住友化学 ドメスティックでガラパゴスな「ザ・日本企業」
Ba:普通の企業
(仕事3.0、生活3.3、対価3.2) |
- Digest
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- ハザード評価のEUはマーケット対象外
- リクルーター+ゼミ推薦の理系
- 英語力は問われない
- 研究所中心主義――文系職種に飛ばしちゃう
- 研究所の組織と人事評価――所長との人間関係が重要
- 短い研究者人生、「40歳からつまらなくなる」
- 海外は出張ベース、年2~3回
- やりがい「仮説を証明できたとき」
- 日本の農業は変わるのか――精密農業、NBT
- 全セグメント一律のボーナス倍率
- ライン課長になれる人は3割くらい
- 雇用は持つのか
- 午前8時~午後8時勤務
- 有休取得率45%
- 工場、研究所、本社で異なるカルチャー
- 「住友化学女性差別事件」和解後の動き
- 判子を貰うためにエラい人を待ち伏せ
ハザード評価のEUはマーケット対象外
EUの「ハザード評価」とは、予防原則に基づき、因果関係が立証されなくとも、予防の観点から事前に規制しておくもの。逆に日米では、因果関係が明らかとなり、リスクが顕在化したものを規制する「リスク評価」。企業活動にとっては日米のほうが合理的であり、人間生活にとっての安全性や地球環境を第一に考えるとEUが合理的だ。両者は思想・哲学が異なる。
最近の例では、世界的なミツバチの大量死問題を受けて、欧州委員会は2013年12月、原因が疑われている「ネオニコチノイド系農薬」の、EU域内での使用を予防原則に基づいて禁止。住友化学もネオニコチノイド系農薬であるクロチアニジンを、日本国内では『ダントツ』『フルスウィング』といった商品名で販売中とあって、「現行の製品ラベルどおり適正に使用いただき…」といった見解を発表せざるをえなくなった。
「この農薬が使用できなくなった結果、病害虫が増えて別の問題が出ても構わない、というのがEU方式。住友化学の農薬は、ほとんどがグローバル市場向けですが、対象マーケットとしてEUを最初からから外さざるをえない。イギリスがEU離脱すれば、少なくともイギリス市場については、変わる可能性があります」(社員)
同様に、住友化学が開発した農薬である殺菌剤『プロシミドン』は、環境ホルモン作用が指摘され、EUでは2008年に使用禁止となったが、日本では現在も甘い残留基準のまま、イチゴの栽培などで利用されている。EUの規制方法は、住友化学ほか世界の農薬メーカーにとって非常に都合が悪く、本音では加盟国が減ってほしいと願っている。
リクルーター+ゼミ推薦の理系
住友化学の特徴は、農薬事業にある。日本の化学業界トップ5(三菱ケミカル、住友化学、三井化学、信越化学工業、旭化成)のなかでは、三菱ケミカルが農薬事業を日本農薬に譲渡(2002年)して撤退。三井化学は子会社「三井化学アグロ」が小規模に続けるが、信越化学と旭化成はいわゆる農薬を手掛けていない。農薬を主力事業に位置付けているのは住友化学だけで、特殊なポジションである。
住友化学は、全体が5つのセグメントに分かれる。2016年3月期で単体社員数が多い順に、「健康・農業関連事業」(1927人)、「石油化学」(1331人)、「エネルギー・機能材料」(830人)、「情報電子化学」(755人)、「医薬品」(27人)。医薬品は子会社の大日本住友製薬(株)と日本メジフィジックス(株)が事業を行っており、人材採用の入り口もそちらになる。
この5つのセグメントは、それぞれが独立した事業で、技術面でのシナジーもほぼないため、実際にはそれぞれが別会社みたいなもの。部門をまたいだ異動もないことから、最初の配属先が重要だ。
配属されるセグメントは、理系の場合、採用時にほぼ決まっている。理系は、リクルーター+ゼミ推薦。大学に人事部がやってきて、会社説明会を開催。そこで登録した学生の連絡先に、大学先輩のリクルーター(課長、部長クラスも多い)から連絡がきて、研究所見学に誘われる。見学当日に簡単な面接があり
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左:経団連会長を務めた前会長の米倉弘昌氏。右:現在の十倉雅和社長。(同社『CSRハイライト2012』より)
住友化学の現場組織(研究所)
住友化学のキャリアパスと報酬水準
評価詳細&根拠
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読者コメント
2018年4月27日、EUはネオニコチノイド系農薬3種の屋外での使用を全面禁止とする決定を行った。日本では逆に、残留基準引き上げや用途拡大などが進んでいる。
グローバルにおける日本の農薬メーカーは、「ガラパゴスというよりシーラカンス」「ガリバー村の小人たち」(大前研一)
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