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野村證券IB、新卒最低保証年収650万円(予め1200時間分の残業代込み)から始まる“スーパー高給バイト”の実情

情報提供
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野村證券の「給与所得の源泉徴収票」(表)
 国内有数のカルト的な軍隊文化を育みつつ、ガラパゴスな成長を遂げてきた野村證券。そんなノムラが、「ついにグローバル・スタンダードを導入した」と驚きをもって迎えられたのが、IB(投資銀行)部門等のコース別採用で「学卒新人から年俸650万円+ボーナス」という、外資並みの人事処遇制度だった。同じ新卒でも、個人向け営業と比べ、入社時の初任給からいきなり2倍以上の社内格差がつく。2008年秋に破綻したリーマンブラザーズ証券から欧州・アジア事業を買収したことで両社の社員が同一組織で働くことになり、2009年から運用が開始された。だが、DGL(ディナー、ゴルフ、ランチ)による外交(営業)を基本とする野村と、トップセールス中心だったリーマンは、給与以外にもカルチャーの違いが大きく、入社して3日で辞めた社員もいたという。元社員に実情を聞いた。
Digest
  • 毎年4月に単年度契約を更新するC型
  • 福利厚生はコーポレートハウジングプランだけ
  • 大学3年の夏から採用スタート
  • 採用のTOEIC基準を廃止
  • A型は「リクルーター」がゼミや体育会の後輩を誘う
  • 「仕事の回しかた」が違ったリーマンと野村
  • DGL(ディナー、ゴルフ、ランチ)で組み立てる野村の営業
  • 海外赴任はマーケットで5年目、IBで7年目から
  • 40代でも深夜2時3時まで働く
  • 人間でなければ不可能な「交渉」という領域
  • 4年目で大台
  • 残ってる人の半分が毎年VPに昇格
  • 若手社員が寮で死亡、親が発見
  • 100時間残業させるなんて…
  • 社歌を覚え、研修で所信表明、巻紙で挨拶…
  • 昼間トイレで寝ます――若手インベストバンカーの1日
  • 「おまえが言えることは『はい』か『yes』のどっちかだから」

毎年4月に単年度契約を更新するC型

野村証券は現在、入り口でコース別採用を実施している。

総合職A=昔からのリテール(個人向け外回り営業)
総合職B=昔でいう一般職(現地採用の女性事務職で地域異動なし)
総合職C=リーマン買収後に新設したグローバル型(IB、マーケット)
FA社員=フィナンシャルアドバイザー社員(成果報酬型の非正規)

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4つのコース別採用を行う野村証券。会社発表によると、2015年新卒はA54%、B36%、C8%、D2%という比率

「総合職C」というのが新卒650万円スタートのコースで、配属先は、IB(インベストメント・バンキング=投資銀行)部門とマーケット(グローバル・マーケッツ)部門に、大きく分かれる。ゴールドマンサックス証券などの外資と人材面で競合する分野だ。野村は、統合を機に、このC型を外資に近い報酬体系にすることで、「従来は外資に流れていた優秀な人材」の獲得を目指した。

国内でライバルとなる三菱UFJモルガンスタンレー証券は、投資銀部門の採用においても相変わらず「大学卒:23万円、大学院卒:24万円」での募集を堅持しており、報酬面での処遇格差は明白だ。

「総合職」という呼び名が紛らわしいが、実際には野村のC型は、日本で雇用が手厚く保証される正社員ではなく、毎年1回、4月に契約書にサインする単年度契約型の契約社員で、いわゆる非正規の一種だ。プロ野球選手のように年単位で年俸が決まり、いつ切られても法的には文句を言えない。

ただ、運用上は、「マーケットのほうは業界全体としても人材流動性が高く、野村でもバンバン切られますが、IBのほうは単年度契約とはいえ、あんまり切られないです。IBのカルチャーとして、指名解雇はやりません」(元社員)

福利厚生はコーポレートハウジングプランだけ

この年俸650万円には、予め月あたりの残業代100時間分、つまり年間で1200時間分が含まれており、さらに運用として、「月100時間を超えた分は残業代を申請できますが、その分はボーナスから差し引かれる仕組み」(元社員)

つまり、どんなに残業をたくさんしても、年収は増えない。日本の法制度下で、時間ではなく米国式の成果に基づく完全年俸制を無理やり実現するため、グレーな手段ながら、苦肉の策がとられている。

独身寮を利用できるのもA型だけで、C型は使えない。一般的な社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)にはもちろん加入できるが、それ以外の特徴的な福利厚生としては、C型のみ「コーポレートハウジングプラン」を利用できる。これも外資金融では一般的な仕組みで、社員が決めた賃貸物件を、会社が社宅として契約し提供する制度。野村との法人契約となるため、審査で落ちることはない。

法人契約の主体となるだけで賃料補助もないが、年俸を12分割した月の給料から賃料分が予め天引きされることで、課税所得を減らすことができ、社員の税制上のメリットが大きい(会社の人件費総額は変わらない)。税務署の目を気にしてか、なぜか日本企業はほとんど導入していない。

大学3年の夏から採用スタート

このC型コースは、新卒採用の入り口から異なる。C型の採用人数は例年、30~50人ほどで、IBとマーケットでおよそ半々。野村全体では、従来からのA型(リテール)が一番多く、毎年300~400人を定期的に採っては全国の野村証券支店に“ソルジャー”として送り込んでいる。地域間異動なしのB型コースも数百人採っており、地元採用の女性を中心に、支店の窓口などに配属している。

4つめの「FA社員」は、新卒ではほとんどいない。「FAは、中途採用のほかに、リテール枠(A型)で新卒入社した人が途中からFAに移っていくケースがあります。これは完全出来高制の、地域に根差した外回り営業職で、収入は成果次第で、すごく稼げる。年収2千万円を超えている人も普通にいます」(元社員)。ニッセイレディやプルデンシャルル生命の営業マンと同じ、完全成果主義の世界である。

野村の採用活動は、大学3年の夏から始まる。「リテール(A型)は、リクルーターで決まるのが4分の1。残りは、ガチの面接です。IB(C型)は、リクルーター制ではなくて、2分の1~3分の1が夏と冬のインターン採用で、残りが一般の面接採用」(同)

採用活動として行われる夏と冬のインターンは、1週間かけてじっくり選考する。昨今では、夏1回、冬1回、それぞれ40人ずつの、計80人ほどが参加しているが、その前に、インターンに参加するための書類審査とグループディスカッションがある。1回あたり250人~300人が応募し、40人に絞られる。

インターンの内容は、M&Aのシミュレーションなど。学生は専門的な知識がない前提なので、事前に社員講師によるレクチャーも行われ(そこでも学生は見られている)、そのうえでケース(架空の事例)を進める。40人を1チーム5人ずつの8チームに分け、各チームにメンターとして若手社員がつく。

メンターが、インターン採用における一次評価者だ。メンター経験者が言う。「評価基準は、

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C型社員の募集要項。重要なことは何ひとつ書かれていない

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 2016/03/28 14:30
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