「パワハラ・セクハラ当り前」な体育会系バカ騒ぎ飲み会カルチャーを、元社員が証言
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27,400
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14 |
妊娠中は国内イチゴの食べ過ぎに注意! 住友化学の環境ホルモン農薬『プロシミドン』で胎児に悪影響のリスク
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19,480
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15 |
新卒採用人気トップの三菱商事 社内向け報告ばかり、自由も責任もリスクもなし、決裁は紙にハンコだらけ…「このままでいいのか?」という贅沢な悩み
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19,240
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◇2016年、会員に読まれた記事ランキング20
最重要指標が、以下の、会員が読んでいる記事=会員の支持を得ている記事、である。(対象:2015/12~2016/12にアップされた記事)
僕が書いた記事以外でのランクインは、昨年同様、20本中で3本だけだった。記事ごとの格差は歴然としており、ざっくり平均化して言うと、僕の記事は概ね1本100万円超、時には数百万円を稼ぐが、それ以外の記事が10万円に満たず、平均が55万円、ということだ。これを平準化できればよいわけだが、これは圧倒的に解決が困難だ。
それは、記者の育成に僕が時間を使うことを、会員は求めていないからである。さらに、記者を育てても囲い込むことはできないので、コストを回収できない。また、記者は自分で育つもので、誰かに育てられるものではない。
ベスト20に入るような記事に対しては数十万円の取材費を投じてもペイするので、どんどん使っていきたい。上記の類の記事を書ける記者は、企画を提案してほしい。
◇2016年ツイッターランキング
ツイッターにおける年間ツイートランキングは以下のとおりであった。なかでも電通記事は累積でも過去2番目に上り、SNSの浸透ぶりがよくわかる。もはやニュースは、SNSが入口なのだ。過去記事が継続的にSNSで話題になるのも特徴で、トップ10のうち6本を占めた。この1年でアップされた4本の記事は以下の通り(対象:2015/12~2016/12にアップされた記事)。
繰り返しになるが、もっとも重要な指標は、「会員によく読まれているランキング」である。2016年のMVA(Most Valuable Article)賞は、野村證券IB、新卒最低保証年収650万円(予め1200時間分の残業代込み)から始まる“スーパー高給バイト”の実情に決定。野村IBには、2016年夏に労基署の臨検も入った(『週刊ダイヤモンド』2016.12.17号による)とのことだが、この報道が影響を与えたと思う。
◇2017年計画
2016年は、未来に向けての投資の年だった。書き慣れた企業モノ(サラリーマン)に加え、あまり収益性は高くはないが、資格モノ(医師、看護師、介護福祉士、司法書士、行政書士…)の記事も多く手掛けることで、守備範囲と情報の幅を広げた。
全く知らない世界ばかりだったので、取材の事前調査など手間が相応にかかり、売上も減らしてしまったが、これで、ほぼ主要なホワイトカラー職種全体をカバーできるようになったわけである。そのような書き手は僕の他にはいない。
これら情報をもとに、ここ数年で追いかけているいくつかのテーマごとにまとめる形で、単行本の出版を連発していきたい。
